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嫌いな季節

 



 





 ユーリが3歳になった。

 すくすくと育ったユーリは常に元気で、縫い物をしながらも外で遊んでいることが多い。でも、6月だけは嫌いだった。




「むぅぅぅぅぅぅ!」

「あら~、ユーリってば怖い顔しちゃって~」


 カフェ・『新世界』にて。

 この時期、ユーリは晴れていてもここにいなければいけなかった。理由は、母親が別次元に行って"歌姫"の責務を行っているからだ。大好きな母親と居れないのは寂しくて怒りも湧くというもの。


「ユーリ、ママにあいたい!」

「だーめ。ママはお仕事なの」

「でも、だって、LIVEじゃないもん!やだ!」

「全く、ユーリはママがいない所ではしっかりイヤイヤしてるわよねえ」

「イヤイヤしてないもんっ!」


 ユーリはそう言ってぷい、と顔を逸らしてオレンジジュースを飲んだ。………ユーリがいつもニコニコしていると思っているのはレイチェルだけなのよねえ。というか、ユーリはレイチェルが大好きだからイヤイヤしないんだろうなぁ。アドラオテルくんは度々見てるもんね、ユーリのイヤイヤ。



「ただいま~、ユーリいる?」

「!ままっ!」

「ユーリ!」


 丁度帰ってきたレイチェルはユーリを見るなり駆け寄ってきては抱き締めた。ユーリも、さっきのイヤイヤはどこへやら、満面の笑みだ。



「ユーリ、いい子にしてた?」

「うんっ!ユーリは大人だもん!」

「ふふっ、そっか。………おばあちゃん、ユーリは泣いてなかった?迷惑かけてない?」

「なにもなかったわよ。オレンジジュースを飲みすぎてお腹たぷんたぷんになったくらいよね?ユーリ」

「ユーリたぷんたぷんしてないもんっ!まま、今日のご飯はなーに?」

「ふふっ、ユーリがいい子にしてたから今日はユーリの好きなお子様ランチ!」

「やったーーーっ!」


 ユーリはそう言って万歳する。お子様ランチというのは、唐揚げ、小さなハンバーグ、オムライス、コーンと枝豆サラダ、ゼリーをワンプレートに載せた豪華なご飯だ。ユーリの大好きな食べ物てんこ盛りである。


「じゃあ、ママは作ってくるから、もう少しおばあちゃんと居てくれる?」

「いるーっ!いってらっしゃい!まま!」

「うん、いってきます」


 レイチェルはちゅ、とユーリの額にキスをしてから別荘に繋がる通路の奥に消えていった。ユーリはそれを見送ってからまたカウンターに座る。



「おばあちゃん!オレンジジュース!」

「まだ飲むの?ママ、帰ってきたじゃない」

「また我慢だもん………」

「ご飯作るあいだだけでしょうに」

「オーレーンージージュースーーーー!!!!」


 ユーリはそう叫びながらガンガンとコップを机に叩き付ける。………ユーリのイヤイヤ期を知れて嬉しいのやら悲しいのやら………。


 そんなことを思いながら、オレンジジュースのパックを持ち上げたのだった。



 ◇



 おまけ - 10年後のユーリ × レイチェル × 一花


「そう言えば、ユーリってイヤイヤ期あったっけ……?」

「あったわよ。ねえユーリ?」

「なかったもんっ!俺はずっと大人だった!」

「あらまあ、"魂送り"がある月はどれだけオレンジジュースを飲んだのかしら?」

「う"………」

「???」


 この時期のユーリを知らないのはレイチェルだけでした。






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