鑑賞会=コンサート!? #04
お、落ち着け!落ち着くんだ私!冷静になれ!今はそれどころじゃないんだ!
そう自分に言い聞かせている私に、アドラオテル様はぽつり、と言葉を漏らした。
「………レイチェルのばあちゃんは綺麗な人だな。なんとなく、レイチェルに似てる」
「そ、そうですか?」
「うん。見た目は違うけど、雰囲気っていうのかな。きっと、優しい人だな。でも、初めて婚約結んだ時いなかったよな?」
「………えっと、ヒマワリおばあちゃんは…………死んじゃったんです」
「……………」
____そう、ヒマワリおばあちゃんは私が7歳の時に亡くなった。私はぼんやり映像のヒマワリおばあちゃんを見ながら言う。
「歌姫、軍人、海賊………女ながら命を削るように生きていた人だったんです。おじいちゃんも医者なのに、命を削って海賊という賊をやってて……2人で仲良く。
私、悲しくて、……歌姫を目指したのも、こうしてヒマワリおばあちゃんのスフィアを見て、歌が上手いって褒められたの思い出して………修行、したんです」
「……………そっか」
アドラオテル様はそう言っていつの間にか零れていた涙を指で掬って、キスをしてくださった。
私はおばあちゃんとおじいちゃんの思い出に浸りながら、アドラオテル様の唇に甘えた。
* * *
「で、では!特訓を始めます!」
「おー!」
「……………」
レイチェル様はそう言った。動きやすそうな服を着ている。僕もアドラオテルも、だ。
今日、突然「ヨウちゃんも来い、動きやすい格好でな」と言われた。また何かやるのかと思ったら、これだ。最初は分からなくてアドラオテルに詰め寄ったが、アドラオテルは答えず、代わりにレイチェル様が教えてくださった。
孤児院の為に「ばっくだんさー」なるものをやるのはいい。けど、不安だった。だって、あの内気なレイチェル様自ら手解きをする、と言ったから。
…………学園に通ってた時から大人しく、あまり人前に出ず、動きも鈍そうなレイチェル様が本当にできるのか?レイチェル様を溺愛するアドラオテルの贔屓目なんじゃないか?
まあいい。出来ないと分かれば進言させてもらうし___「では、始めます!」………!
レイチェル様がそう言った瞬間、空気が変わった。音楽に合わせて、レイチェル様が普段から想像できないほど力強く、細やかなステップを踏んで、見事なアクロバットを魅せた。鼻歌を歌いながらだ。これには驚いて、開いた口が塞がらない僕をアドラオテルは笑った。
曲が終わると、汗ひとつかいていないレイチェル様がにこやかに言った。
「お、終わりです!次に行きます!」
「ま、まだあるんですか!?」
思わず声を上げると、レイチェル様はキョトンとした顔で続けた。
「当日、10曲行います。アドラオテル様は6曲、ヨウ様には3曲踊ってもらいます」
「………………」
「ヨウちゃん、口開きっぱなしはだらしないからやめて。
6曲でいいのか?」
「はいっ、そのうち2曲は劇のような形なので激しくありません!」
____そういう問題じゃない!
僕は心の中で突っ込んだ。
………アドラオテルも変人だけど、レイチェル様はそれを上回る変人……いや、スパルタなのかもしれない………。
ぶるり、身体が震えた。




