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和乃国伝  作者: 小春
第三章 くにのかなめ
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六.探りと解決目前

話は戻り、青海の国。


 御記氏の屋敷で結論を出し、付近の様子を確認するため三人で鉄鉱石の山に入る。洞窟を発見し、鋭と先人が隠れながら付近を捜索し、瀧は少し離れた場所を捜索している。


「…どうだ?」


 洞窟周りを探っていた先人に鋭が小さく声をかける。先人は首を横に小さく振り


「まだわかりません。出てくる様子も無い。気配は感じるのですが」

「中にはいるようだな。近くの集落が襲われた話も聞いた。必要物資はあるようだ」


 山に入る前に近くの集落で物資が奪われたと聞いていた。しかし、それだけ。先人も気づき小さな声で話す。


「必要だから襲う。むやみやたらには襲わない」

「やはり統制をとる上がいるのだろう。―浅はかな上が、な」


 冷たい表情と声。一瞬で変わる。先人に巾着を投げてよこす。


「持ってろ」


 開けると暗器が入っている。驚く。師匠は余り持っていなかったはずなのにと考えているとそれを察した鋭が続けて話す。


「まだ完成していないが試作品らしい。少しもらってきた」


 まさか、鋼が?と驚いて鋭を見つめる。


「師匠、通ってたんですか?」

「お前達がいない時にな」


 あっさり答える鋭に唖然とする。





 鉄鉱石の山の洞窟にて、全員集落で奪った食料など食べつつ休んでいる。


「…本当に大丈夫なのか?」


 渡来人の子孫らしき一人が声を出す。


「大丈夫だ。騒ぎを起こせばいいとの命だ。簡単だろ」


 頭目のような存在の男が安心させるように言う。渡来人の子孫らしき者らが悔いたようにしている。やがてその一人も話し出す。


「兵や民を殺めた」

「思ったより抵抗したからな。民は自発的に来たんだ。避けようがない。引いてくれれば良かったものを」


 平然と話す頭。また一人話す。


「一人、生き残った」

「それは良かった。知らせる者がいれば騒ぎは大きくなる」


「顔を見られたかも」

「大事ない」


「あんたが口当てをはずせと言うから」

「はずしてもよいとは言った。苦しそうにしていたからな」


「気付かれるやも」

「気付いた処で報告出来まい。五代氏族筆頭が」


 頭目らしき男の言葉がわからないと言った顔をして、また一人が諦めたかのように問いを変える。


「…家族は?」

「裏切らぬなら、いつまでも無事さ」


 笑顔で話す頭にぞっとし、後悔する。


「俺達は、兵になれると聞いてー」

「なれるさ。これが終わればな」

「筈様は」


 瞬時に睨む頭。言葉が止まる。


「その名は言うな。安心しろ。あの御方は必ず果たす」


 その様子を密かに気配を消し、見つめる一人。




「と、言う訳のようです」


 瀧である。洞窟内の話を聞き、先人と鋭の処に戻り事情を話す。軽い調子で話す様子に苦笑いしつつ話を続ける。


「成程。兵と称し集め、人質か」


 得心がいったという様子の鋭に頷く先人。そして、


「どうする?」

「こちらは三人。あっちは情報通り十人程度。話を聞いている限り頭が一人と直属が三、四人と見た。残りは渡来人の子孫と考える」


「なぜわかる?」

「暗いが声が違う。悔やんでいる様子が大半なのに対し、数人程は冷静に言葉を出さない」

「成程」


 冷静な判断をする瀧に感心する先人と感心しつつ瀧をじっと見つめる鋭。

 先人は考えを述べる。


「人質にされている家族について、宇茉皇子様に報告を」

「どうやって?」


 瀧が問う。人手が無くなるのは惜しいという意味であろう。


「御記氏当主・採様に当初の船の製作の返答を送る書簡に混ぜて内密に送ってもらう」


 先人が迷い無く答えると、瀧がふいに視線を逸らす。


「いや、そいつに頼もうぜ。緊急だし。そういう事だ、頼むな」


 瀧の視線の先、物陰から人影が。


「気付いていたのか?」


 驚きつつ、言葉は冷静に言う。宇茉皇子様の護衛である。


「瀧、監視で来ている人に頼むのは」


 瀧をたしなめつつ、視線を護衛に送ると更に驚く。


「お前も気付いていたのか…いや、そちらも」


 ちらと鋭を見る使者。頷きつつ鋭が一言。


「殺気も無いし、放っておいた」


 護衛以外全員頷く。少々がっくりきている護衛に瀧は命じる。


「すぐに行け。御記氏を使い、万が一後に判明するとそちらが困るだろう」

「わかった」


