お召し貨物列車
今回は個性派揃いのシュバルツァークロイツのフリーダムな変態集団……もとい、元帥達と、お固い十字軍の師団長達が登場します。
……てか、シュバルツァークロイツがフリーダム過ぎ(汗)
辺境の列車の街
[イゲルフェスト]
(列車基地管制室)
『総帥……全列車総隊、間もなく攻撃に入ります。』
『ふむ……各元帥へ繋げ、暗号コードはレッドパターン。』
フラウ総帥の命令に反応し、スクリーンに4人の元帥が映し出される。
[ワーグ ラーグ元帥]
(第1列車総隊司令官)
通称メタボ司令、自分で歩けないほど太った鬼族で非常に残虐な性格かつ非常に嫉妬深い性格の男である。
また、民間施設への無差別攻撃等、非人道的行為の常習犯。
[ポール マッカス元帥]
(第2列車総隊司令官)
丸縁サングラスと真っ赤なベレー帽がトレードマークのメタルサウンドを愛する魔族で指揮所に設置された特設ステージで副官と共にメタルサウンドを掻き鳴らし指揮をとる気違い野郎。
彼の部下達はその爆裂サウンドに併せ破壊と殺戮の芸術品を作り上げる。
「戦争は芸術だ!」
これが彼の口癖である。
[ダーク キッド元帥]
(第3列車総隊司令官)
漆黒のマントとシルクハットに身を包み、顔をスッポリと覆う怪人マスクは不気味な雰囲気を醸し出す夢魔の男。
非常に紳士的ではあるが、派手な女性関係と女性のみで固められた副官等々、非常に問題の多い人物である
[ヴェネ マディウ元帥]
(第4列車総隊司令官)
漆黒の長いストレートヘアー、真っ白な肌、豊満なボディーが特徴の淫魔族の女で、幼女にふりふりドレスを着せて「お姉様」と呼ばせる趣味を持ち、副官には幼女体型が多い。
そして、この個性派元帥達を指揮するのが、自室の壁一面に貼られた総帥の写真を観て性的に興奮する変態、サラ オルコット総元帥である。
この組織にはまともな人材は居ないのか、と言いたくなる程の変態フリーダム状態ある。
その変態軍団……もとい、4元帥を前にフラウ総帥は最終命令を下す。
『今回はデモンストレーション……だから十字教会の関係施設のみに精密攻撃……特にワーグ元帥、無差別攻撃やったら殺すからね♪』
フラウは笑顔だが、その威圧感は半端ではない。
と言うのも、魔王の血を引くフラウ総帥の力は圧倒的であるからだ。
当然4元帥の顔は強張る。
『……まぁ、僕の出番の戦略フェーズは既に終了、次の戦術フェーズは君達が主役……戦略の範囲内で好き暴れちゃって♪』
『了解!ジークシュバルツァー!!』
4元帥達は総帥に敬礼し、全隊に攻撃開始を命令した。
その瞬間、全ての列車が戦闘開始のミュージックホーンを奏で敵地への突入を開始する。
砂漠のブレーン
[カタルシア]
(ジマラ山岳線)
城塞都市タランと山岳都市サラマドをジマラ山脈を越えて結ぶジマラ山岳線。この急勾配と急カーブだらけの路線をエンジンを唸らせ、金属が擦れる甲高い音を響かせながら駆け抜ける列車があった。
その列車は大量の貨車を引いたお召し列車キンダーガルテン号である。
キンダーガルテン号の編成は……
1号車から3号車はVLSランチャーを8基を装備したハイデッキ型機関車、
4号車から6号車は2連装30cm魔導砲を上部に2基、量側に1基ずつを装備したハイデッキ型機関車、
7号車から9号車は20cm対空魔導バルカン砲を上下に2列20基を装備したハイデッキ型補助動力付き来客用居住車、
10号車は2階に食堂、1階に調理場と倉庫を設置したダブルデッキ型食堂車、
11号車は前半分がラズロット用、後ろ半分がリズロット用の居住スペースになっているダブルデッキ型居住車、
12号車は下半分が浴場、上半分がサロンそして最後尾が展望席になっているダブルデッキ型サロンカーである。
なんと12量中9量が機関車として使用可能な車両なのである。
このチート性能を活かし、コルツは通常の3倍の貨車を繋げ、全長が1kmを超える貨物列車に仕立てあげた。
キンダーガルテン号
[10号車2階食堂]
食堂のテーブルには豪華な料理が並び、それをコルツをはじめとする貨物列車搭乗員達とラズロット、リズロット、神奈のキンダーガルテン号メンバーが囲んでいる。
『やっぱりグングニルで粉砕なのだ……』
『戦略兵器をお使いになるのですか?……あと、リズ様お行儀が悪いですよ……』
スープの皿に口をつけて飲みながら、戦略兵器「グングニル」の使用を提案したリズロットに、追加の料理を運ぶリタがツッコミを入れる。
『グングニル?それは武器なのか?』
