表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

堕天使①

本文に入る前にシュバルツァークロイツの列車について。


まず列車には以下の様な型番が付けられている。


HBT-25001


HBTは車種を表しこの場合は、重戦闘列車を意味する。

25001は型番で25000番台の1番目に作られた事を意味している。


ちなみにこの車両はHBT-25000系と呼ばれる。


そして、戦闘列車の場合は列車一編成を列車小隊として管理している。


更に同一型系の列車小隊が5つ集まり列車中隊となる。

更に同一型系の列車中隊全て集まり列車大隊となり同一車種の大隊が集まり列車隊となる。


これは整備の効率を考え可能な限り同一の車両が集まるようにした結果である。

そして列車隊が集まり列車総隊となり各列車隊が連携して任務を遂行する。


なお列車総隊を越えて同一型系の車両は存在しない。

つまり、同一車種でも各列車総隊毎に別々の型系の車両を保有している事になる。

その最たる例はダーク元帥率いる第三ヴェファリア列車総隊で、ここの車両は全て魔導蒸気機関車が牽引するトレーリングタイプの戦闘車両ばかりで、他の列車総隊の主力である魔導タービンや魔導ディーゼルの動力分散型車両を整備する能力は有していない。


これは各列車総隊の司令官が自由に列車建造編成が行える権限を有しているという、フリーダム過ぎるシュバルツァークロイツならではの特徴である。

亜空間軌道上

[カナガス戦略路線]


軽戦略列車[フィアリス]の医務室では変態(ショタ)のサラ総元帥と変態(ロリ)のヴェネ元帥が睨み合っていた……。


『私の前で男の娘を泣かせるとは良い度胸ですね♪(怒)』


サラ総元帥は笑顔だが、凄まじいオーラがその背後に渦巻いている……


『ロイは女の子なのでアタシの管轄、お分かり変態さん♪(怒)』


ヴェネ元帥も負けじと凄まじいオーラを身にまとい対抗している。

この状況を簡単に説明すると、ロイ君を狙っていたサラ元帥が、ジャンル(ショタとロリ)を超えて獲物(男の娘)を横取りしたヴェネ元帥にブチ切れている。

これに対し、既に身体検査(詳細内容は自主規制)でロイが女の子だと知り捕食中だったヴェネ元帥は、それをサラ総元帥に邪魔されブチ切れている。

……駄目だこいつら、はやく何とかしないと……。


それはさておき、人間的には疑問符がつく二人だが、戦闘能力に関してはシュバルツァークロイツのトップクラス……その凄まじいオーラと殺気のぶつかり合いで完全に怯えるロイ君……


『はい、そこまで♪肝心のロイ君が怯えちゃってるよ……』


二人の間に割り込む様に姿を現したのは、フラウ総帥だった。

どうやら姿を消して様子を見ていたらしい。

『そ……総帥!なぜここに……』


更なるイレギュラー、フラウ総帥の登場に慌てふためくヴェネ元帥。


『だって、空間転移能力持ってるし、だからサラもここに居るんだよ♪』


悪戯っ子の様な笑みを向けながら、フラウ総帥は答える。

つまり、彼女にとって最大の障害である、サラ総元帥を連れて来たのは彼なのである。


『あ……そうそう、ヴェネ元帥に一言、今後は情報局を私用で使うのは控えてね……ってか、ヤメロ♪』


笑顔で話すフラウ総帥だが何故かこめかみに蒼筋が……やっぱり怒っているらしい。


『そ……それは……能力のある人材を発掘というか……』


『調査命令をみると、条件一[可愛い女の子]、条件二[可愛いドレスが似合う]、条件三[指揮官またはその素養がある](以下略)……ツッコミ所満載だね♪』


『……うぐっ』


苦し紛れに釈明をするヴェネ元帥だが、フラウ総帥がある彼女の趣味丸出しの命令書を見せた瞬間固まった……。

完全に欲望の赴くままに人事を行っていたらしい。


『……でその結果、ロイ君がひっかかると……』


『……え、っという事は……』


『……そ、ロイ君の性別は女性だよ♪』


『エエエエエエ!!』


フラウ総帥の実はロイは女の子だった宣言に驚愕の叫び声を上げるサラ総元帥。


『そ……そんな……私の可愛い男の娘秘書計画が……ううう…』


そして、へたり込み「の」の字を書くサラ総元帥。

お前もか変態総元帥!!


