1話 狩人募集
設定集は後々出します
狩人、人類の希望であり己の力で人々を守る。
それに公務員で給料は出来高制だけど青天井。
旧北海道、の小さな農村から出て来て三日間、ようやく首都旧埼玉までやってこれた。
男も女も、誰だって夢を見て、いい暮らしをしてやると首都まで出向き、狩人として身を立てる。
......しかし、それが出来るのは一握り。
大抵は夢破れ帰ることも出来なくなった人は首都もしくは周辺の街で低賃金の仕事を探し、その日食っていけるギリギリの生活になる。
一か八かの大博打。
文字が読める書けるは勿論のこと、素の腕力や狩人として、力を振るうに値する人間性を持っているか......。
採用されれば最下層のランクから始まり、下積みとして上位の狩人から弟子としての扱いを受ける。
そこで頭角を表して僕の物語は始まるのだ。
周囲からは辞めておけと言われ止められ、地域に配属される警備狩人からも才能が無いと言われたけども、準備だけは人一倍に熟した......筈。
いざ、覚悟を決めて狩人舎へと足を踏み入れる。
夢と希望を抱いて。
「はい、ではこちらの中から弟子入れをお願いしますね」
「へ?合格......?」
素っ頓狂な声を出してしまった。
受付の職員へ狩人志望だと言ったら何枚かの紙を渡され、それらには弟子入り志望している狩人グループが幾つか載っていた。
「よく勘違いする人が多いので言っておきますけど、試験も何も無いんですよ。ただ弟子入りして数日もすれば大体は勝手にに居なくなるだけなんです」
「そ、そうだったんですか......てっきり訓練とかそんなことするのかと」
「訓練?どんなに訓練や勉学に努めようとも実際に魔獣を前にすれば意味もないですよ。それに、そんな費用は降りることがないのでね。ああ、それと、オススメするならここをオススメしますよ」
そう言って渡された紙には、狩人グループの一つ、【ガントレット】と書かれていた。
「新人生還率90%超え、逃げ出す新人は滅多に居ない、逃げられると手続きが面倒なものでね.......辞めるなら今の内とは言っておきますよ」
何人も僕のような人を見てきているのだろう。
眼の下にくまを作った役人の顔をよく見てみれば生きているのか疑うぐらいに顔が青かった。
「だ、大丈夫ですか?」
「いつものことなので」
「.......じゃあ、ここ、お願いします」
「はい、お受け取り致しますね。翌日13時、狩人舎B棟二階、新人受付部屋Cへ集合お願いします。B棟はここA棟の二階中央通路から行けます。ああ、あと荷物は全て持ってきた方がいいです。大体がそのままクランの新人宿舎へ案内されそのまま実戦配備となることが多いので、二度手間でしょう?」
その目には、「逃げなければ」という言葉が間違いなく含まれている。いつも通りの日常、逃げる奴だと思われているに違いなかった。
今日も、今日とて狩人希望の若者達が申請に来る。
これで三十人目。
何度言ったかわからない説明と手続きと、そしていい加減に仕事を増やしてほしくないという個人的感情を漏れさせながら手続きを勧めていく。
恐らくこれを今日はあと二十人近く説明し、締め切り後の仕事は昨日手続きして送り出した新人が居なくなったか死んだかの書類仕事になる。
記念すべき三十人目の青年は歳が十六に身長は高くもなく低くもなくの恐らく170cm前半、体重は70は無いが近いぐらい。
夢を見て上京しやってくる青年、その大体がこれだ。
つまり、いつも通り明日には書類でまた顔を合わせる。
その後二度と顔を合わせることはないが。
狩人なく我々のような書類仕事がメインの役人に夢を見て申請してくれる新人はどこを探しても居ないというのに、狩人だけは延々とやってくる。
勘弁してほしいものだが、その内の一割はちゃんと前線で戦う狩人になってくれる。
だからこそなるだけそうなってほしいと願いを込めて案内する。
自分達の給金の基となるのはそういった新人狩人のおかげではあるのだが、その仕事が給金と合うかと言われれば唸ってしまう。
次の日には合わせた顔の半分が無くなったと報告を受け心を崩し辞めていく人間ばかりなので、新人等にいい目を向けることなどとても出来るものではない。
「ではこれで」
渡す書類を渡し、仕事を一つ終え、次の有望株とされる新人達を案内する。
慣れたものとはいえ、明日はせめて十人は切ってくれることを願うものだ。