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和乃国伝  作者: 小春
第七章 まこと
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七.静寂

今日はこの後もう一話投稿します。

とある夜


  宮中のとある一室。呻く声がする。


「は、うああ…」


 魘されている男がいる。夢を見ているようだ。


 とある男の声が聞こえる。若い男。これは…


『大知氏は連として残す。決して、氏族は滅ぼしてはならない。我が名において』


 陽大王の言葉。男は言い返す。


『甘いのです。滅ぼしたければそうすれば良かった。即位の礼ですか?』

『そなたは何もわかっておらぬ』


 失望し、背を向ける陽大王。


 別の男が現れる。


『我に罪など無い』


 冷たい声と昏い目をした男。化物と呼ばれる男。


『大王のお言葉通り、去りました。国に、大王に尽くしたこの身を罪人とした。それだけでは足りませぬか』

『お前は』

『我が血を絶やす事、決して赦さぬ』


 はっと目を覚ます男。現大王である。



「夢…。あの化物が、かつての大王まで、我は正しい事をしたまで。それを」


 部屋は、静かである。


「これ、」


 いつもの影が出てこない。必ず部屋の前に付いている筈の兵も。何の音もしない。

 大王はぞっとする。


「誰ぞ、おらぬか」


 部屋の扉が空けられる。男の影が見える。


「そなたは」


 静かである。






 謁見の部屋にて綜大臣がいつものように奏上に目を通していると、大王側仕えの官人が走って来る。


「大臣様」

「どうした?」


 慌て、混乱している官人に落ち着いて声を掛ける綜大臣。


「お、大王が―」


 官人の様子を察したのかすぐさま踵を返す綜大臣。


「どちらだ?」

「私室です」

「お前らは後から来い」


 尋常ならざる事態と感じた綜大臣がまず一人で官人と共に私室へ向かう。

 するとー


「…いつ気付いた?」


 綜大臣の静かな問いに官人も冷静を言い聞かせ、話す。


「朝、いつものように起こしに向かうと、この様に」

「見張りの兵は?」


 いつも必ず付いている筈と言わんばかりの声に官人は俯き、答える。


「それが、昨日の夜、大王が拒まれたと」

「何故?」

「この処何やら落ち着かれず、人の気配があると眠れぬから離れているようにと」

「離れていてもそう遠くでは無いだろう。何故気付かぬ?」

「わかりませぬ」


 わからぬ事だらけ。その様子の官人に綜大臣はため息を付き、また問う。


「見張りの兵は今どこに?」

「朝、この惨状を見つけた時、少し離れていた兵に聞き出しました。ここで待つよう言った筈ですが―」


 考え込むような仕草をする綜大臣。その時、私室の外から足音と気配を感じる。


「綜大臣。大事ございませんか?」


 綜大臣の部下が声を掛ける。数人程いる。綜大臣が顔を上げ、叫ぶ。


「すぐに宮中すべての門を閉めよ。賊が入った」

「承知しました。大王は」

「医官を呼べ」

「は」


 その言葉に、官人は驚く。


「綜大臣様」

「この事、知られてはならぬ。賊に襲われたが退却させた。しかし、それが今回の戦の件で弱っていた胸の病を悪化させた。そして崩御された。そうするしかあるまい」

「医官を呼んだのは、病とするためですか」

「大王が賊に襲われ亡くなったと知られれば弱き皇権と取られましょう。他の氏族を統括しきれなくなる。さすれば、国は終わりです。この事、内密に」

「…わかりました」


 官人の返事に綜大臣は頷く。


「医官が到着しました」

「入れ」

「これは、御労しい。急な病ですね」

「!」


 既に話は付いている様子の医官と綜大臣の様子に驚き息をのむ官人。その官人の様子に気付きつつ医官と話をする綜大臣。


「そのようです。真に。よろしく頼みます」


 医官は霧である。その様子に尋常ならざるを得た官人は咄嗟に逃げ出す。


「あの者は、大王を追って行ったとするか」

「他の者がおりますゆえ、ご案じ無く」


 霧が一瞬視線を外に向ける。



「終わりか」



 一瞬目を合わせその場を去る。瀧である。



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