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外交カード①

暗黒武装鉄道結社の総帥は様々な外交カードを切ってきた……

そしてそのカード達が次々に効果を現す様は世界をデッキとしたカードゲームのようでもある……


あと、ついカッとなって信号ラッパをミュージックホーンにしてしまった……反省はしていない。

絶壁に栄える山岳都市

[サラマド]

(ターミナルステーション)


『山岳都市サラマド、山岳都市サラマド、ご乗車ありがとうございました。当駅での停車時間は未定……出発予定時刻は確定しだい携帯端末によりご連絡致しますので、外出の際は携帯端末を必ずご持参ください。なお、当駅では貨物の切り離し作業が行なわれ……え?』


3番線に滑り込んだキンダーガルテン号の車内にリタの無機質なアナウンスが響き渡る。

しかし、何かに驚きアナウンスが止まる。

リタを驚かせたのは、ホームに溢れる人、人、人……。

さらに彼らは右手にカシャール王国の国旗、左手にシュバルツァークロイツの暗黒十字旗を持ち、出迎えモード全開である。

よく見ると、駅の至る所に「救国の英雄コルツ カシャール帰還!」と書かれた顔写真入りのポスターが貼られている。

ホスターの顔はどういう訳か、コルツとうりふたつ……


『なるほど……ガナンは偽の姓だったんですね……』


リタの問いにコルツは頷いた。


『申し訳ない……おいそれとカシャール解放戦線の指導者を名乗る訳にはいかなかったのでね……』


更に、コルツは申し訳なさそうに弁解する。


『しかし、こうも情報が筒抜けでは……』


リタが更につっこむが、コルツはこう切り返しす。


『これは、君達の(おさ)フラウ総帥がリークしたものだろうね……彼としては、カタルシア解放の支援者としてのアピールの場が欲しかったのたろうな。』


リタは頷いた。


『なるほど……だからタランの戦闘車両を全て出動させ、更にキンダーガルテン号を足止めした……このキンダーガルテン号に乗ったカシャール新王の凱旋を演出するために……』


リタの的確な補足説明にコルツはニヤリと笑みを浮かべる。

そう、双子が協力するのも、砦を攻撃するのも全てフラウ総帥の緻密な計略の範疇だったのだ……


『手の平の上で踊る……か……この結果なら悪い気はしないな……』


後に新カシャール国王となる男はそうつぶき、熱狂する群衆に向かいこう述べた。

『カタルシアは完全に解放され、カシャール王国、いや……暗黒種族の手に戻った。この戦いを戦ったのは我々だ……しかし、その戦いを支えていたのは外ならぬ暗黒武装鉄道結社である。彼らは戦地に武器を人を食料を水をありとあらゆる物を届けてくれた。この留まる事無く続けられた補給により我々は存分に戦い母なる大地を取り戻す事ができた。我々は彼らの存在を忘れてはならない、戦いを影で力強く支えた存在を、そしてカシャールの友の存在を!!』


『カシャール王国バンザイ!』

『カシャール王国バンザイ!!』

『ジークシュバルツァー!』

『ジークシュバルツァー!!』

彼の演説が終わると熱狂した群衆は口々にカシャール王国と暗黒武装鉄道結社を称える言葉、そしてカシャール王国の国歌を力の限り熱唱する……


その傍らでラズロット、リズロットの双子がムスッとした顔をしていた。


『やはり、踊らされたのがお気に召しませんか?』


その様子を見たリタが双子に問い掛ける。


二人はフンッとそっぽを向き、小声でこうつぶやいた。


『イゲルフェストに帰ったら、フラウを急所蹴りの刑なのです(怒)』


『電気アンマの方がいいのだ(怒)』

楽しそうに、粛正計画を練る二人の邪神を前に、リタは近い将来起こるであろう地獄絵図の犠牲となるフラウ総帥に心底同情するのであった……




火山とガスのブレーン

[カナガス]

火山が噴火し火山ガスが充満する死の世界が広がる小さなブレーン……

しかし、ここに住む火竜族にとっては過ごし易い気候である。

しかし、十字軍がこの地を暗黒種族討伐のための中継地としてカナガス要塞からは粒子減速機により火山活動が無理矢理止められ、火竜族が暮らせない極寒の地になってしまっている。