 返事と共にちらと先人を見る。視線を感じ、思わず問う。


「何ですか?」

「いや…早く書け。報告後、戻る」


 すぐに視線を逸らし、ぶっきらぼうに話す。いつもの事だと思いつつ、さっと書簡にしたため、使者に渡すとすぐに出ていく。後姿を見つめているとふと、


「そういえば、また名前聞きそびれた」


 良く会うのに名がわからないのは不便だなと思っていると瀧が平然と


「知らなくてもいいんでない?たかが護衛だし」

「そういう訳にもいかない。専属だろう」

「それしか無いだけ」

「?どういう、」

「それで、どうする?」


 次の策を求める鋭。頷く先人と瀧。




翌日

 前日から引き続いて洞窟付近を見張る。今度は先人と瀧の二人で。鋭は後方。


「結構、粘るな。いつまでも暗く狭い場所に籠るのはしんどいだろうに」


 瀧の言葉に頷く。更に見つめる。


「出てこればいいけど…」


 策はある。誰かが出てこなければ始まらない。そう考えていると、こっそり出てくる人が。きょろきょろと振り返り、静かに歩き出す。見張り…?いや…その動きを見て、


「一応訓練はされているようだけど、考えが浅い」

「俺が行く」


 瀧が呆れて言っているのを背に出てきた人を静かに追う。突然止まる。驚きつつ止まる。瞬間、走り出す。走って走って、止まる。戻る。止まる。走ろうとする。少し考え、こっそりと前から出る。


「…どうかされました?」


 害の無い村人を装い、追いかけていた人に声をかける。


「うわっ…誰だお前」


 いきなり出てきたように見える先人に怪訝な顔を向ける。少し驚いた顔をして


「この辺で船を作っている集落から来ましたが、あなたはもしや…」

「なっ、何」

「噂の製鉄の技術を伝えに来た渡来人の方ですか?」

「…いや、ちが…そうだ。道に迷って、鍛冶場はどこだい?」


 先人の言葉に慌てつつ、話を合わせてくる。顔立ちはこの国と違う、が言葉は淀みなく仕草もこの国の者だ。違うが、同じ。成程と思いつつ、こちらも合わせる。


「今、製鉄の方は大変な事になっていて。私共の集落に鍛冶場の人達が避難しているのですよ。案内します」

「それはすまないね」

「いえいえ。行きましょう。お話、聞きたいです」


 にっこり笑って案内する先人を影から眺める瀧。鍛えたかいがあるとにんまりと笑っている。




夜・鉄鉱石の山・洞窟


 夜、見張りを入口付近に置き、残りは休んでいる。昼間、一人消えた気がしたが戻っていた。逃げても無駄と悟ったのだろうと思っているとふっと気配を感じ、頭目らしき男が目を開ける。


「おい、起きろ」


 瞬時に察し、周りに声をかける。近くにいた渡来人の子孫の一人に


「見てこい」


 指示を出し、すぐに行くがしばらくしても戻ってこない。何かがおかしい。その内に気付く。足りない?…まさか


「遅いねぇ」


 若い男の声に瞬時に暗器に手をやる、が、気付く。


「お前が頭か?」


 人が、消えている。残っているのは直属の二人と半信半疑の渡来人の子孫数人。


「何者だ」

「こっちの台詞。あんたが連れてきた渡来人の子孫達はほとんどこちらが預かったよ」


 質問に答えず、話すことだけ話す瀧。最初に乗り込んだのは鋭。


「人質も保護してもらった。もう安心だ」


 安心させるように先人が言う。残っていた渡来人の子孫達は武器を落とす。


「これで三人。減ったねー」


 のほほんとした口調をしつつ睨む瀧に視線を送り


「嘘だ…嘘だ。あの御方に手出しなど、たかだかお前らごときにー」


 嘘だと叫ぶ頭目に


「皇族なら、動かせるよね。あるいは」


 にやりと笑う瀧と頷く先人。





話は少し戻り二日前・宮中


 宇茉皇子が書庫で調べ物をしていると、いつもより慌てた様子で入ってくる荻君。監視に出したはずだがと眉を顰めるとそれを見た荻君が礼をする。


「宇茉皇子様、申し訳ありません。急ぎの知らせにて戻りました」

「…気付かれたのか?」


 監視自ら来るとは、相手に気付かれ、なおかつ切羽詰まった状況と察する。


「最初から…です」


 悔しそうに声を出す荻君につい笑いそうになるが、状況を考え冷静を保つ。


「何だ?」


 すぐに手紙を差し出される。先人から…案外きれいな字だなと思いつつ目を通す。


「…成程。出るぞ、着いて来い」


 内容を瞬時に把握し、歩き出す。荻君は戸惑いながら着いてくる。


「どこですか?」


 にやりと笑い、


「綜大臣だ」


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