誕生日でハプニング!?
5月4日。私の誕生日。
日にちが違えどこの世界も祝日である。
つまり、私の誕生日は家族以外に認知されない。
そんな誕生日…………の、はずだった。
* * *
「いやぁ~、目出度いねえ、チェル」
「あ、ありがとう」
私達家族は道路を歩きながらそんな話をする。クラウド大おじいちゃんは眉を下げながら私に聞いてきた。
「………本当によかったのか?コスタ・デル・ソルに戻らなくて………お前の誕生日なのに、親にも会いたいだろう」
「ううん、いいよ。夜はテレビ電話するし、…………」
帰ったら帰ったで主にお母さんが五月蝿いから、と言いかけてやめた。学校に行き始めてから「早く男を作れ!」と口煩く言うのだ。あいにくそんな予定がない私には荷が重い。
それより。
「どこ行くの?流石にお腹空いた」
「いやぁ実はね~い~い穴場を見つけたのよ~!本格!お好み焼き!」
「はぁ?」
「はぁ?」
クラウド大おじいちゃんと声を合わせるのと同時に、サシャ大おばあちゃんはある店を指さした。
大きな屋敷の隣に、小さなお店。不格好な店の暖簾には「あっぱれ!平民!」と書かれている。
お好み焼きなんてもちろんこの世界にないから戸惑う。
「お、お好み焼きって………ここはユートピアだよ?」
「ふっふっふ~、聞いて驚け。ここの女将さんは異世界転生者でね!お好み焼き作りが上手いのよ!
ほら、はいろはいろ!」
「わっ」
サシャ大おばあちゃんはそう言って私の肩を抱いて暖簾を潜った。意外と広くて、ほぼ満席の中、黒髪の女の人が出てきた。
「らっしゃーい!………って、サシャじゃない」
「はろはろ~!今日は曾孫の誕生日だから来てあげたよ!席に案内して!」
「あらあら、可愛いわね。席に案内するわ」
絶世の美女だ…………!でも、誰かに似てるような………。
そんなことを思いながら案内された席に座る。本格的なお好み焼き店!って感じの鉄板が置いてある。
「ほらほら、今日は大おばあちゃんの奢りよ~、クラウド、酒でも飲んだら?私は飲むし」
「まだ昼間……はあ、仕方ない奴だ。
チェル、好きなものを頼め」
「………本当に美味しい?ここ。ガッツリ食べちゃうよ?大盛りにしたいんだけど」
「ふふっ、味は保証するわ~。だから遠慮なく食べて!このシーフードとか絶対好きでしょ!」
「シーフード………!」
シーフード、という言葉に思わず身を乗り出す。ユートピアでの魚は貴重で、滅多に食べられないうえ大おばあちゃんが肉派だからそもそも食卓に並ばなくて………つまり何が言いたいかと言うとシーフードが大好き!食べたい!
「シーフードに!する!」
「私キムチ納豆~!クラウドは?」
「………豚玉」
「うんうん。予想通り。じゃあ注文しちゃいましょ。
注文お願いしま~す」
やっぱり家族とゆっくり過ごすのはいいなぁ。楽。丁度いい。沢山食べ___「あーい、おまたせしました~………って、レイチェルじゃん。いらっしゃい」
「「!」」
「!?」
___あ、アドラオテル様!?
目の前には………エプロンとバンダナを着けたイケメンクラスメイトこと皇子のアドラオテル様だった。びっくりしすぎて後ろに下がる。
「な、なんでここに………!?」
「ここ、ばあちゃんの店。ばいと?って奴をしてんだ」
そう言ってに、と笑うアドラオテル様。
き、気まず過ぎる…………!
「偶然だなぁ」
「お、お仕事の邪魔してすみません………!」
「何も邪魔されてないけど!?」