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末弟皇子の恋 #03





 「レイチェル様、お聞きしたいことがあります」



 「え?」




 いつものお茶会、セラフィール様が真剣な顔で前のめりになった。真剣な顔、といってもこの天使様はそんな顔も愛らしくてホンワカしてしまう………って!それはだめ!真剣なんだから!



 私は住まいを正して聞く姿勢を作る。



 「な、なんでしょう?」



 「____シエル様とフィアのことです」



 「え………?」




 またシエルの名前が出た。今日はよくシエルの名前とフィアラセル様の名前を聞くな……何かあったのかな?



 「シエルがまた何かをしてしまいましたか?ご迷惑をかけていたら、申し訳ございません………」



 「そうではなく、………実は、フィアがシエル様に恋焦がれているようなのです」



 「え"」




 カチャ、と持っていたティーカップにヒビが入った。あ、あの………あの美しすぎる冷静沈着美少年が野性味溢れるうちの妹を!?



 あまりの衝撃にガタガタと震えてしまう私に、セラフィール様は言う。



 「最近妙に機嫌がよくて、たまに赤くなったりして、明るくなって……とてもいい変化なのですが、何かあったのかとわたくしとアドでフィアに詰め寄ったところ、怒られてしまいまして………。


 フィアは怒るような子じゃなくて、これはただ事ではないな、と」



 「い、いやでも、シエルはそんな、何処かのお姫様とかじゃないし、それどころか人間かどうかも怪しいような子で………」




 私はシエルのこれまでを思い返す。

 初めての幼稚園では髪を馬鹿にしてきた男子の大事なところを蹴りあげその日のうちにやめ、「強くなりたい!」なんて言い始めれば下界と呼ばれる魔物の巣窟と言っても過言ではない荒々しい自然の中で3ヶ月もの間野生児よろしく0円生活を実行し、なんとか捕まえてコスタ・デル・ソルに連れてきたけどお友達がモンスターしかいない………貧弱な私と違ってスーパーパワフル妹。



 ………うん、どう考えてもシエルはだめ。身内から犯罪者を出せない。もういるけど。



 でも、そんな私の心を知らないセラフィール様は首を傾げた。




 「ですが、シエル様はとても可愛いです。元気で、明るくて、楽しいです。なので、フィアが好きになるのも頷けます。



 フィアったら、常にシエル様の手紙を持ち歩いて、暇さえあれば読み返しているのです」




 セラフィール様はとても優しい笑顔でそう言う。………シエルがどういう子というのはさておいて。シエルのことをそこまで想ってくれる人が現れたのは嬉しいことだ。私もシエルが大好きだから、認められるのは嬉しい。




 「………………そうですか。シエルは幸せ者ですね」



 「フィアもです。ねえ、レイチェル様、ですのでシエル様のことを教えてくださいませんか?


 フィアの姉として、想い人のことは知っておきたいのです」



 「わかりました。………きっと驚きますよ?」



 「ふふっ、楽しみです」




 ………私はシエルのことを話した。どちらかと言うと滅茶苦茶な武勇伝が多いシエルの話を聞いて、セラフィール様は驚いたり、笑ったりしてて……私も胸が熱くなった。





 * * *






 「フィア!早く早く!」


 「だから引っ張るなよ!シエル!」




 セイレーン皇国の片田舎、僕達は山の中を走っていた。人気の無い山は神秘的で、自然に溢れている。シエルは冬だと言うのに水着姿で山の中を駆けている。……僕を引っ張って。



 僕より小さな手の温かさに、胸が熱くなる。ドキドキしているうちに、河原に着いた。



 「見て見て!川があるよ!魚!捕まえよう!」



 「ぜえ、ぜえ…………冬だから……僕はいい………」



 僕がその場に座ると、シエルは「ふーん」と言って僕の隣に座った。









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