第4話
自身を見つめる篠宮に、ソレは引っ張られ真剣な表情になる。
「多分閉じられちゃうでしょうね。コレは本体が私を送り込んで、帰ってくるまでの間維持してるだけの割れ目だから。」
「ふむ。本体、分霊と言っているが、元は同じなのだろう?」
「えぇ、そうよ?私が死んでも私の自我は本体に戻るだけだから、やりたい放題できるって言うのに・・・!」
「本体にも何か事情があるんじゃないのかい?」
「えぇ、本体は本体でエネルギーが必要な理由はあるわよ?」
「・・・そりゃ、本気で抵抗するだろうね。」
「うーん・・・でも、ほんの少しくらい良くないかしら。」
「そのほんの少し、ってどのくらいだい?」
「えぇと・・・神の最低限、みたいな?」
それを聞いて、篠宮は呆れた表情になる。
「・・・欲張りすぎじゃないかい?」
「10万倍のエネルギーがあるのよ?1000万持ってる親に、100円頂戴、って言ってるみたいなものよ?」
そう言われると、少しくらいなら良いのでは?と思い・・・知恵を使うことにした。
「ふむ。力づくでは奪えないのかい?」
その言葉に、ソレは真剣な表情になる。
「力づく・・・そうね。引っ張るんじゃなくって、一体化を・・・そりゃあ!」
ソレが力を籠めると、腕から黒い光が漏れ出し、膨れ上がる。
「うわ、だ、大丈夫なのかい?」
篠宮の心配そうな言葉に、ソレは冷たい目を向けた。
「・・・えぇ。大丈夫よ。でも、少し離れてくださる?」
「お、おう。」
篠宮が手を離し、距離をとった―とは言っても、狭いマンションの一室なので、そこまで離れられるわけではない―直後、ボン!と言う音が響き、黒い煙で部屋が満たされる。
「けほっ、けほっ・・・いったい何が・・・」
「・・・はぁ。貴様が、この分霊を誑かしたニンゲンか。」
紫髪で先が深紅、右目が紅く、左目が蒼い、漆黒の翼をした・・・先ほどまで居た存在を大きくした存在が、そこにいた。
それは存在するだけで周囲の生物を畏縮させ、空間を軋ませる。
「この世界は・・・ふふ、なかなか面白いじゃないか。いいだろう。力はくれてやる。そうだな・・・あいつがばらまいたこのブランクカードに入り切る限界と・・・こいつがこの体を維持できる程度に、な。」
「な、なんなんだい、君は。さっきのあの子はどこに・・・」
「あぁ。今は本体と繋がっていて、本体が動かしているが、この体はあの分霊さ。すぐに返すし・・・次に来るのは、この分霊が滅びた時かな。まぁ、頑張り給え、力を持つこととなったあわれな存在よ。」
その言葉と共に、ふっと重圧が消え、目の前の天使の羽の色は少し薄くなり、右目がピンク、左目が水色に、そして、髪先の深紅は紅程度になる。
「・・・ふぅ。気に入ってくれてよかったわ。」
「お、おぉ。大丈夫なのかい?」
「えぇ。ところで・・・貴方、英雄願望はあるかしら?」
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