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第1話 女神様、それは詐欺です。

「わが愛し子をお救いください……」

「……変な夢」

「いえいえいえ、夢じゃないです。現実です、ちょっと待ってください、寝ようとしないでくださいぃ!」

「いやだって半透明の超美人が泣きながら宙に浮かんで両手合わせて祈ってるとか、夢じゃないならどんなSFかファンタジーだよ」

「私は女神。女神ラーシュカ。今私の世界では、わが愛し子が魂の死を迎えようとしているのです……あまりにも弱りすぎたわが愛し子の魂を、どうか、あなたにお助け頂きたいのです……」

「無理です。他当たってください」

「検討くらいしてくださいぃ……」


 さめざめと泣かれてしまった。

 ハヤテは『この下、ジャージなんだけどなぁ……』と思いながら、布団からのんびりと起き上がる。今正に寝ようとしていたというのに、はた迷惑な女神様だ。どこの女神だ、聞いたことない女神様だ。

 枕元で充電していたスマホを引き寄せ時間を見れば、草木も眠る丑三つ時だった。


「検討しました。無理です」

「してませんよねそれぇ!」

「だって、女神様でも無理なんでしょ? 一般市民の、特になんの取り柄もないオレに何か出来るなんて思いませんて。オレそこまでおごり高ぶっていないんで」

「あなたにしか、出来ないんですよぉぉ……魂の波長が、ちょうどわが愛し子と同じなのです。いくつもの世界を巡り探しましたが、あなた以外にはいなかったんですよぉ……」

「はぁ」

「反応ぅ! とにかく、頷いてくださればそれで良いのです。そうしましたら、私はあなたの魂の力をわが愛し子に分け与えることが出来ます……」


 詐欺の口上かよ。……と脳内でツッコミ、ハヤテは改めて目の前の女神を見つめた。

 目が潰れそうなくらいの美人だった。後光的な輝きが後押ししているのかも知れないが、それにしたってどえらい美人だ。

 だがしかし。どれだけ綺麗だろうと女神だろうと、なんだよそれはと言いたくなった。「頷けば良い」? 詐欺だろ。


「それ、オレに何かメリットあります?」

「ええぇ、メリット…………メリット……? 女神の愛し子を救うことが出来る、という――」

「それはあなたのメリットでしょ。オ・レ・の、メリットです。それをして、オレに何か良いことあります?」

「女神の助けになれるなんて、これ以上ない栄誉では?」

「その栄誉とやらが欲しい人にはそうでしょうけど、オレ、別にそれ、欲しくないんで。欲しくないもの押しつけられても、それ、ただのデメリットなんで」

「……りくつっぽ……」

「はい? 何か?」

「いえいえいえ……そう、ですねぇ……それならば、………………あなたの願いを叶えてしんぜましょう」

「いくつ?」

「ええぇ……いくつって、……1つ?」

「もう一声!」

「………………2つ」

「さらに一声!」

「………………………………3つ。あ、これ以上は絶対無理ですからね!」

「分かりました。3つで手を打ちましょう」

「…………予想以上に強欲ですね……。わが愛し子と全然違う……」

「そりゃオレはあなたの愛し子じゃないですから。違うの当然でしょ」


 そしてハヤテは条件を出した。願いだ。

 ① 女にモテたい

 ② 金持ちになりたい

 ③ 強い力が欲しい

 ゲスだって? 上等上等。ゲスでOK。ゲスいと言われようがなんだろうが、欲しいものはその3つだ。

 女と金と力、男が男として世間の荒波渡り歩くにゃ、絶対不可欠なものでしょどれも!


「……分かりました。叶えましょう……」

「ありがとうございまーす。叶えて貰えるなら、いくらでも頷きますとも!」

「……それでは、契約は今ここに成りました。あなたの魂の力をもらい受け、わが愛し子に――」


 女神の言葉は、最後までは聞こえなかった。目の前が眩むような強烈な眠気に襲われ、ハヤテの意識は、闇に沈んだ。



 そして朝がやってきた。


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