六.当主一族
そうしていく内にある部屋に通される三人。部屋に入るなり当主一族らしき存在が深く頭を下げ始める。
「前当主の戍士と申します。大変申し訳ございません。このような目に合わせるなど」
「当主の衛士と申します。真に、申し訳ありません」
「先人様、先程の暴言、申し訳ありません」
「こちらの不行き届きで、申し訳ありません」
戍士、衛士、護士、衡士の順で謝罪をしている。困惑しながら、頭を下げる前に当主一族の顔を見た鋼が感心して見つめている。
(…美形だ。この一族。何かきらきらしているし。皇族だから?成長過程を見ているかのようにそっくりだな)
当主一族の謝罪を聞き、先人も深く頭を下げる。
「初めまして。大知先人です。いえ。こちらが怪しい動きを見せたせいです。心労をかけてしまい申し訳ありません」
謝罪をすると慌てる当主一族。
「いいえ。鷹で文を受け取り、待ち望んでおりましたが現れず」
「そうしている内に怪しい者らを捕まえたと聞き、いつものかと思ってしまい」
「私が尋問しようと牢に向かうと」
「牢に入っていたと聞き、卒倒しそうになりましたが、出て来ないと護士から聞き、頭を抱えました」
先程と同じ順番で話をする当主一族。先人は首を横に振る。
「いえ。特別扱いは良くないです。統率が乱れます。北の守りをされている皆様に失礼です」
「そのようにお考え下さるとは。ご立派です」
「はい。こちらの無礼なのに」
「先人様」
「そのようなお言葉、勿体無いです」
また同じ順番で話す当主一族。それを見ている鋼は
(全員感動している。何で様?)
疑問に思いつつ黙って見つめている。おもむろに隣の瀧に声を掛ける。
「…瀧。知り合い?」
「まあ」
「そっか。あ、光村様か。うん。わかった」
「聞かないのか?」
「話す時が知る時だ」
「…すげーわ。お前」
鋼の言葉に感心する瀧。昔からまるで変わらないのだ。
先人が衡士達と話を続けている。
「それで、都の者の引き渡しですが」
「はい。情報を取る前に捕まえましたので害はありません。お連れ下さい。先人様」
「ありがとうございます。…統括として皆様の力を振るわないと言いましたのに申し訳ありません」
すぐに許しを得られた事と、統括として来て都の命に従わせたことに謝罪をする先人。だが、衡士は首を横に振る。
「いいえ。それは使ったとは言いませぬ。そうだな」
「はい」
「そうです」
「その通りです」
同じ順番で返事をする。再び頭を下げる先人。
「ありがとうございます。では牢に戻り、話を聞きたいと思います」
「いえ。すぐに連れて来ます」
立とうとする先人を戍士が引き留める。しかし、先人は首を横に振る。
「いいえ。本来ならばそちらで裁く処をあえてこちらにしたのです。罰は少々受けてもらわなければ気が済まないでしょう。牢で面会をしたいと思います」
「いえ。ですが、」
衛士も引き留めようとするが先人は首を縦に振らない。
「見ていないにしても罪は罪。北の守りをしている皆様に対しての侮辱です。こちらでは本来どのような裁きを?」
先人の言葉に全員黙る。
((言えないんかい!))
その様子に瀧と鋼が同時に心の中で突っ込む。
「遠慮しないで下さい。情報を無理に外に出そうとしたのです。責は大きい。そちらの気が済まないと思います。聞いた上で都の裁きでの判断材料にしますゆえ」
曇りの無い真っ直ぐな目で見つめる先人に全員耐えきれず、
((目を逸らした))*主君に言いたくない当主一族。
思わず内心で突っ込む鋼と瀧。
(何かわからんが先人が苦しめている)
(気持ちはわかるが何か言えよ)
鋼が感心しながら見つめ、瀧が内心突っ込む。
ようやく絞り込むように出した声で、衡士から同じ順番で返事をする。
「…数日牢に入れて反省を」
「はい」
「そうです」
「はい」
皆少し俯き、ようやく声を出している。その様子を見て再び突っ込む鋼と瀧。
(絶対嘘だ!は、いや、反省、反省って…まさか)
(ああ。成程)
何となく察し戦慄する鋼とほぼ察するが冷静な瀧。
「…軽く無いですか?大丈夫ですか」
裁きが軽い事に心配する先人に更に俯く当主一族。
「はい。大丈夫です」
「はい。二度とせぬと」
「やる気も起こさぬと」
「はい。そう言っていました」
同じ順番で返事を、ものすごく苦しそうにしているのを見た瀧と鋼が
((もうやめてやれ先人))
何だかわからない同情をして先人に内心突っ込んでいた。
それが通じたのか、先人が話を進める。
「…わかりました。私達がここに来るまで数日経っています。今から都にとなればあっという間に夜となるので今日は牢に留め置き、反省を促しましょう。瀧、鋼、大丈夫か?」
「ああ」
「うん。大丈夫だ」
瀧と鋼の返事を聞き、頷く先人。
守氏の仕置きはものすごいです。想像でお願いします。それを主君に言いたくない当主一族。実際の処先人は聞いても大丈夫です。やり過ぎではと思うくらいです。




