セイレーン・セイント学園
「セイレーン・セイント学園」。
セイレーン皇国にある、ユートピアで1番大きな学校。根深い身分制度があるユートピアで、「生徒に身分は関係ない」と明言し、それを実行している学園である。
理事長であるフラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーンは聖女であり、その力も偉大で、この無茶苦茶な制度を取り入れた。そのお陰で、この世界の人間じゃない私も通えている。
しかし、身分制度というのはやっぱり厳しい。
「ねえ、あの子、異世界人でしょ?」
「トラファルド・T・エード・レイチェル、なんて大層な名前ね」
「王族のつもりかしら?」
「………」
クスクスという笑い声、陰口………いつもの日常。最初こそビクビクと震えて、どこにも行きたくなかったけど、もう慣れた。私が陰口言われているなんて知ったら、大おばあちゃんが怒り出すから。空気のように過ごしていればいいんだ………。
そんなことを思いながら席に着く。席は自由で、どこに座ってもいいから私はいつも端っこに座る。そうすると人が寄ってこない。寂しいけど、仕方がな___「お、レイチェル、おはよ」………!
不意に声が聞こえた。見ると___目の前に座ろうとしているアドラオテル様の姿が。私は思わず立ち上がる。
「お、おはようございます!」
「!レイチェル!椅子!」
「あっ、………」
ぐら、と揺れる椅子。やばい、倒しちゃ___あ。
倒れそうなイスを細くて白い手が制した。顔を上げて見ると___エリザベス様が。
「…………大丈夫?おはよう、レイチェル様」
え、エリザベス様…………!?
金髪の巻き髪、赤い瞳。近くで見るとより一層美人なんですが!!ヒロイン臭がする!!
「2人とも怪我ないか!?」
「アドラオテル様がレイチェル様を驚かせたのですか?」
「ごめんー、驚かしちゃった」
「ふふ、でしたら今回の歴史課題の答え合わせをさせてくださいませ」
「そんなことでいいの?エリザベス賢いじゃん」
「今回は難問でしたので、他の人の答えも見たいのです。それに、アドラオテル様は常に学年一位じゃないですか」
目の前で行われている滑らかすぎる言葉のキャッチボールに唖然とする。………す、すごい……素敵空間だ…………この素敵空間に居るのは申し訳ないけど、抜けるタイミングが…………せめて静かに………「そういえば」……?
「レイチェルは歴史得意か?」
「もしよかったら、一緒に答え合わせして下さると嬉しいです」
「…………ッわ、私は歴史いつも3で!もし答えが違ったら申し訳なく……!」
____キラキラ空間の中で私は質疑応答みたいになってしまいます…………。
私は一人パニックを起こしたのだった。
* * *
放課後HR。
「今日は定期委員会の日です。委員会に所属している人は忘れずに出席するように。
では、ごきげんよう」
先生の言葉を皮切りに、私は立ち上がって教室を出る。………美化委員の会議場所はどこだっけ__「ねえねえ!貴方って3組の美化委員の子よね?」
「はい?」
ぼんやり考え事をしていたら、貴族がつけるような髪飾りを着けた子が話しかけてきた。女の子は両手を合わせて続ける。
「わたくしは4組の美化委員なのですが、ちょっと用事で出られなくて………わたくしのクラスの仕事も任せても?」
「あ、はい」
「ありがとう」
私はそれを聞いてからその場を後にした。
* * *
「今日は花壇の手入れをします。2クラス一組で作業してください」
こんな日に限ってですかーーーーーーーー!!!!
私は心の中で叫んだ。