皇子は立ち聞きする
「あら?3年の3、4組は1人だけ?」
「ッ!」
急に呼ばれてびく、と体を震わせる。まずいまずい………。
私は慌てて言葉を紡ぐ。
「だ、大丈夫です。1人でもできます!」
「でも………結構量がございますわよ?」
「遅れてくる………かもしれない………ような」
ごにょごにょと言葉を濁すと、仕切っていた平民の女子が私に触れないようにしながらスコップと軍手を渡した。
「一応2組ずつ渡すけど………頑張ってね?」
「…………」
私はぎゅう、とスコップを握る。
………1人か………いやいや、前向きに考えよう。ほぼ初対面の人と気まずく仕事するよりきっと1人の方がマシ………ある意味ラッキー!
しかし、肥料と苗の二人分を見てポキリ、と心が折れた音がした。………いやいや、前向き前向き。困難に立ち向かうとかヒロインみたいだし!私は人外だから力仕事はお任せ!頑張ろう!
私は必死にそう言い聞かせて荷物を持った。
* * *
下駄箱にて。
「アドラオテル様、今日はサクリファイス皇城に戻る日です」
「えー、面倒臭い」
「面倒臭いじゃありません。留学する際に約束したじゃないですか」
ヨウちゃんは俺の鞄を持って深くため息を着いた。仕方ない、そっこー帰るか___「あら?」………?
不意に、女の声がした。後ろの下駄箱で話している。
「貴方今日委員会じゃなかった?美化委員」
___美化委員。
俺はヨウちゃんの小言を聞き流しながら歩き出す女子達を見る。
「今日は花壇の手入れらしくて、手が汚れるから隣のクラスの子に任せてしまいましたわ」
「隣のクラスって、あの異世界人ですか?」
「ええ。あの見窄らしい異世界人。土いじりがお好きなようなので………」
…………隣って俺達のクラスだよな。
異世界人って、レイチェルじゃん。
…………………。
「………アドラオテル様!聞いておられるのですか!早く行きますよ___「わり、ヨウちゃん。俺用事できた」は?……って、アドラオテル様!」
俺はヨウちゃんを置いて花壇に向かった。
* * *
「ふぃ~………土作り完了~!」
私は大きく伸びをする。
やっぱり1人だと時間かかっちゃった。魔法を使ったら早いのは知ってるけど、お花の成長ことを考えると魔力を使わない方が絶対いい。そんなことより、植えなきゃ。
「あっ、これサルビアかあ。小さい頃蜜吸ったな………ん?」
ふと、急に頭上が暗くなった。疑問に思って顔を上げると_____アドラオテル様が、ってええええええ!?
「え!?アドラオテル……様!?あの、どうかしましたか?」
「………やっぱレイチェルかー!!!」
「はいっ!?れ、レイチェルです………?」
アドラオテル様は私の顔を見るなりがく、と膝を折った。何が何だか分からず首をかしげていると、私の隣にしゃがんだ。
「この花壇に苗植えればいいの?手伝うぞ」
「はひ!?そ、そんなの悪いですよ!ミミズも居ますし………!」
「全然平気。これでも父ちゃんに付き合ってやったことあるんだ。
___誰か一人に仕事押し付けるのって、俺は嫌なんだ」
「…………?」
アドラオテル様が険しい顔をしながら急にそう言ったから首を傾げる。けどすぐにわかった。
………もしやアドラオテル様、私がいじめられていると思っているんじゃ………!?ぼっちいじめられそう!みたいな!そりゃあ嫌われてるけど!あの子は用事があるって言ってたし!
私は慌てて言葉を紡ぐ。
「大丈夫ですよ!押し付けられたわけじゃなくて、一緒に組む子に予定があったらしく………私、花触るの好きですし……!」
「…………そっか」
私が言葉を重ねると、ふ、と笑った。何かを言いたそうにしてから首を振って、親指を立てた。
「まあ、とりあえず気張りすぎんな。困った時は頼ってな!」
「いえっ、あの、お構いなく!」
____女子に反感買いそうで頼れる気がしない!
そんなことを思いながら苗を持ち上げた。




