第6話
あの割れ目が生じてから、世界は変わったのだろう。
この世界にも魔力が満ち、あれ以降に生まれた子の中には、スライム程度の雑多な魔力から、オーガと同等の魔力を持つ者がいた。
その子達が、ブランクカードに入れた微小の魔力を共鳴させることができることが判明し、体の衰えを感じ始めていた儂は、それを利用して戦う術を作り出すことにした。
あぁ、その開発期間である20年の間、儂自身が戦えば現れた魔王を全て討伐し、溢れかえった魔物たちを根絶することもできたであろう。
だが、それだけだ。
儂が死んだ後に現れた割れ目に対処できず、人類が滅亡してしまうに違いない。
だから儂は、この共鳴統合機を開発し、変身に足りないカードを複数共鳴させることで変身を可能にしたんだ。
儂にも、子が生まれた。
40歳の時に、割れ目が生じ。
50歳の時に、限度を感じた。
45歳の時に生まれた子に、魔力があることは一目見た瞬間からわかっていたが、その子が30歳の時に出会った運命の相手が生んだ儂の孫が自室に置いておいた天狗や猪、ケルベロス、そして龍の魔力を封じていたブランクカードを共鳴させていた時は驚いたな。
あの力があるのであれば、儂が死んだ後も安泰だろう。
だから、今は行け、儂の子とその仲間たちよ。
ここは儂が、いいや、私がどうにかしようじゃないか。
その思いが通じたのか、彼らは気絶した我が子を引きずって逃げてくれた。
黒だけに任せられるか、そう言っていた彼らが、随分と成長したものだ。
目の前に迫ってきた、黒いドロドロとしたスライムの域を超えたスライムの一部を吹き飛ばし、少しの猶予を稼ぐ。
そして、損傷した翼を再展開するために、私は変身を解く。
核を貫くには、空から行かないと話にならないからね。
厚い雲で覆われて、夜空が見えないのが残念だけれど。
「さて、最後の戦いといこうか、リー。」
そう老人が言うと、右腕に装着されている機器から、くぐもった声が聞こえる。
『はは、最後の戦いは君だけさ。』
その言葉に、篠宮は少し寂しそうな顔をする。
「どういうことだい、リー。一緒に戦ってくれないのかい?」
『ふんっ。私は君を気に入ったんだ。だから、最後まで力を振り絞って戦うさ。だがね、その後は、私と君の道は分かれるだろう。』
「ふぅん。まぁ、いいや。アレを倒すのを、手伝ってくれるというのであればね。」
『・・・事前に、君が死んだらこのカードが君の孫の元に転移する魔法をかけておいたのさ。力の再生には多少の時間がかかるだろうが、私はまだ戦い続けるよ。』
その言葉に、篠宮は目を丸くし、そして笑みを浮かべる。
「はは、そりゃあ凄いな。だが、私はあいつを生かしておくつもりはないぜ?」
『・・・ふんっ。どっちにしろ次の変身の負担で、解除したら死ぬ身で何を言っているんだか。まぁ、倒しきれなくとも彼らが十分時間稼ぎはしてくれるだろうね。』
「瀕死であれば、倒してくれるかもしれないな。」
『どちらにせよ』
「戦うしかない、だろう?」
『逃げてもいいのよ?』
「はは、冗談はやめろよ。行くぜ。変身・烏」
『私は烏じゃなく堕天使だって言ってるだろう?・・・まぁ、今は正しいのだがね。』
その言葉と共に、黒い靄が老人を包みむ。
霧が晴れると、黒の翼を持った、スーツに包まれた青年がいた。
「篠宮 進士」
『リズベル・アッシュ・インクが分霊の一つ、個体名、リー』
「『変身名、Raven、いざ参る』」
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