そう、人間が暮らせない灼熱の世界から人間が暮らせる気候に改変されたのだ。

そしてその寒さは火竜族から力を奪い、今日までカナガス要塞を攻撃から護ってきた。

そう、今日までは……


この日、カナガス要塞の南側の上空に空を埋め尽くさんばかりの戦闘列車が出現した。

この戦闘列車の群れは、重戦闘列車(重武装、重装甲の船でいう戦艦に相当する戦闘列車)[グラーフアイン(列車長30メートル6輪台車、20両編成、ダークブルーの車体)]を旗車(旗艦の列車版)とした、ワーグ ラーグ元帥率いる第1列車総隊である。


『ぐふふふ……腐れ人間共……今日はこのワーグ様が地獄を見せてやるぞ……地獄を…な……ぐふふふ……防壁列車、前面大型シールド展開、突撃ぐひ』


Ja(ヤー)!防壁列車、シールド展開、突撃命令、ミュージックホーン鳴らせ!!』


今まで先頭を走っていたグラーフアインはその巨体を素早く減速させ、集団の最後尾に付ける。代わって最前列に出てきた防壁列車(前面に巨体なシールドを展開させ列車隊の盾となる列車)が巨大なシールドを展開させ、突撃命令を意味するミュージックホーンを奏で、突撃隊形を組む。


その後ろには重戦闘列車(重装甲、重武装の船でいう戦艦に相当する列車)や航空列車(VTOL能力を持った航空機を多数搭載した空母の列車版)、それを守る防空列車(強力な対空兵装で列車隊を空襲から守るイージス艦の列車版)の群れが続く。


更にその後方には重砲撃列車(大型の砲を装備し長距離砲撃を行う列車)、爆装貨車(大量の通常爆弾を搭載できる爆撃用車両)を引いた機関車が続く。



『上空に飛行物体多数!!』


『列車?!列車が空を飛んでいます!!』


『列車から攻撃機が!!』


見張りに付いている兵から、報告が次々と上がるが、どれも常識的に、有り得ないものであり、カナガス要塞の指揮所は混乱していた。


『何かの間違いだろう……バカバカしい、スクリーンはまだ準備できぬのか?』


茶色いボロボロのフード付きのマントを羽織った壮年の男が苛立ちながらその場の指揮をとっている。

彼はバファエルと言う名でこの要塞を拠点としている暗黒種族討伐軍の聖将である。



『しかし、暗黒種族がシップの代わりとして列車に亜空間走行能力を付与したのかもしれません……』


隣に控えていた銀髪のショートヘアーの少年がバファエルに進言する。

彼はロイと言う名前の司教で人間と主天使の混血(ハーフドミニオン)である。

その証拠に彼の着る法衣の背中の穴からは天使の羽が生えている。


『なにぃ……』


バファエル聖将はロイ司教を睨みつけ、あろうことか彼を蹴り飛ばした。


『汚れた存在が我に意見するなど言語道断!恥を知れ!堕天使め!!』


バファエル聖将は何度も何度もロイ司教を踏み付ける。そう、天使と人間の交配は十字教会では重罪であり、混血児は忌み嫌われた存在で、当然人権や地位など認められていない。

当然、本来ならばこのような場所に居ない存在なのである。

しかし、現教皇は天使並の力を持つ彼らを埋もれさせておくのは勿体ないと考え、能力の高い混血児を教皇直属の司教として教育し、前線指揮官の強化を図ろうとした。

しかし、結果は異種族への偏見が強い前線の指揮官達に受け入れられず、ほとんどが、彼のような扱いをうける。


『暗黒種族は下賎の種……そのような事ができるわけ無かろうが!』


怒りをあらわにバファエル聖将はうずくまっているロイ司教を蹴飛ばす。

ロイ司教の身体は壁にたたき付けられ崩れ落ちる。『ふん……二度と生意気な口を開くでない!』

『スクリーンはまだ準備できぬのかグズ共め!』


バファエル聖将はその場にいる部下に、当たり散らす。


『スクリーン、準備できました。』


指揮所のスクリーンに迫り来るワーグ元帥率いる戦闘列車の群れが写しだされる。


『列車……やはり奴らはシップを造れず列車を使用したか……』


おいおい、あんたさっきその可能性を全否定してなかったか?

