第9話
篠宮の屋敷に帰還した進士の子の仲間たちは、遠くで吹き荒れる魔力に、恐々としていた。
「はは、俺らは、あんなレベルの戦いに参加しようとしていたのか。」
「無謀過ぎたわね。」
「ですが・・・勝てるのでしょうか。」
「勝てなきゃ人類滅亡だろう?あんなの。」
「・・・勝つさ。あの人は。」
「勇治!目が覚めたのか!」
「・・・あぁ。」
「根拠もなしに、勝つって・・・なんでそんなことを言いきれるんだ?」
「・・・俺らにコレを渡してくれたのは、親父だ。」
「あぁ、そうだな。」
「親父は、どうやってこれを得たと思う?」
「うん?そりゃ、開発元とのつながりがあって」
「親父は、誰よりも早く、俺に渡してくれたんだ。」
「は?」
「この国の、力ある人々と言われ、英雄と、ヒーローと呼ばれた彼らよりも前に、これをな。」
そう言って勇治はポケットから、カードが1枚しか入らない厚みの、無色のクリアな機器を取り出す。
「これは、俺が10歳の時にくれた物。25年前に変身できたやつなんて、居なかっただろう?」
「それってつまり・・・」
「あぁ。これを開発したのは、親父なんだろうよ。」
「でもどうやってこんなものを作ったの?」
「・・・親父の部屋には、たくさんのカードがあるんだ。」
「あ、あぁ。俺らのカードも、渡されたやつだしな。」
「そこには、猪のカードも、龍のカードも、ケルベロスのカードもあった。」
「は!?じゃああの黒いのって」
「・・・親父、何だろうな。」
「何でまだ自分で戦うんだよ。あの人、80歳だろう?」
「俺らじゃ勝てないから、じゃねぇかなぁ・・・もっと強ければ、親父は頑張らなくても、いいんじゃねぇかなぁ・・・」
「ちっ・・・そのカードを使って変身すりゃいいだろう!お前は俺らの中で最強なんだから」
「・・・俺じゃ、7つ星までしか共鳴させることはできない。」
「あぁ。5つ星以上なんてほとんどいない。お前は間違いなく優秀な。」
「あのカード達は、全部10個以上星が描かれていたんだ。俺じゃ、足りねぇんだ。」
「・・・前から疑問に思っていた、7つ星まで”しか”と言う言葉の意味が分かったわ。8つ星以上なんて1枚も見たことがないのに、と思っていたけれど・・・あるのね。部屋に。」
「あぁ。7つ星や8つ星は10枚以上、9つ星も10枚くらいあったな。でも、10星は1枚で、11星、12星、13星が1枚ずつ・・・魔王ってーのが、10枚以上なのであれば、親父は3柱じゃなく、4柱倒してたってことなんだろうよ。」
「・・・そうか。なら、勝てるだろうな。」
「帰ってくることは無いだろうがな。」
「どういうっ!?」
その時、遠くで光の柱が空を貫くのが見え・・・そして、この屋敷おも覆っていた分厚い黒い雲が消し飛んだ。
「は」
「なっ」
「わぁ」
「おいおい・・・」
「はは・・・親父・・・お疲れ様でした。」
何かがきらっと光るのが見え、そして消えた。
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