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和乃国伝  作者: 小春
第二章 であい
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一.幼馴染

第二章が始まりました。よろしくお願いします。

 綜氏との一件から数日


 先人は瀧と新たに師となった渡来人・鋭と共に鍛冶場に来ていた。この鍛冶場は宮中に武器を献上しているいわゆる御用達である。代々将軍として仕える大知氏とは関係が古く、密接な間柄である。大知氏の没落危機に際しても、その後の悪評が出ても関係が変わること無く続いている。


「暗器?…隠し武器か?」


 鋭の持ってきた武器をつまみ上げ、興味深げに見ている青年。鍛冶場の頭・てつの息子・こうである。髪をまとめ、頭に布をかぶっている。目を輝かせ、鋭の武器をじっと見つめている。


「すごいな、これ。こんな薄いやつどうやって使うんだ?」

毎刀ばいとうという。投げて使う。軽く、薄い。体のどこでも収納出来、持ち運びやすい。いざという時のための武器だ」


 鋭の説明に耳を傾けながらへぇーと更に興味深く武器を見つめている。


「出来るか?」

「はあ?こんなの打ったことねえよ。親父、じゃない頭も、な」


 鋭の問いに鋼が驚き、父である頭に話を振る。頭は思わず一瞬瀧の方を見て目を逸らす。


「まあ、そうだな」


 鋼の問いに同意する。その一瞬を察するが何も言わない鋭。


「しかし、こんなものつくらせてどうするんだ?…暗殺でもするつもりか」

「そんな頼みはしない」


 軽く言うが目が笑ってない鋼に先人は即答する。目を逸らさず、真剣な表情で見つめ合う。しばらく見つめ合い、やがて鋼がため息を付く。


「まあ、お前はそうだな。そっちは企みそうだけど」


 いつもの口調に戻る。そっちとは瀧の事。


「何?俺は何もしないよ。そんな面倒で物騒な事」


 鋼の言葉に笑顔で答える瀧の様子を無言で見つめる頭。


「身を守るためでもあるし、知っているだろう?屋敷が襲われた」

「綜氏か。氏族同士の因縁に血まみれ。大変だな、お前も」


 先人の言葉にため息を吐き、労わるような声を出す。


「お頭、鋼、頼みます」


 二人に改めて向き合い、鋭と共に礼をする。瀧も一応礼をする。


「決して安易には使わない」

「真の理由は?」


 頭が問う。鋼も共に見つめる。そもそも和乃国の鍛冶師は遥か昔、三国の鍛冶師から製鉄技術を教わっている。その中に隠し武器、暗器などの噂も聞いたことがあるので知識として知っているのみ。使用する者は【影】であり、使用目的は【暗殺】。それを欲しがるのは、という意図を知りたいのは当然の事なのである。


「そりゃ、決まってる。先人が【大連】になるため」

「瀧」

「動くと決めたんだと」


 先人が答えようとした時、瀧が当たり前のように答えたので驚いて見つめると、瀧は一転して真剣な表情と声になり答える。


「【大連】…、真ですか」


 頭が問う。大連・大知光村失脚以降、悪評、時には暴言暴力に晒され続け、内政から遠ざけられ力を失い、次世代も育たなかったと言われている大知氏。それを覆す事はかつての大連・光村にかけられた罪を晴らす事と先人自身と氏族の力を付ける事、そして大王に認められる事。それらを成すという事は綜氏を倒すことに他ならない。それを、成すという事は途轍もない道なのだと。しかし、先人は頷く。


「そのために力をつけたいのです。大知氏は内政には関われない。だから師匠の元、色々学び力を付け、宮中内部に深く入り込み、功績を上げ、大知氏の力を盤石にしたい。そして、必ず成し遂げたいのです。お願いします」


 真剣な様子にその場の皆、先人に視線が向く。やがて、鋼が口を開く。


「…お前が高位、しかも【大連】とか、笑える」

「鋼」


 その言い様に頭が諫めるが、鋼は気にも留めず小さく笑う。

「でも、お前が治めれば今よりましで平和かも。…親父、いや頭、俺やってみるわ」 


『いいだろ?』という目線を頭に送る鋼に、頭は一つ息をついて


「お前がやるなら止めんが、こちらの仕事もしっかりやってもらうぞ」

「わかってるよ」

「言葉」

「わかりました」


 さっきから言葉遣いが気になっていた頭は鋼の言葉を逐一訂正する。暗器制作を了承してもらった代わりに不承不承に言葉を訂正する。親子といえど、そこは仕事なのだ。


「頭、ありがとうございます。鋼、ありがとう」


 心からの礼を伝える先人の様子に二人は小さく笑う。昔から相手の身分問わず、偉そうにしないし、素直である。そこが頭や鋼、鍛冶場の人達から慕われている由縁である。瀧も鋭も礼をする。