『人事関係の権限見直そうかな……趣味で人事をされたら大変だしね……』


『良いじゃないか!色恋沙汰の一つや二つ、アタシは淫魔なんだよ!!』


淫魔であるヴェネ元帥は、趣味の障害を増やそうとするフラウ総帥に不満げな顔をする。


『指揮所はハーレムじゃないからね……』


『ハーレムは淫魔のロ……ぶべら』


ヴェネ元帥が「浪漫」と言おうとした瞬間サラ総元帥渾身の回し蹴りが側頭部に炸裂し、その身体がジャイロ効果を得た弾丸のごとく捻りを加え吹っ飛んだ。


『あはははは……総帥、ヴェネ元帥は私から直接指導しておきますので……』


目を回したヴェネ元帥の首根っこを掴むと、サラ総元帥は物凄い勢いで部屋から出て行った。



『あ……あの、大丈夫なんでしょうか……凄い飛び方してたんですが……』


不安そうにサラ総元帥が飛び出して行った扉を見つめるロイだったが、フラウ総帥は彼女の肩を叩き『いつもの事だから大丈夫』と何かを悟った様な顔で語った。


『それより、君はこれからどうするのかが聞きたいね。』


フラウ総帥は書類を鞄から取り出し、それをロイに手渡す。


『これは?』


書類には、新設される列車総隊の概要が書かれていた。


『新設予定の第五セントライナー列車総隊、君に指揮をとって欲しいんだけど……』


フラウ総帥の意図が読めない……一体何を考えているのだろか、敵だった相手にこんな大部隊を預けるなんて、正気の沙汰とは思えない。


『こんな大部隊を、正気ですか?』


『至って正気だよ♪調査の結果、君の指揮能力は元帥として申し分ない、だから任せるだけ……問題ある?』


不安そうなロイをよそにフラウ総帥は平然としている。

ロイが不安に思うのも無理はない。

何故なら、列車総隊というのは、各車種毎に編成される列車隊が集まり編成される500編成もの戦闘列車で構成される大部隊である。

そんな大部隊を平然と敵側だった相手に預けるのだから、ロイの正気とは思えないという表現は間違いではない。

しかし、フラウ総帥はロイの不安を全く気にする事なく、話しをつづける。


『今、ダーク元帥が混血天使達の救出作戦を展開してるし、その救出された混血天使達をこの列車総隊に組み込む予定なんだよぬぇ~♪』


『へ?』


ロイの目が点になる。


『だから、君が混血天使達の指揮をとる♪OK?』


どうやらフラウ総帥は、十字教会の領域から混血天使達を救出し、彼らをロイの指揮下に置くつもりらしい。

ますます意味が解らない、下手をすれば一個列車総隊が丸々裏切る事になる筈なのに……。


『私が裏切ったら大損害になりますね……』


『それは無いね……君達は十字軍での酷い扱いにうんざりしている。』


『しかし、それでそちら側に寝返るとは限りませんよ。』


『じゃあ……シュバルツァークロイツの正式な職員としての地位と権利を約束すると言ったら?』


フラウ総帥は混血天使達が最も望んでいるものを理解していた。

何故なら、彼もまた魔族と人族の混血であり腹違いの兄弟達に劣等種として見下されていた過去があり、混血種への差別の苦しみを身を持って経験していたからである。

しかし、それを知らないロイは混血天使達を利用して十字教会を混乱させる為の策略で、用が済めば処分するつもりで都合の良い条件を提示しているのだと考えた。


『十字教会の混乱天使達の力は貴方達の脅威となる……だから上手くおびき出し殺してしまえ……随分短絡的ですね。』


厳しい視線をフラウ総帥にぶつけるロイ、しかしそれを気にせず彼は答える。


『君は被害妄想が激しいね……でも安心してよ、ここは混血種に寛容な組織だから♪』


『どうだか……言葉だけなら何とでも言えますからね……』


ロイは全く警戒を緩めない、しかし次のフラウ総帥の言葉にロイの警戒心は完膚なきまでに粉砕される。


『だってさ、組織のトップが魔族と人族の混血なんだから、差別する訳ないでしょうに……』


『な……なんですと!』


ロイが唖然とした表情のまま固まった。

混血種というだけいや、人族や天使でないというだけで差別される社会で生きてきた彼女にとって、混血種が組織の頂点に居るという事実はこれ以上無い衝撃だった。


『あ……もしかして知らなかった?

僕は魔王バフメドが一目惚れして妻にした人族の女性との間に生まれた存在……だから差別には結構苦しんだ。

だから僕は暗黒種族という大きな枠組みの中に君達を加えても良いと考えている。

そして、長い時間をかけてそれらの種が混ざり一つの種族になる、そうなれば詰まらない種族同士の摩擦も消える。

それが僕のエゴ。

どう?僕の元で僕のエゴを実現させてみない?』


彼は自分の勝手なエゴと言い切ったが、それは混血種全てが望んでいる事であり、断じて彼の一人よがりのエゴでは無い。

なのに何故彼はエゴと言い切ったのだろうか?


