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離れ離れ #03

 









 「…………ってことで、イチカも協力して!」




 「ええ…………」



 カフェ・新世界にて。

 ふらりと現れた身内、サシャさんに言われて顔を顰めた。話を要約しちゃうと、好きなくせにうだうだしてるレイチェルの背中を押せ!という内容だ。



 …………滅茶苦茶である。そして丸投げである。とはいえ、レイチェルがうだうだしているのを間近で見ている私が適任なのもわかる。




 男性陣は使い物にならないし、サシャさんはゴリ押ししかできないし、ヒマワリは死んじゃったし、フジコはフジコだし、勝花は馬鹿だし。ろくな結果にならないくらいなら私が説得した方がいい。




 …………けど。




 「………私が説得するのはいいけど、聞くかどうかはチェル次第よ?」



 「わかってるわよ。……ちゃんと、わかってる」




 サシャさんはそう言って私が淹れたコーヒーを飲んでいる。多分、考えていることは一緒。




 レイチェルは3人の孫の中で1番心に"傷"を抱えている。だから大人しくて、聞き分けが良くて、真面目なのだ。なんとか性格を変えようとしてきた。けれど、変わっていないという事は………まだあの子を蝕んでいる。




 その傷は____私達がつけたものだ。




 「…………私ね、チェルには幸せになってもらいたいの」



 ぽつり、サシャさんが言葉を紡いだ。コロコロと指でシュガーを弄びながら続ける。



 「力とか、血筋とか、………そういうのから解放されて、普通の女の子みたいに好きな人とずっと一緒にいて、好きな人と好きなことして、………笑っていて欲しい。



 人目を避けて、身を引くような悲しいことはもう………終わりにしたくて、無理やり婚約させた。そしたらさ、あの子ったら楽しそうに笑うようになったの。



 全部、アドラオテルくんのおかげ。アドラオテルくんならチェルを幸せに出来る。……そう、信じたいんだ」




 「…………サシャさん………」




 サシャさんは「なんてね」と笑った。無茶苦茶で自由奔放、クズだけど………家族を大事にする人。昔から、何も変わってないんだ。




 「………いつかちゃんと話がしたいな、アドラオテルくんと」



 「近いうちにするわよ、きっとね」




 私はそれを聞いてから自分の淹れたコーヒーを飲んだ。




 * * *





 「………はぁ」




 俺は1人、庭に来ていた。

 レイチェルが泣いていた、レイチェルの花壇。冬だから、花は植えられてない。寂しい花壇は、まるで俺のように思えた。




 ___レイチェルが実家に帰って、もう1ヶ月だ。こんなに離れたのは初めてで、どうすればいいのかわからない。このまま会えないんじゃないかとも思う。




 それが一番いいのかもしれない。

 俺は好きだ、と言ったけどいつ死ぬかわからない。言い逃げみたいになるけど、言えただけで満足だ…………なんて、とてもじゃないが思えなかった。



 だって今、こんなに苦しい。



 ____会いたい。



 _____会って、話がしたい。



 ____笑顔が見たい。




 「………ハッ、これじゃどっちが女だかわかんねーな。父ちゃんじゃあるまいし」




 「………悪かったな」




 「うおっ!」




 急に声がして、思わず飛び跳ねる。振り返ると、丁度父ちゃんが居た。



 「……急に話しかけるな、びっくりしただろ」



 「勝手にびっくりしたんだろう?それより、こんな所で何しているんだ」



 「……俺の勝手だろ。ほっとけ」



 「____レイチェルちゃんに、会いたくないか?」



 「____」




 レイチェルと言う言葉に、口が止まる。

 父ちゃんは小さく溜息をついて、言葉を続けた。



 「アド、………アドラオテル。ちゃんと言葉にしなさい。会いたいか?」



 「………あい、たい」



 最近思うように動いてくれない口が、勝手に動いた。父ちゃんはそれを聞いて「よし」と言って笑った。



 「実はな、サシャさんがお前を連れてレイチェルちゃんの元に行ってくれるって仰ってくれたんだ」


 「!本当か!?」



 「本当よ~!」



 「うわっ!」



 俺が聞き返すと、ひょっこりと父ちゃんの背からサシャが現れた。くるくるとレイチェルが持っていたボタンのついたキーホルダーを回している。




 「アドラオテルくんがどーーーしても会いたい、って言うなら連れてってあ、げ、る!」



 「行く!連れてけ!」



 「おけおけ、じゃあ、準備しましょー!


 アルティアー!」



 「はぁい!」



 次はばあちゃんまで出てきた。父ちゃん以外気配が全くないのどういうことだ………?なんて思いながら、『準備』とやらに付き合った。









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