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和乃国伝  作者: 小春
第九章 きたとうみ
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一.忠臣の証明

今日から第九章が始まります。よろしくお願いします。

今回は、守気の国と味の国の話になります。長くなると思いますが良ければ読んで頂ければと思います。


 綜大臣が和乃国の全氏族に通達を出した。青海の国、御記氏は都に近くすぐに通達を受け取った。筆頭である宗は、通達を見てしばらく無言の後、


「…女大王」


 ぽつりと声を漏らす。当主である採は呆れつつ宗の隣から通達を見る。


「前代未聞ですな。それも」

「陽大王の鍾愛の皇女。先人様に対抗するためですか」


 瑞もため息を堪えつつ考えを話す。宗は頷く。


「こう来るとは。流石綜氏。大王の権威で統括を潰す気か」

「父上、どうされますか」

「こちらも出すべきでは?」


 採は宗の采配を仰ぎ、瑞は出仕を薦める。宗は首を横に振る。


「いや。まだだ。綜氏も我らに対抗する表明を出したに過ぎない。すぐには動けない筈」

「はい。そうですな。しかし、出す事考えねば」


 採の言葉に宗は瑞に意見を求める。


「…瑞。今ならどこだ?」

「あからさまな対抗では的になる。ならば皇統、皇族からが良いかと」

「味氏が守氏。…考えねばな」


(どこまで光村様を苦しめれば…皇族と綜氏)


 内心の憤慨を隠し、筆頭として頭を使う宗である。




〔都・宮中〕



 いつもの書庫は静まり返っている。宇茉皇子、長之皇子、荻君、先人、瀧が各々考え込んでいる。やがて宇茉皇子が呟く。


「…こう来るとは」

「はい。まさか母に。申し訳ありません。兄上。綜大臣とそのような話になっていたとは知らず」

「いえ。良いのです。私は長之皇子様と思っておりました」

「私はまだ成人前。今では無いと判断するのはわかります。ですが、まさか母に」


 宇茉皇子と長之皇子が互いに話す。お互いこう来るとは予測が付かなかったと頭を抱えつつ互いを思っている。そこに瀧が割って入る。


「【忠臣】を証明したいのですよ。綜大臣は」

「瀧。どういう事だ」


 宇茉皇子が問う。瀧は淡々と語る。


「かつてと同じ。伝説の皇后様と忠臣・叶内淑那。そのものでは無いですか。前大王崩御で大王を守れなかった事、あるいは疑惑で綜氏の土台が揺らぎつつある。そこに楔を打ち込むには大きな伝説を利用する。己を良く見せる事に長けている御方ですから」


(元々の思いとは少し変わりましたが)


 瀧は言いながら内心冷たく見据える。

 それは気付かず、瀧の言葉に頷く宇茉皇子。考えを話す。


「…皆にわかりやすく、それでいて権威も示せる。忠臣を再び。そして」

「統括を抑える意味もある。それに母は」


 宇茉皇子の言葉を引き継ぎ、自身の考えを告げる長之皇子に瀧は頷く。


「大知光村を失脚させた陽大王の鍾愛の皇女。充分ですね」

「母は、確かに陽大王様に対しては強い思いはあるが、公平な方だ」

「ですが人の心、わかりません。大王鍾愛の皇女様と忠臣の寵を得た唯一、どちらが強いか」


 瀧の言葉に苦しい表情になる長之皇子。


「…瀧。そうだな。先人、すまない。大丈夫か。先人?」

「…」


 さっきからずっと黙っている先人に皆の目が行く。宇茉皇子も先人に声を掛ける。


「先人、どうした?」

「いえ。大丈夫です。その、瀧」

「ん?」

「寵というのは、そうかな?」

「…いや、一般論」

「そうか。そうだよな。…は、申し訳ありません」


 寵と言う言葉に引っ掛かっていただけの先人である。*光村の思いを受け取るのは嬉しいので。先人は光村が大好きです。

 宇茉皇子が先人を見つめ小さく頭を下げる。


「いや。先人。すまない。綜大臣が」

「いいえ。戦いになる事はわかっていました。そう来るとは予想が付きませんでしたが」

「ああ。私もだ」


 深く頷く宇茉皇子に先人は少し考え、問う。


「それで、太子様は?」

「まだだ」


 首を横に振る宇茉皇子に先人は驚く。新大王の子は一人。諭大王との子である長之皇子。大王と太子が同時に決まったのかと思ったが否定されて驚いたのである。

 先人は長之皇子を見つめる。


「長之皇子様では?」

「そこはまだ。とにかく新しい大王を即位させる事を優先するそうだ」


 長之皇子の言葉に宇茉皇子は頷き、決意を秘めた表情をする。


「…綜大臣は決めているが。私もそのようにしたいと思う。先人、瀧」

「はい」

「何でしょう」

「命を授ける」




〔その頃 都・宮中御用達・鍛冶場〕


 いつものように皆と作業していると頭であり鋼の父で、頭である鉄が慌てて来た。


「鋼、大変だ」

「ん?どうしました頭」


 口調を親子にしないよう気を付けて話す鋼。鉄は詰め寄り、


「地方に技術交換に行ったうちの者が捕まった」

「…え?それってりょうさんの事?」


 都は年に数回地方に技術者(職人等)派遣して技術交換をしている。それはどんな職(染色・織・大工・飾り・陶芸・農法等々)でもやっている。鍛冶師もその一つ。

 今回は鍛冶師と言う事で役人より任命され、宮中御用達鍛冶師が地方に向かったのだが…


 鉄が苦しい表情で深く頷く。


「ああ。何でも情報を盗もうとして」

「何でだよ?真面目で腕がいい古参の鍛冶師だろうが」


 鋼がつい強く言う。本当に真面目一徹。家族を大事にして、欲など無い優しい姿を子どもの時分から良く知っているから訳が分からずつい強い口調になる。それを受け流し話を続ける鉄。


「それで受け取りに行って欲しいと。受け取りに行く者らと責任者で」

「あちらで裁かないのか?」


 いつもなら地方の国で裁く筈と鋼が思っていると鉄がすかさず答える。


「今度から都の者は都で裁く。そうなった」

「成程」

「鋼、頼む」

「…頭に行かせる訳にはいかないか。はい。分かりました」


 こういう時は責任者が出る。頭は都を離れる訳にはいかない。なら次期頭。納得し頷く鋼。鉄は真剣な顔になり


「ああ。生きて帰って来いよ」

「何だよ。…あ」


 父の、頭の言葉に疑問を持ちつつ、すぐにわかった。鉄も頷く。


「頑張って来い。守気の国だ」

「…めっちゃ嫌」


 都嫌いの氏族の一つ。恐ろしい国と言われている処に行くことに頭を抱える鋼である。


まずは守気の国編です。守氏の話になります。

五大氏族は都が嫌いです。光村を追放し、無為にさせ、命をも奪ったから。

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