九.その後
第一章はこれで終わりです。ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
翌日・大知屋敷
いつもの通り顔を出しに来た瀧だが、屋敷内が何やら騒がしい。何事かと中へ入るとあちこち修繕中である。先人が気付き、声をかける。
「瀧」
「どうした?昨日の襲撃では屋敷内に被害はほとんど無い筈だろう」
「それが、」
「当主が壊していた」
「は?」
先人が答えようとすると後ろから鋭が出てきて簡潔に答える。困惑する瀧に先人が説明する。
「綜氏からの知らせで…」
かいつまんで言えば、こうである。
昨日の件のその後、夜中に綜氏から書状を携えた使いが来た。当主である巌と佐手彦、先人が中を確認すると流麗な字でこう書かれていた。
『大知連殿
此度の件、我らの名を騙る愚か者の仕業。実に遺憾である。元々我が屋敷の下働きだった者だが機転が利いて重用しようと側仕えにしたのが過ちであった。まさか我らを騙り他国の者を引き入れようとしたばかりか、罰を与えようとした矢先に逆恨みで襲撃とは嘆かわしい。首謀者はこちらで処分する上、他の襲撃した者らもまだ居るようでしたらこちらで厳重に処させて頂きます故。なんの礼には及びませぬ。こちらの不手際。これで互いに遺恨は残りますまい。使者と共に人も密かに送りました由。
追伸 他国の者、どうぞお好きに。 綜氏当主 綜 茉子 』
「「「・・・」」」
三人、絶句する。言い回しは丁寧だが謝罪の言葉が一つも無い。佐手彦と先人は恐る恐る巌を見る。
次の瞬間、
「で、暴れたと」
「叔父上と鶏が鳴くまで止めていた」 *鶏は朝を知らせる
「気絶させても良かったのだが先人が駄目だと」
「追い出されますよ」
冷静に受け止める瀧に、ぐったりしている先人に、真面目に言う鋭。
「で、修繕ね。職人に頼んだらいいのに」
「さすがにこれだけ壊れていると変な噂も出るから」
瀧の言葉は至極真っ当であるが、人の口には戸が立てられない。頼んだ職人らから噂になる可能性もあるし、これ以上大知氏への悪意を増やすことを避けたい。等を考えているだろう友の気持ちを察し、
「仕方ねーな。手伝うぜ」
「え、いいよ。今回の件では」
「いいから」
皆で屋敷の修繕に入る。季節は春。暖かい空気が場を包んでいた。
やがて大きな時代が始まる。そのわずかの間の穏やかな時間だった。
第二章は一章と同じように毎日一話ずつ投稿したいと思います。
第一章と第二章で和乃国の世界観と人間関係の紹介が大分出来るのではと思っています。
ここまで読んで頂きありがとうございます。




