化け物少女の悩み
_____私はコルーンが苦手だ。
『化け物』で人を傷つけたあの幼稚園の事件は、コルーンで起こしたから。
私の顔を見るとみんな怯えるし、私もその怯えた顔が怖いから、特に祭りのような日は行くのを避けていた。
でも、私は去年アドラオテル様と約束したのだ。
『コルーンの夏祭りに行こう』………と。
「うぅん、…………」
私は机に座りながら深く考えていた。
コルーンの夏祭りまで、あと5日になった。そろそろ切り出さないと、アドラオテル様は休みを取れないだろう。そうなると私は約束を破る事になる。
それは嫌。でも……………。
『一緒に行こうな』
そう言って笑ったアドラオテル様の顔を忘れられない。思い出しただけで顔が赤くなる。まだ好きだと言われてなかったのに、それでもこうして言ってくれた。私はお世辞でも嬉しかった………じゃなくて!顔を赤くしてる場合じゃないんだよ!
どっ、どうしよう………あ。
ふと、セオドア様の顔が浮かんだ。
セオドア様はいつも私が悩んでいると励まし、慰め、アドバイスをくれる聖人君子のような人。
相談してみようかな…………いやでも、迷惑ばかりかけてるし……でも、大おばあちゃんは今日来ないし、セラフィール様は今日アドラオテル様と共に山のような執務を熟さなくてはならないと言っていた。相談なんてできない。ダメだダメだ………。
そう思っているはずの私は、いつの間にか歩き出していた。
* * *
「レイ、これを食べてみてくれ」
「次は何をおつくりになられたのですか?」
「おはぎだ」
「おはぎ?」
俺専用のキッチンで、俺とレイはそんな会話をする。このキッチンはアミィールが初めて俺にくれたプレゼントで、今も愛用している。そこで俺は初めておはぎに挑戦した。
セイレーン皇国の使者が小豆と餅米を大量に献上してきたのだ。美しい文字で「レイチェル様とアドラオテル様の婚約を是非」と書いてあった。
公に出てないはずのレイチェルちゃんの存在を知っていて随分驚いたが、なんでも学友であったフラン様の兄弟の娘・エリザベス・ダリ・ジュエルズ・セイレーンは俺達よりも早くそれを知っていたそうな。
大量の食材に、ありありと応援の意図が感じられる。嬉しくなった俺はレイチェルちゃんとアドラオテルの為にこうしておはぎをコネコネしているということだ。………け、決してお節介おばちゃんと化していない!おばちゃんのこねたおはぎじゃないぞ!
「………セオドア様、全部口から出ております」
「う………………そ、それより!私はもっと作るぞ!」
「わかりました、では材料を____うおっ!?」
「どうした!?」
執事モードのレイが地声で肩を跳ねさせた。俺も釣られてみると___この猛暑の中、土砂降りの雨が頭上に降り注ぐようにしんなりと濡れながらこちらを見ているレイチェルちゃんの姿があった……って!
「レイチェルちゃん、どうしたの!?顔色悪いよ!?」
「せ、セオドア様ぁ………ひぐっ、私は……私は……」
「~ッ、と!とにかくレイ!今すぐ冷たい飲み物を用意しろ!あとタオルを!」
「は、はい」
俺はレイからもろもろ受け取って、キッチンに備え付けられたくつろぎスペースに連れていった。