『VLSランチャーから発射する粒子加速砲を装備した遠隔操作型のビットで遠距離攻撃を行う兵器です。』
コルツの質問に対し、リタは無表情で兵器の説明をする。
『安全が確保されるなら是非とも使用して欲しいな。』
『粒子加速砲を大気圏で使用した場合、撃つだけで大気を破壊し放射線シャワーを撒き散らし、命中すれば核分裂による核爆発……ジマラ山脈一帯を放射能汚染しても構わないと言うのなら遠慮無くぶっ放しますが……』
無表情で答えるリタに、コルツは青ざめ、首を横に何回も降る。
『無力化する必要は無いと思います。何らかの方法で混乱させれば……』
神奈はスープの表面にスプーンの裏を付け、くるくると回し冷ましながら提案した。
『それが賢明だと思います。ヘンシェル20などいかがでしょうか?』
『要塞上空を飛び回らせれば、十分時間が稼げます。』
それに併せ、リタがヘンシェル20の使用を提案した。
ヘンシェル20とは、VLSランチャーから発射される20発の滑空爆弾を搭載した自立型ビットで、目標上空を飛び回りながらレーザー誘導の滑空爆弾で攻撃する自立型の精密誘導兵器である。
また、自立型でありながらビットを帰還させ再利用する事で、使い捨て部分を極力少なくした兵器でもある。
『なるなる、一撃で倒すよりジワジワと……リタは陰湿なのだ♪』
『誉め言葉と認識させて頂きます。』
からかうリズロットにデザートの桃を渡しながらリタは答えた。
リズロットはそれを美味しそうに口いっぱいに詰め込む。
『あはははは…リズ……冬眠前のリスみたい…』
口いっぱいに詰め込まれた食べ物でぷっくりと両頬を膨らませたリズロットを見た神奈が腹を抱えて笑う。
リズロットはムッとした顔をしたが文句は言わなかった……いや、口の中いっぱいの食べ物のせいで言えなかった。
砂漠のブレーン
[カタルシア]
(ジマラ要塞)
ジマラ要塞は切り立った崖や森林等、山岳の地形を巧みに利用した難攻不落の砦である。
その砦には十字軍の第53騎兵師団の残存兵力約500人が立て篭もり抵抗を続けている。
『エルハム師団長!敵の貨物列車が来ました!!』
この師団の師団長エルハムの元に副師団長のヤコブが駆け込み報告する。
『来たか……いつも通り積み荷を頂くとしよう……』
エルハムは白髪の口髭を揺らし不適に笑う。
『生き残るためとは言え、略奪とは……恥ずかしい限りです……』
白い甲冑に銀髪のヤコブが十字を切りながらつぶやいた。
エルハムはそれを手で制すと、こう言い放った。
『全ては主のために行う事、故に正義である!』
ヤコブは納得できないと言いたかったが、現時点で部下達を飢餓から守る他の方法は無い。
そう考え、必要悪だと自分に言い聞かせ無理矢理に割り切った。
その時、ヴォォォォという急降下するスツーカのサイレンのような不気味な音が鳴り響いた。
次の瞬間、要塞のあちこちで爆発が起こった。
『敵襲!!』
見張りの兵士が上空を指差し叫ぶ。
そこには、上空を飛び回る飛行物体が6機。
ヘンシェル20である。
ちなみにさっきの不気味な音はヘンシェルが攻撃のために急降下に入った時に鳴らす心理効果を狙ったサイレンである。
このサイレンは効果覿面だった。
サイレン音が鳴り響く度に兵士が爆撃の恐怖でパニックに陥り、要塞は混乱状態となった。ちなみにこのサイレンの愛称は「セルフ空襲警報」である。
ヴォォォォォ・・・
『また来たあああ!』
『くるなああああ!』
空襲に脅える市民のように逃げ回る兵士……
恐怖でデタラメな方向に機銃を撃ちまくる兵士……
サイレンの音に驚き騎兵を振り落とす聖竜……
こうなってしまっては、列車の襲撃どころではない。
キンダーガルテン号は、大混乱に陥るジマラ要塞の横を悠々とすり抜けていくのであった。
ちなみに、列車が通過する数十分間に渡り恐怖のサイレン爆撃に晒された不運な第53騎兵師団の兵士達は数時間後にサラマドに展開するカタルシア解放戦線の部隊に投降し、カタルシアの戦闘は完全に終了。
その後、カシャール王家によりカシャール王国政府が立ち上げられ、カタルシア解放戦線はカシャール王国軍となり、カタルシアは復興への道を歩んでいくのだが、それは別のお話し。
シュバルツァークロイツはフリーダムすぎる個性派の方々。
十字教会はお固い考えと高慢な方々。
連邦はその中間。
…という具合に大きく差別化してみました。
その後で、シュバルツァークロイツサイド……戦争舐めすぎ……と感じたのは内緒♪