『僕がエゴと言い切った理由を知りたいって顔だね……理由は簡単、それを望まない者も居るから、でも僕は彼等の事なんて気にしないし、どんな汚い手段だって平気で使う。

だからこれは僕のエゴ、それでも付いて来るなら大歓迎、邪魔するなら容赦はしない……』


フラウ総帥の話しに引き込まれていくロイ、そしてついに彼女はフラウ総帥の差し出した手を強く握り絞めこういった。


『それなら、貴方のエゴとの利害が一致するなら私のエゴにも協力して頂けますか?』


フラウ総帥はロイの言葉にニヤリと笑い答えた。






その頃、フィアリスのデッキでは、側頭部に渾身の回し蹴りをくらい泡を吹きながら痙攣するヴェネ元帥とその胸倉を両手で掴み激しく揺さぶるサラ総元帥の姿があった。


『いい加減起きなさいこの変態レズビアン!!』


サラ総元帥は眼を覚まさないヴェネ元帥の頬を凄い速さで叩き(はたき)まくる。

見事な往復ビンタのラッシュでついにヴェネ元帥が目を覚ました。

次の瞬間……


『……ったいわねこのバカショタ女!!』


『ぶらっ……』


痛みでブチ切れたヴェネ元帥の裏拳がサラ総元帥の顔面に炸裂、ジャイロ効果を得てその身体が吹き飛ぶ。


『っう……いきなり何するの痛いでしょうが!!』


『それはアタシの台詞よ!!』


身体を捻り上手く着地したサラ総元帥とヴェネ元帥が睨み合う。

地味にこの二人阿吽の呼吸の名コンビのようなきがする……。


『……まぁいいわ、それより貴方は総帥の前でハーレムは浪漫ってバカなの?』


『良いじゃ無い!淫魔族の権利は誰にも邪魔する権利はないわ!!』


『別にやるなとは言っていない、でもね……』


『なにさ!』

険悪なムードでお互い睨み合った状態での沈黙、そして……


『堂々とやるのはやめなさい、私の趣味にまで被害が及ぶ!!』


サラ総元帥の言葉にヴェネ元帥の目が点になる。

彼女の予想では「節度を持って」とか「程々に」と告げられる予定だったからだ。

しかし、彼女に告げられたのは「堂々とやるな」つまり「バレないようにやれ」だった。

つまり、「ここで私達の趣味への締め付けが厳しくなったらどうするの!」という部分でサラ総元帥は怒っているのだ。


『ちょ……怒る所そこかい!』


思わずツッコミを入れるヴェネ元帥。

間違いなくサラ総元帥は上官として進むべき道を外れ……いや、逆走している。

しかも全速力で……


『気にしたら負けよ!

いい、指揮所でハーレムなんて目立つ事をする必要なんて無いわ。

とりあえずこれを見なさい。』


サラ総元帥は分厚い書類を何処からともなく取り出しヴェネ元帥に手渡す。


『っ!これは!!』


彼女に手渡されたのは、先に紹介された第五セントライナー列車総隊に引き抜く予定の混血天使達のリスト(顔写真付き)であった。


『新設予定の列車総隊に引き抜く予定の混血天使達、見なさい美少年と美少女ばっかり、部隊視察をしたらさぞ楽しいでしょうね。』


サラ総元帥がニヤリと笑う。

その邪悪な笑みでヴェネ元帥は彼女が言わんとしている事を理解した。

そう、部隊視察の名目でいつでもハーレム(第五セントライナー列車総隊)に行ける。

そして彼女達の地位ならそこはつまみ食いし放題の楽園、こんな素晴らしい事は無い。


『……解ったよ、アタシのハーレム計画は無用の長物だって事がね。』


『ご理解頂き感謝致します。』


二人は嫌らしい笑みを浮かべカッチリとお互いの手を取りあった。


『私と貴女なら利害は衝突しない、きっと上手くいく!』


『ああ、あんたとなら上手くやれそうな気がするね。』


この瞬間、変態二人のロイ争奪戦争は集結し、相互不可侵条約が締結された。

条約締結の中握手をする二人の締まりの無い嫌らしい笑みは、彼女達の頭の中に広がる未だ見ぬ楽園のお花畑が広がっている事は容易に想像がつくだろう……。


しかし、この二人のお花畑計画は数日後にフラウ総帥の「二人は危ないから出入り禁止ね♪』の一言で呆気なく粉砕される事になるのはお約束だったりする。


ただ、この変態の双璧と呼ばれる二人がこのまま素直に引き下がるかは甚だ疑問である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