「気にするな。これが面白そうってこともあるし。これ一つ借りるな。それと…これやる」


 さっと出して渡される。思わず受け取り驚愕する。

「鉄剣⁉」


 へへっと笑い、


「もうすぐ出仕だろ?俺が打った」

「ありがとう」

「折れそうだな」

「折れねえよ」


 からかう口調の瀧に軽く睨む鋼。昔からこういう関係で軽く喧嘩しながら話している。当人達は悪意が互いにあるわけでもないのだがいつもこうなる。鋼が先人の方を見る。


「仮にも将軍氏族だろ。しっかりした新しい剣を持て。お前用」

「ありがとう。本当にしっかりしているし馴染む感じ」

「だろ?柄の方なんだけど、」


 剣の話になり嬉々として説明しようとしている鋼。そこに瀧が一言。


「俺には?」

「やらん」

「は?」


 一蹴する鋼に不機嫌になる瀧。その様子に呆れつつ鋼が問いかける。


「衣装係(織部司)の部署が剣を使うのか?」

「まあそうだけど、見た目がね」

「ふーん、ほれ」


 瀧の言葉に近くの武器置き場から剣を投げてよこす。


「これは?」

「練習用に打ったやつ。思ったより出来が良かったからやる」

「鋼。いくら何でも練習用は」


 頭が苦言を呈する。


「頭。いいよ。なかなか良さそうだ。しかし、ついでかよ」


 一方の瀧は剣を眺めつつ、ついでという言葉に呆れている。


「見た目だろ?」


平然と返し、気にする素振りも無い。それでも出来が悪いものは渡さない。幼馴染としての情があるのである。






鍛冶場の帰り道


 三人、歩きながら何ということも無く話し始める。


「和乃国でも、鉄器を作っているのは知っていたがあの者らはなかなかの腕のようだ」

「彼らの一族は代々宮中に武器を献上し、農機具もつくっているのです。昔、先祖が居の国の鍛冶師から技術を教わったそうですよ」


 師の誉め言葉に先人は嬉しそうに答える。


「成程。居の国は昔から和乃国との交流が強いからな」


 納得するように頷く鋭。


「かの国よりも北(広の国)は遥かに強い」


 突然の瀧の話に空気が凍る。一瞬の間の後、


「…何の話だ」

 

 先ほどの穏やかな表情から一転して氷のような様子で答える。


「過去の戦の話くらい良いではないですか。参考まで」


 師・鋭の様子を気にもせず、平然と言う瀧。


「私も聞いてみたいです。お願いします」


 半分空気を壊す目的、半分本気の様子の先人を見て、ひとつ息をつくと


「…戻ってからな」


 といつもの空気に戻し話を続ける。


「それにしても、先人とは親しいようだな」

「はい。代々大知氏に武器を打ってくれています。幼い頃からよく顔を出して、鋼…さっきの頭の息子ですが幼い頃からの付き合いで、瀧より先に友になりました」


「成程。幼馴染か。その剣も良いものだ。いい友をもったな」

「はい。口は不器用ですが、根は筋を通す、まっすぐで情が深い者です」


 昔話に穏やかに話す二人に割って入るように、


「まあ、俺の方がずっとお前の事わかってるけどな」

「どうしたんだ?」

「細かい奴だな、お前は」


 珍しく拗ねた様子の瀧に先人は戸惑い、鋭は呆れ顔で見つめる。


「暗器、出来るといいですね。使ってみたいです」

「それには鍛錬だ。習得するにはかなり時間がいる」

「はい。頑張ります」


 気合を入れるように返事をする先人を鋭が見つめる。


「そんなに使ってみたいか?」

「剣では難しい場合もあります。室内だったり、狭かったりなど。ですが、暗器は頭も見た事が無いようですし、鋼もはじめての事ですから完成は少し先になりそうですが」

「そうだなー」


 残念そうにしている先人の声を聞きながら、ちらりと目線を瀧に移す。瀧は相変わらず平然とした顔をしているだけであった。


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