まぁ、そのツッコミは置いといて、ワーグ元帥率いる戦闘列車を迎え撃つためにカナガス前線基地を守るカナガス駐留艦隊300隻余りが出撃して迎撃体制をとる。『ワーグ元帥閣下、敵駐留艦隊300隻、食いつきました!!』


『ぐふふふ……何匹釣れるかな……全隊、後退しながら攻撃ぐふ…』


Ja(ヤー)後退しながら敵を引き付けます!』



ワーグの命令で列車隊は後退命令を意味するミュージックホーンを奏で後退を初める。




『敵部隊、攻撃をしながら後退していきます。』


その報告を聞くと、バファエル聖将は嬉しそうにこう言い放った。


『敵は我等の栄光に恐れを成し後退したのだ!』


そして、自分の席から立ち上がると、こう命令した。


『我等の勝利に疑いなし、防空用の聖騎兵も含む全戦力で敵を踏み潰す!!』


それを聞いたロイ司教はヨロヨロと立ち上がり、こう反論した。


『これは敵の陽動です!必ず敵は亜空間上に伏兵を……ごふっ』


ロイ司教の反論はバファエル聖将の一蹴りで遮られ、彼はうずくまる。


『伏兵だと!バカめ、抵抗するのがやっとな下賎の種がそれほどの大部隊を有しているはずが無い!!』


『し……しかし、近年の暗黒種族の戦力は急激に……』


『ええい、黙れ!』


バファエル聖将は、力一杯ロイ司教を踏み付けた。

ロイ司教は声にならない悲鳴を上げ、気を失った。




亜空間軌道上

[カナガス戦略路線]


『見事な一本釣りになりそうですね……』


モニターを見ながらそうつぶやいたのは、第3列車総隊司令官のダーク キッド元帥である。

亜空間軌道上にはポール マッカス元帥率いる重戦闘列車[メタルビート(列車長32メートル6輪台車、20両編成、車色スカーレットの車体)]を旗車(旗艦の列車版)とする第2列車総隊、ダーク キッド元帥率いる軽戦闘列車(重戦闘列車より軽量で武装や装甲が劣るが、その分速度性能が高い列車)[ヴェファリア(列車長20メートル4輪台車、15両編成、黒に赤いラインの車体)]を旗車とする第3列車総隊、ヴェネ マディウ元帥率いる軽戦闘列車[フィアリス(列車長18メートル4輪連接台車、25両編成、純白に銀装飾の車体)]を旗車とする第4列車総隊がワーグが敵を引き付け、カナガス要塞の守りが薄くなる時を待っていた。『なんかさぁ……またあのメタボが得意げに報告するの腹立つんだけど……』


ヴェネが不快感をあらわにする。

ちなみに、ワーグは失敗は他人に押し付け成功は横取りするという最悪な指揮官で評判がすこぶる悪い。


『それ言っても始まらんぜぃ!』

『イエ゛アァァァ!!』


ポールのデス声と奇声に2人が眉をひそめ不快感を表す。

何気に、ヴェファリアとフィアリスの主砲の砲身がメタルビートに向いていたのは多分気のせいだろう……。


それはともかく、3個列車総隊が空間を埋め尽くし突入の時を待っている姿はまるで、かつて世界を恐怖に陥れた魔王軍を彷彿とさせるものであった。


ある程度キャラクターが登場したので、ここで一つ種明かしします。


十字教会サイドのキャラクターの名前には姓がありません。

理由は入信時に姓を捨て神の下僕となるためです。

ちなみに、入信時に身体に番号の刻印が施されるため、個人の識別には不自由しません。



次に名前等に使われる言語ですが、十字教会ではヘブライ語っぽく、連邦では英語、暗黒武装鉄道結社では、ドイツ語、英語を中心に多言語が入り混じってます。

理由はヘブライ語は聖書に出て来る言語がヘブライ語だから。

連邦ではコモンランゲージが普及しているという設定なので共通言語的なイメージを持つ英語。

暗黒武装鉄道結社は多種族だから当然多言語になるだけど、便宜上コモンランゲージを使用する機会が多い、更に暗黒種族の中心の魔族が使用していた言語も多く使われるだろうと考え、無駄にカッコイイドイツ語を採用。

……と、言語設定なんかを考えてても面白いかな♪



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