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見えざる補給線

戦争に必要なものは補給、この補給がなければどんなに優秀な兵器や兵隊は身動きがとれません。


そして、シュバルツァークロイツの鉄道網はまさに暗黒種族の生命線。

浮遊大陸の聖都

[セントノア]


巨大な浮遊大陸の上に建設された聖都セントノア。

この巨大な都市は、中央にある教皇府を中心に大小の教会が建ち並ぶ十字教会の拠点である。


『暗黒種族の反乱はまだ鎮圧できぬのか?』

『いったい十字軍は何をしておるのだ!!』


教皇府の謁見の間には、パウエル教皇と、ステファノ聖将[十字軍の将軍]の姿があった。


近年辺境各地で再燃した暗黒種族の反乱は、次第に勢いを増し、一部の地域では討伐に向かわせた討伐隊が敗走する事態まで発生している。

当然、教皇の苛立ちは頂点に達していた。


反乱軍は、重火器や機械化部隊を次々と投入し、討伐隊を圧倒しつつあった。


十字軍情報院は、反乱軍の背後に物資の調達から輸送を行っている大規模な組織の存在を疑い、亜空間シップの重要部品の流通記録をしらみつぶしにしているが、未だにそれらしき情報は得られていない。


『これだけの規模の輸送を行っている限り、必ず大規模なシップの建造を行っているはずです。』


ステファノ聖将の主張にパウエル教皇も頷き賛同した。


ちなみに、反乱軍への物資の調達や輸送を行っているのが、先に登場した暗黒鉄道結社シュバルツァークロイツである。

彼等もまさか、亜空間軌道で構築された鉄道輸送網が存在するなど夢にも思っていないだろう。





当然、亜空間シップを必要としない輸送網なので、いくら亜空間シップの部品の流通記録を調べても、その存在を知ることは不可能である。



辺境の鉄道の街

[イゲルフェスト]


イゲルフェストは、街全体が石畳で舗装され赤や青、黄色のオシャレな建物が建ち並ぶ辺境地域では珍しく賑やかで平和な街である。


街の至る所に併用軌道の路線が張り巡らされ、メインストリートには8本の線路が走り、街の中心にある公園広場の駅を抜け、郊外にあるシュバルツァークロイツ列車基地に至る。


この列車基地には機関区や車両区、列車工場が中心の本社ビルを中心に建ち並び、地下には巨大な武装列車用の格納庫や司令部が存在している。


『イゲルフェスト列車隊80編成、出場準備完了』


『貨物偽装ランチャー、弾道弾発射位置に全車両展開完了』


『カタルシア列車隊40編成、出場準備完了』


『フォレストフォート列車隊30編成、出場準備完了』


『ベルセア列車隊50編成、出場準備完了』


イゲルフェスト列車基地の司令部管制室には続々と各地に展開した部隊から準備完了の報告が送られてきていた。


これらの部隊はこの日、暗黒鉄道結社が暗黒武装鉄道結社となるために用意された、戦闘列車の部隊である。


武器を持たない各地の反乱軍の物資を輸送するだけの暗黒鉄道結社ではこの後の侵攻計画に対応できない。

調達、輸送、戦闘等、戦争に必要な全てを自己完結できる組織が必要である。


そのために、暗黒鉄道結社は武装化し、暗黒武装鉄道結社となった。

各地の列車隊は解放軍が解放した辺境地域を飛び立ち、連邦領への侵攻作戦を開始する計画となっている。

後は、管制室の中央の席に座るフラウ総帥が作戦開始の命令を出すだけである。

そして、彼はゆっくりと立ち上がった。


『暗黒鉄道結社の諸君、時は満ちた。我々はこの瞬間を持って暗黒武装鉄道結社シュバルツァークロイツという剣を手に入れた。我々はこの剣を暗黒種族の未来を掴み取るために使わなければならない。暗黒種族の未来永劫の繁栄は、力でのみ約束される!立ちはだかる者を力で打ち砕き、蹂躙する!我々はその力を得た。諸君、共に未来を掴む為に戦おう!暗黒種族に栄光あれ!!ジークシュバルツァー!』


『ジークシュバルツァー!』

『ジークシュバルツァー!』

『ジークシュバルツァー!』


フラウ総帥の言葉はリアルタイムでテレビ、ラジオ等の様々な手段で放送され、暗黒種族達は熱狂し、右手を上げ、シュバルツァークロイツのスローガン[ジークシュバルツァー(闇を讃えよ)]を口々に叫ぶ。


その様子をモニターで確認したフラウ総帥は、ゆっくりと右手を上げ、


『全部隊、作戦行動開始せよ!』


と、命令を下した。


イゲルフェストにサイレンが鳴り響き、列車基地から次々と戦闘列車が出場し、メインストリートの併用軌道をゆっくりと列を成して離陸用の加速軌道に向かう。

その様子は、まるで出陣式の行進である。


離陸し無軌道走行に入った列車は次々と亜空間軌道に侵入し消えていく。


各地の車両区からも大量の戦闘列車が出撃し、進軍を開始する。


『総帥、武装化が実現しましたね……』


横に座っていたサラ総元帥が立ち上がる。


『そうだね、でも鉄道は本来、人や物を夢と一緒に運ぶ存在なんだ。だから、今は本来の姿とは違う異常な状態……だけど、本来の姿で居られる平和な時代を作るためには必要な事……僕は可能な限り早くこの鉄道が普通の姿で居られる時代を創らなきゃいけない……』

フラウ総帥は正面ねスクリーンの様子を確認している。

平和な時代…軍隊が必要とされなくなる時代、元々十字軍の兵士であった自分も必要とされなくなるかも知れない。

サラ総元帥は不安を感じた。

それを感じ取ったフラウ総帥は更にこう言った。


『僕達は、武装してるけど鉄道会社……だから平和な時代にも居場所がある……他の軍隊には無い特権でしょ?』


サラは苦笑いをしながら、自分の手元の画面を確認した。

どうやら、フォレストフォート列車隊の速度が速い、このままでは攻撃のタイミングがおかしくなる。

指揮官は、確かワーグ ラーグ元帥……あのメタボめ、勝手な真似を…


『ワーグの進軍速度が早過ぎます、進軍速度を厳守するように伝えた方がよろしいかと……』


サラの助言でフラウもはっとし画面を確認する。

どうやら、全く気付いていなかったようだ。


『ありがとうサラ、でもなんでワーグだけ速いんだろう……』


『……どうせ自分の隊を一番乗りさせたいとか、意味の判らない理由でしょう……。』


『かな……でもよく気付いたね…危うくスルーしちゃう所だった。』


『気をつけてくださいね。』


『大丈夫、サラが居るから♪代わりに気をつけて。』


『総帥……(汗)』


サラは、総帥とのやり取りに頭を抱えつつも、悪い気はしなかった。

今、総帥に必要とされている。

彼女にとってそれが何よりも嬉しい事だった。



今回は十字教会の拠点の聖都セントノアやパウエル教皇等が初登場、あと最後に名前だげ登場した、ワーグ ラーグ元帥はよく居るメタボのボスキャラ的なイメージです。

早く彼のバカっぷりを描きたくてしょうがない。

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