第1話: 転生したら、鶏が火を吹いていた
俺の名前はアキラ。転生前の名前はそのまま引き継いだ。元は日本のサラリーマンで、毎日残業に追われ、ストレスで胃が痛む日々を送っていた。ある日、いつものようにトラックに轢かれて……目が覚めたら、ここ、異世界だった。
「ようこそ、異世界へ。スキルは『ものまね』だ。頑張れよ」
女神みたいな存在がそう言って、俺を放り出した。スキル『ものまね』ってのは、見た魔法やスキルを一時的にコピーできるらしい。でも、1回に1つしかコピーできないし、時間制限がある。しかも、最初は弱体版で、MP消費が激しい。チートっぽいけど、使いこなせなきゃただの便利グッズだ。
街に着いて、まずはギルドを探した。この世界には冒険者ギルドがあるけど、俺はそんな危ない仕事はごめんだ。代わりに見つけたのは「雑務ギルド」。何でも屋みたいなところで、街の人たちの細かい依頼をこなす。報酬は少ないけど、安全第一。
ギルドの受付のお姉さんに登録を済ませ、初仕事を探す。
「新入りさん? じゃあ、これなんてどう? 農場のニワトリが逃げてるのを探してきて。簡単でしょ?」
報酬は銅貨5枚。安いけど、仕方ない。農場は街の外れだ。早速向かう。
農場に着くと、農夫のおじさんが慌てた顔で出迎えた。
「よう、ギルドの者か? うちのニワトリが一羽、森に逃げちまってよ。赤いトサカの奴だ。頼むぜ」
了解、と頷いて森に入る。木々が密集した森で、ニワトリを探すなんて面倒くさい。転生したのに、こんな雑用かよ……。
「コケコケ……」
遠くから鶏の声が聞こえた。そっちに向かうと、赤いトサカのニワトリがいた。でも、何か変だ。周りに狼みたいな魔物が3匹いて、ニワトリを囲んでる。ニワトリ、ピンチじゃん!
「逃げろ!」
俺は咄嗟に叫んだが、ニワトリは動かない。というか、睨み返してる? すると、ニワトリの口が開き──
ゴォォォ!
炎が噴き出した! 小型だけど、火炎放射みたいに狼を焼き払う。狼たちは悲鳴を上げて逃げていった。
「え……鶏が、火を吹いた?」
俺は呆然。ニワトリは俺を見て、慌てた様子で首を振る。いや、鶏に表情なんてないはずだけど……なんか、焦ってる気がする。
「人間に見られた……まずいぞ」
……声が聞こえた。鶏の声?
「コケ? コケコケ!(おい、聞こえてんのか?)」
鶏が俺に向かって鳴いてる。でも、俺の頭に直接言葉が入ってくる。テレパシー?
「待て、俺のスキル……ものまね?」
さっきの炎を目撃したせいか、無意識にコピーした? いや、炎じゃなくて……鶏のコミュニケーション方法をコピーしたのか? スキル発動の条件は「目撃した魔法やスキル」だ。鶏の火吹きはスキルで、言葉もスキルの一部?
ニワトリは逃げようとしたが、俺が捕まえる。
「待てよ。お前、しゃべれるのか? しかも火吹くって……何者だ?」
「コケ!(放せ、人間! 秘密を知られたら、俺たち獣の掟で始末しなきゃいけねぇんだぞ!)」
獣の掟? ますます怪しい。農場に戻る途中で、ニワトリ──名前は「ファイヤ」らしい──から話を聞く。動物たちは人間より賢く、隠れた能力を持ってる。でも、人間にバレないよう普通の動物を装ってるんだと。
「なんでそんなこと?」
「昔、人間に利用されて酷い目に遭ったからだ。優秀なのに体が小さい俺たちを、道具みたいに扱う奴らがいた。今は平和に暮らしてるんだよ」
なるほど。人間社会の裏側で、動物ネットワークがあるのか。
街に戻る頃、路地で黒い猫が現れた。ファイヤがテレパシーで叫ぶ。
「マジカ! 助けろ! この人間にバレた!」
猫──マジカ──は目を細め、俺に向かって魔法を放つ。青い光が俺を包む。記憶消去魔法らしい。
「これで忘れさせてやるにゃ」
でも、俺のスキルが反応。魔法を目撃した瞬間、コピー発動! 俺も同じ魔法を自分に返してみる……いや、待て。コピーした魔法を逆利用?
「ものまね発動!」
俺の魔法がマジカの魔法を相殺。マジカは驚いて後ずさる。
「にゃにゃ!? なんで効かないにゃ!? 人間なのに魔法使えるの?」
「転生者だよ。スキルでコピーした」
今度は白い犬が影から現れた。名前は「ニンジャ」。
「ワン!(まずいぞ。こいつ、俺たちの秘密を知っちまった。どうする?)」
犬は忍術で影分身を作り、俺を囲む。
「待て待て、敵意はないよ。むしろ、協力しないか?」
動物たちは顔を見合わせる。ファイヤが熱く言う。
「コケ!(こいつ、意外と使えるかもな。体が小さい俺たちじゃ、できないこともあるし)」
マジカがため息。
「にゃあ……仕方ないにゃ。バレた以上、味方にするしかない。で、何するの?」
俺は笑った。ギルドの雑務が面倒くさかったけど、これで面白くなりそう。
「何でも屋を始めるよ。お前らの能力と俺のものまねで、依頼をバンバン解決。街の裏側を支える影のチームだ」
こうして、俺の異世界生活が本格的に始まった。動物たちとの奇妙な協力関係──これが、俺の新しい日常になるなんて、転生前には想像もできなかった。
(第1話 終わり)




