第1話
日本の一般的なサラリーマンである彼、篠宮 進士は、6時30分のアラームで目を覚ました。
寝ぼけ眼でテレビを起動し、顔を洗って歯を磨く。
トースターに食パンを一切れ―これは、8枚切りではなく6枚切りがベストである―トースターに入れ、インスタントコーヒーを淹れる。
ジャコッと言う音と共にパンが焼きあがり、バターを塗って、皿にのせる。
そしてそれらをテーブルに運び、常備しているはちみつをかけ、口に運んだ。
『速報です。つい先日生じたとされる、謎の割れ目から、緑の肌で130㎝程度の小さな角の生えた、ゲームやファンタジー小説に登場するゴブリンの特徴を有した存在が溢れてきた、との情報が入りました。』
その直後、画面が切り替わり、その割れ目とやらの中継画像が映し出される。
そこからは確かに、ゴブリンとしか言いようのない存在が闊歩しており・・・そして、自衛隊の放った銃弾をものともせずに戦車にとりついていた。
彼は、一口食べたパンから口を離す。
「なんだ、これは。質の悪いジョーク広告か?」
銃を持っていた自衛官にゴブリンがとびかかり、その喉元に食いつこうとした瞬間、画面は再び切り替わる。
『失礼しました。ですが、これは、CGではなく、現実です。人類の敵が、現れました。』
かみ砕くように説明するそのアナウンサーの表情は、いたって真剣で・・・先ほど見た映像が事実であることを示していた。
「おいおい、割れ目って、先に洞窟のような空間が広がってるって言ってたあれだろう?」
呆然とそう呟く彼の疑問に答える者は誰も居らず・・・そして、とりあえず食べかけのパンを食べようと―視線をテレビに固定したまま―手を伸ばす。
「やんっ、何するんですか。」
そんな、女の声が響き、彼は下を見た。
「は?」
そこには、小さな黒い羽を持ち、紫色の髪の、小さな天使のようなモノが居た。
「おや?気付いていなかったのですね。パン、ごちそうさまでした。それでは。」
そう言ってソレは立ち去ろうとするが、篠宮の手によってとらえられる。
「いやいやいやいや。この状況で立ち去らせるわけないだろう?そもそも、お前は何処から来たんだ?」
「そりゃ、そこからですよ。」
そうソレが指さしたテーブルの裏には、小さな割れ目があった。
「・・・おいおい、マジかよ。」
それを見た篠宮は冷や汗をかく。
「あのー、そろそろ放してもらっていいですか?閉じたら帰るの面倒なんですケド。」
ソレの言葉を無視し、篠宮は問う。
「・・・この割れ目ってーのは、自由に作れるのか?」
「もう!一方的に質問ばっかりして・・・自由にってーほどじゃありませんけど、私ならまぁ作れますよ。」
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