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砂漠の貨物列車

今回はギャグ要素と理不尽要素がかなり含まれます。

用法用量を守り正しくお使いください( ~っ~)/


砂漠のブレーン

[カタルシア]

カタルシアは、ブレーン全体が砂漠に覆われ、各地にオアシスが点在する。

各都市はこのオアシス周辺に造られターランを首都とするカシャール王国により統治されていた。

しかし、十字軍のカタルシア侵攻により首都ターランは陥落、カシャール王国は崩壊し、カタルシアは十字教会の手に落ちてしまった。

その後は抵抗を続けるカタルシア解放戦線とそれを狩り出す十字軍の泥沼の戦いが続いていた。

しかし、数年前からシュバルツァークロイツがカタルシア解放戦線に武器や食料等の物資の供給を開始して以来カタルシア解放戦線は主要な都市を次々と解放、十字軍は本隊が撤退し、ブレーン南側に広がるジマラ山脈のジマラ要塞に立て篭もる第53騎兵師団を残すのみとなっていた。


砂漠の城塞都市

[ターラン]

巨大なオアシスの中に浮かぶ城塞都市ターラン、オアシスの豊富な水が天然の堀となり、この街に入る道は、城門に繋がる一本の巨大な橋のみである。

この橋の存在がこの街を難攻不落の城塞都市としている。

しかし、先の戦では十字軍の聖竜[天使の羽が生えた竜]を駆る聖騎兵の空からの圧倒的な攻撃力の前に成す術なく陥落した。


橋の上の併用軌道を戦車を積んだ貨物列車が商人達の荷馬車と一緒にゆっくりと進んで行く。

どうやら、シュバルツァークロイツが調達した武器を売りに来たようだ。とは言っても、全て自社製で、カタルシア解放戦線が唯一の顧客である。


カタルシア解放戦線は2ヶ月ほど前にこのターランを解放した抵抗軍である。

彼等は、シュバルツァークロイツから安く武器や物資を提供され、強力な武装組織となり、十字軍を駆逐したのである。


しかし、それはシュバルツァークロイツの造る補給網、つまり鉄道網に完全に依存した力であり、結果カタルシア各地にはシュバルツァークロイツの鉄道網が張り巡らされその鉄道網が、人々の生活を豊かにし、それ無しでは全てが成り立たない社会造り上げてしまったのである。

しかし、当のカタルシアの市民達は生活が便利で豊かになったと喜ぶばかりで、その本質に気付く者は少なかった。


そう、シュバルツァークロイツはカタルシアの物流を完全に支配し、この地を実質的に支配してしまったのである。


しかしながら、街には物が溢れ活気に満ち溢れている。

十字軍に占領されていた頃には考えられない光景であり、カタルシアの市民達が手放しで喜ぶのも仕方の無い事なのかも知れない。



[ターラン国際ステーション]


ターランの中央に位置するカタルシア唯一の国際ステーションに、貨物列車がゆっくりと入場し停車した。

その直後に駅の職員が慌ただしく貨物の積み降ろしを始める。

この亜空間列車で運ばれて来た貨物はここで通常の列車に移され各地に運ばれる。

よくみると、他のホームにも貨物列車が何編成か停車しているが、明らかに旧式の車両である。

おそらく、この列車達が貨物を末端の駅まで届ける通常軌道専用の貨物列車なのだろう。


『護衛無しってどういう事なんだ!』


『いや~それがですね、近々大規模な侵攻をするらしく、戦闘車両が全部出払ってしまってて……』


おそらく、この列車達が貨物を末端の駅まで届ける通常軌道専用の貨物列車なのだろう。


『おいおい、護衛無しってどういう事なんだよ!』


『いや~それがですね、近々大規模な侵攻をするらしく、戦闘車両が全部出払ってしまってて……』


色白の肌に尖った耳、口には少し長い牙を持つ魔族と、狼のような耳をした獣人族の職員同士が何やら言い争っている。


獣人族の方はコルツ ガナンと言う名前で、危険地帯を走行する予定の貨物列車の搭乗員らしく、列車の編成に護衛用の戦闘車両が無い事に腹を立てているようだ。


『サラマドの街までの路線は野党も出るし、何よりジマラ山脈を通るんだ!あんただってその危険は承知しているだろ!!』


『はい、ですから機関車を増やして速度を……』


『バカか!ジマラ山脈は急勾配の上りで、滑り止めの砂撒きながら登るんだ!』


コルツが怒り狂うのは最もだ。

ジマラ山脈には十字軍の残党が立て篭もるジマラ要塞があり、そこを通る貨物列車はしばしば襲撃を受けている。

また、急勾配の路線は重い貨物の後ろ向きの力で車輪が簡単に空転してしまい、加速が困難である。

機関車を重連で増やしても、それほどの加速はできない。

下手に急加速すれば車輪が空転し後ろ向きに列車が走りだす。


更にこの路線はカーブが多く、高速で突っ切る事はできないのである。



『しかし、戦闘車両はこの車両区には……』


『じゃああのバカデカイのは何なんだよ!』


魔族の職員の言葉を遮るように、コルツは6番ホームを指差した。そこには、車体長35メートルのダークグレーと赤のツートンカラーの巨体が鎮座、その異様な存在感を放つ鉄の塊は先の話しで登場した、ジュリアスからイゲルフェストに向かう途中の双子を乗せたキンダーガルテン号である。


