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深夜の特別列車

遅くなりました。

ついに、シュバルツァークロイツの戦闘列車の登場です。



連邦政治の中心都市

[ジュリアス]

双子と神奈は、15番街ターミナルステーション前にいた。

神奈が双子の保護者のフリをしてくれたお陰で、面倒な事にはならなかった。

その代わりに神奈が、さっきの警官にこっぴどく怒られた。


『あう……私悪くないのに……』


当然彼女は相当凹んでいる。

無理も無い、彼女は何も悪く無いにも関わらず、双子の保護者のフリをしたために、降り懸かった災い……簡単に言えはとばっちりである。


『まぁ、元気出すのだ♪』


けらけら笑うリズロット(元凶)に神奈はムッとした顔をする。


『あ、今のうちにこれを渡しておくのです♪』


ラズロットは何処からともなくカードを取り出し、神奈に渡した。

カードにはコモンランゲージ[共通語(連邦設立時に作られた世界共通語)]でこう書かれていた。


[御召し列車「キンダーガルテン号」乗車許可証]


どうやら特別な列車に乗れる切符のようだ……

しかし、列車の名前がキンダーガルテン[幼稚園]、よくみるとカードの裏には幼稚園帽子に羽の可愛らしいエンブレムが刻印されていた。

ふざけているとしか思えない……


『…あの…これは?』


当然の質問である。


『もうすぐ、特別列車が来るのだ♪』


しかし、リズロットはそれを聞かずに、ラズロットの手を引き走り出す。

仕方なく半信半疑のまま神奈もそれに続く。


しかし、走り出して数十秒……ラズロットが速くも息を切らす。運動不足もここまでくるとある意味すごい。


『だ…大丈夫?』


神奈が心配するのも当然である。

ラズロットの青白い顔が紫色(人間でいう真っ赤になった状態)に変わり、みるからに苦しそうである。


『へ…へいぎ(平気)なろです……』


『いや、見るからにやばいから……リズちゃん、歩いてあげて』


神奈に言われてリズロットが走るのを止めると、ラズロットはその場に座り込んだ。

相当苦しかったらしく、肩で息をしている。


『運動不足だよ完全に……』


神奈はラズロットを抱き上げた。

それを見たリズロットは再び走り出す。

どいやらラズロットが運動嫌いでリズロットが運動好きなようだ。


神奈はラズロットを抱き上げた状態で改札口に向かう通路を進む。


既に終電の時間を過ぎているので、通路の明は消えている。

当然その先にある受付窓口も閉まっていた。


しかし、リズロットはそれを気にする事無く、窓口まで駆けていくと、何の躊躇も無く呼鈴のボタンを押した。

……しかし、反応は無い。

リズロットは何を思ったのか、ボタンを連打!!


『ちょ……ちょっと!』


その様子を見た神奈が慌てて止めに入るが、時既に遅し、受付の中で作業をしていた駅員がでてきてしまった。




『何かご用すか?』

『……てか、営業時間外に有り得ねえんすけど…』


出てきのは、すこぶる態度の悪い駅員だ、鼻と耳にピアス、そしてリズロットの件を考慮に入れても接客業とは程遠い言葉遣い……

そう言えば、この鉄道会社は職員の態度が悪い事で有名で、数年前に倒産寸前になったというニュースを見た事を神奈は思い出した。


『ねぇ…聞いてるんすか?』


駅員は更に怒りをあらわにして迫った。


その時、ラズロットが神奈の肩越しにカードを駅員に見せた。

よくみると、それはさっき神奈が受け取った切符と同じ物だった。


それを見た瞬間に駅員はあからさまに嫌そうな顔をした。


『うわ…マジかよ…ツイてねぇ……駅長!駅長!!…寝ぼけてんじゃねぇよオイ!!!』


駅員はガムを床に吐き出し、受付の中に入って行ってしまった。


『な…なんつぅ態度なのあれ!!』


『まぁまぁ…ここの会社はいつもこう、気にしたら負けなのです♪』


怒りをあらわにする神奈をラズロットが宥める。


『だいたい、あんなんじゃ商売成り立たないでしょうが!』


『だから、乗り入れを条件に運営資金をシュバルツァークロイツが提供してるのだ♪』


シュバルツァークロイツ?神奈は首を捻った。

聞いた事も無い名前だ……


その時、ターミナル内に明かりが灯った。そして、電光掲示板には特別列車の接近を知らせ表示が燈った。


それを合図に、十数人の駅員達がホームに向かう階段を上って行った。


『お待たせ致しました邪神様!特別列車は4番ホームに4時20分到着予定です!!』


受付の中から駅長が慌ただしく飛び出し、改札口を開ける。


『到着は5分後です!お急ぎ下さい!』


3人は駅長に案内され、4番ホームに向かった。


ホームには数人の駅員が特別列車受け入れの準備をしていた。


『間もなく、4番ホームに電車が参ります。黄色い線の内側まで、お下がり下さい。』


不意に、無機質な接近放送が流れ、線路のはるか向こうからゴォーという接近する列車の音が聞こえてくる。


しばらくすると、闇の中に列車のライトが浮かび上がり、パァーンという3連ホーンの音とともに、列車の顔が闇から浮かび上がった。

ハイデッカーとダブルデッカーで構成された大型車両で、正面にシュバルツァークロイツのマークと、2階部分に付けられた申し訳程度の大きさの運転席用の窓、中段左右に付けられた前照灯、その下には、黄色い警告灯が左右に点滅し、その点滅に合わせ、カーン、カーンというアメリカの列車を思わせるベルを鳴り響かせている。

