愛でるに値する
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
偽物と模造品について知らなかったので、再度調べましたよ〜。
偽物売るのは法律で罰せられるので、注意が必要です。
※ずぶの素人発言です。悪しからず。
骨董品店。多くの古きものが集まるその場所は、初心者には近寄り難い世界である。そのせいか、やはり何時も客はいない。客が居ないからこそ、本屋の様に物静かな店主が多いのも確かである。……此奴は例外として。
「いやはや〜。嬉しいねぇ。蚤の市に出店して、老若男女問わず世間話した甲斐があるよ。最近は若い子にも興味持ってくれてねぇ……」
客よりお喋りである。黙っていれば丸眼鏡の似合うはんなりとした青年なのだが、口を開けばこのノリ。初めて来た時は少々面食らった。
こちらが挨拶する前に『いらっしゃい〜。なんか興味ある? 勝手に触られると、嫌がる子もいるから、見たかったら一声かけてねぇ』からの、『入荷した古美術が〜』だの『ちょっと傷んでるけど〜』と独り言が続く。
最初に言っておこう。これはかなりのレアケース。ちゃんと挨拶して、所持金と欲しいものを話す事から始まる。
まぁそうやって驚かされたのも最初の話。今では普通に話をする様な間柄になった。店主は品を愛しているし、時折『この子、君の事が好きみたい。興味はある?』なんて言い方をするが、無理な押し売りもしない。興味がなければ、さっさと引き下がる。まぁ、良い店主だと思う。
「模造品も置いてあるよ」
「えっ!?」
目を見開いて彼を見ると、人を食った様なニヤニヤとした笑いを浮かべている。模造品を置く骨董品店の店主ってなんなんだろ。信用していた分、ショックだった。
彼は私の引き攣った顔を見て、彼は口を開く。
「勿論、本物より遥かに安価だし 、売る時にはその旨を言うよ? それでも良いって言ったお客にしか売らないねぇ」
「……なんで……置くの?」
「欲しいお客がいるから」
口元は笑っていたけれども、目は真面目だった。大真面目だった。彼は椅子から立ち上がり、屏風を指さした。龍の絵柄が書かれた金の屏風。サイズは手乗り。
彼は愛おしむ様に眺めながら、口を開く。
「これとかそうだね。『本物はとても手が出せないけど、似たような物を安価で欲しい』って人に売ってる。本物じゃなくても良いんだ。模造品でも良いんだ。自分が惚れて、その値段は安価と思って金を出してる。この子達の価値はそこにある。
ただ見て眺めたい。愛したい。それに偽りはないんだよ。売人にも商品にもね」
「そっか」
ちょっと分かる気がする。能面に興味を持って、でも本物は到底手に入らなくて、売っていた小さな小物に手を伸ばした事。本物ではないかも知れない。でも……私が愛でるに値する。
そう言うと、またにいっと口角を上げた。
「この子達、偽物じゃないからね」
追伸 偽物って?
「商標、ロゴが入ってたら即アウト。あと模造品を本物って言って売るのもアウト。本物を穢す行為になるよ!!」
右も左も分からないので、ふらっと聞きかじった話が出て来ます。
この店主は『骨董品を老若男女問わず、より身近な物にしたい』という思想がありそうなので、『偽物売りそう』と思って出来た話。
正確には『模造品』でした。
例え本物でなくても、傍において愛でたい。
そう言う人々に『模造品』と言った上で売ることもあります。
『お前が好きだって思った気持ちに嘘はねぇだろ!! なぁ!! 傍において愛でたい!! その為に安いと感じたから金を出した。それだけだろ!!』
という気概です。
物を買う時に皆さんもそうやって物を買っていそうだと思います。
私はそうやって買ってます。