『あんたじゃ話しにならん!あの列車の責任者に交渉さしてもらうからな!』


『あ!ちょっと!!』


制止を振り切り、コルツは線路を次々と飛び越え、6番ホームに行ってしまった。


『どうなっても知りませんよ!』






6番ホームでは、何体かのプペディナが車両の点検を行っている。


『全く……お召し列車を足止めするなんて……管制局は何を考えてるの!』


その傍らで、リタが苛立ち、管制局への文句を永遠と言い続けながら、ガシャガシャという金属音を響かせながら歩き回っていた。

彼女が不機嫌な理由は簡単である。

他の列車がお召し列車である自分より優先されている事が気に入らないのである。

ちなみにリタは、キンダーガルテン号のメインコンピュータの外部デバイス、つまり彼女が苛立っているという事はメインコンピュータが苛立っているという事である。


どんだけ感情豊かなコンピュータなんだろうか……


まあ、そんな事情を知らないこれまた苛立ち気味のコルツが彼女に駆け寄る。


『おーい、そこのブリキ姉ちゃん!』


『…………。』


『おい、聞いてるのかよブリキの姉ちゃん……』


『…………。』


『おい!ブリキ!!』


次の瞬間、コルツは胸倉を掴まれ、物凄い力で持ち上げられた。


彼には悪気は無いのだが、実はリタにブリキは禁句だったのである。

事の発端は、リタが歩くガシャガシャという音を聞いた一人の兵士が彼女をブリキ人形と言って笑った事である。

当然、それを聞いたリタ(メインコンピュータ)がブチ切れ、結果その哀れな兵士達(連帯責任)は弾をばら撒きなが爆走するキンダーガルテン号から逃げ回る羽目になった。


以後、彼女を知る者達の間ではブリキは禁句となっている。


『ブリキ……って……誰の事ですか?』


リタの顔は満面の笑みだが、明らかに怒っている。いや、怒りを通り越しブチ切れた。

感情を持たないはずのコンピュータがブチ切れるという奇跡……シュバルツァークロイツのテクノロジー恐るべし。


『おいこら!放せ!この怪力女!!』


『左様でございますか……それでは……』


リタはコルツをそのまま投げ飛ばした。

そして、近くに積み上げられていたダンボールに派手に突っ込む。


『何しやがる!このクソアマ!!』


ダンボールをかきわけはい出たコルツはリタに殴りかかった。


『~~~っ!!!』


拳がリタに命中した瞬間、ガキンという堅い音の後、コルツが声にならない悲鳴と共に拳を抱えしゃがみ込んだ。リタの外装は特殊な合金で造られていて、強い衝撃を感知した瞬間にミスリル合金(ミスリル銀に各種金属を混ぜ製造され、装甲板に使用される非常に堅い金属)並の硬度に硬化する性質を持っている。


そんな物を力いっぱい殴れば、拳の方が負けるに決まっている。


『何の騒ぎかの?』


『うるさくて本が読めないのです……』


列車の中からゴスロリ服の双子が不機嫌な顔をしてでてきた。

ラズロットとリズロットである。

ちなみに彼女達が不機嫌なのは、退屈だからである。


『この不届き者を処理している最中です。』

『さて、蜂の巣か細断…どちらがお望みですか?』


リタは右手にガトリンクガンユニット、左手にレーザーブレードユニットをそれぞれ転送装備し、笑顔でコルツに迫る。


『ま…まて!俺が一体何をしたって言うんだ!!』


リタの迫力にコルツは怯え、じりじりと後ろに下がる。


『ひょっとして、ブリキって言っちゃったですか?』


その様子を見たラズロットが二人の間に割り込み尋ねる。

コルツは素早く何度も頷く。


『命知らずにも程があるのだ……』


『それは、ナイフ好きなメイドさんにPADって言うぐらい危険なのです……』


双子が呆れ様子で説明するが、コルツは例えの意味が理解できず、首を傾げた。


『それよりリタたん、貨物列車と連結する準備なのです♪』


『はい、了か……ちょ……!!』


ラズロットがコルツの心を読んで指示をだした、リタはそれを復唱しようとした瞬間、不快感をあらわにした。


彼女はキンダーガルテン号(自分自身)を栄光あるお召し列車として、誇りに思っている。

しかし、その栄光あるお召し列車がこの瞬間、貨物牽引列車に成り下がったのである。


『あ…ありがとうございます!!』


『ちょ…邪神様!!どうかご再考を!!』


歓喜に満ちた声と悲壮感漂う声がステーション内に同時にこだまする……


今回はリタで遊んでみました♪


ちなみにPADに関するご質問には応じられません。(¬з¬)



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