車体全体が分厚そうな装甲板で覆われ、ダークグレーと赤色のツートンカラーで、その境目には黒と白を交互に使用したラインが引かれている。

更に車体の至る所には2連装砲搭やら単壮砲やら対空砲が配置され、それ以外にも、垂直発射型のVLCランチャーやら皿型の早期警戒レーダーなど何がしたいのか判らない装備も装備されている。


それだけの装備をすれば車体は通常の列車よりはるかに重くなる。

当然、この列車が履く台車も特別なものである。

通常の台車は車輪が4個だが、この列車の台車は倍の6個の車輪の台車を2個つなぎ合わせひとつの台車にした、特殊台車を装備し、車輪のかなり大型である。


後尾数両の車両は対空火器を装備してはいるが、豪華な内装が施され、最後尾の車両には展望室が設けられている。

とりあえずは旅客列車としての機能を有しているようだ。

また、ハイデッカー車両の下の部分全てに動力機関を装備している等、恐ろしいまでの走行能力維持思想が見られる。


この、鉄の塊がゴロゴロとレールを振動させながらホームに入って来る。


『な…なにこれ?』


神奈は唖然としていた、まあ当然だろう、彼女の目の前にあるのは、彼女がいつも通勤で使用している乗り物としての列車とは全く性質の異なる兵器として作られた列車だった。


列車は停車位置で停車し、ドア部分に配置されている防弾用のシールドが上下に展開するとそこから折り畳み式のドアが現れ、それが静かに開く。

そこから、真っ黒い肌の赤色に金の刺繍を施した服を着た人形が降りてきた。

顔のランプの様に光る目がそれが生物で無いことを告げていた。


彼等は、プッペディナと呼ばれるキンダーガルテン号を動かす魔導人形達である。

双子は心を読み取る事ができる。

しかしそれは聞きたくない心の声も聞こえてしまうという苦痛となる。

そこで、キンダーガルテン号では、プッペディナによる心を持たない魔法人形により全ての管理を行うように設計されているのである。


『邪神様、お迎えに参りました。』


プッペディナ達に続き、一人の全く違うタイプの魔導人形が列車の中から現れるた。


彼女はリタ・オプテラという名前のキンダーガルテン号メインシステムの外部デバイスで、プッペディナ達を指揮する役目を持っている。


ちなみに、彼女は魔導回路と電気回路を組み合わせたハイブリットタイプである。


外見は双子に合わせた青白い膚に、赤く光る瞳と見るからに機械だと解る特殊な耳、更に彼女は露出の多い黒い服を着ているので、身体のあちこちにはメンテナンス用の窓や排気口が確認できる。


『予定通り、さすがなのです♪』


ラズロットは、神奈から降り、リタに歩み寄る。

これに対し、リズロットは、さっさと列車に乗り込んでしまった。


『乗車許可証確認、この方はお客様ですか?』


神奈に気付いリタがラズロットに尋ねた。


『魔法を習いたいらしいのです♪』


『なるほど、それではご本人の意思確認を行います。


『よろしくなのです♪』


ラズロットも神奈をリタに丸投げして列車に乗り込んでしまった。

なんという無責任の極み……


『初めまして、私はこの列車を管理するリタ・オプテラと申します。』


『…あ…崎守 神奈といいます。』


形式的な挨拶を終えるとリタはこう切り出した。


『それではまず、亡命の意思についてご確認いたします。』


『は…はいいい?!』


神奈は飛び上がった。

亡命なんて説明一切聞いていない。


『……やはり、邪神様からの説明は一切無かったようですね……』


リタはそういうと、神奈に詳しい説明をしてくれた。

どうやら彼女達は連邦が十字教会に支配されていた時代に、辺境のブレーンに駆逐された暗黒種族が運営する機関に所属しているらしく、これから暗黒種族側の勢力圏である辺境のブレーンに帰るらしい。

ちなみに連邦との正式な国交(国では無いが)は無く、ここには容易に帰る事はできないらしい。


『大丈夫です。実家から飛び出すようにここに着ただけだし、数日前にアパートも追い出されて、それが原因で仕事もクビになったし……』


『確認完了、もう結構です。』


神奈はあっけらかんとした口調で更に続けようとしたが、リタの無感情な言葉に遮られた。



『最後に亡命の意思は?』


『はい、魔法が習えるなら……』


神奈の言葉を聞き、リタはハッチを指し示した。


『間もなく出発時間です。急ぎご乗車を。』




その後、キンダーガルテン号は魔導タービンエンジン(液体燃料マナルを使用したガスタービンエンジン)の轟音と強力な駆動モーターの吊りかけ式モーターも真っ青な爆音をジュリアスの街に響かせ、架線の無い郊外の貨物路線まで通常軌道走行で移動し、そこでエアレールによる自立軌道走行に移行した後、亜空間走行により一路、辺境の鉄道の街イゲルフェストに向かった。

今回登場したキンダーガルテン号は、双子を守る為に作られた特別型で同型列車はありません。


ちなみに、重戦闘列車型に分類されますが他の型の兵壮も装備している多機能タイプです。

ちなみに、製造/運用コストは亜空間シップより亜空間列車の方が安かったりします。


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