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夏祭り #02





 不意に、聞いた事のある声と共にアドラオテル様の頭にゲンコツが落ちた。見ると___アドラオテル様のお母様、アミィール様とお父様のセオドア様が……って!皇帝!?



 「あ、あの!」



 「しーっ、………大きな声で皇帝はやめてね、レイチェルちゃん」



 「んむ、」



 私は自分の口を咄嗟に手で塞いでこくこくと頷く。安定のセオドア様はやっぱり歳を感じさせない爽やかオーラで頷いた。その横でアミィール皇帝様が私の体を見て、セオドア様を見た。



 「……セオ、セオがレイチェル様の浴衣を作ったのですか?」



 「うん、そうだよ。アドが浴衣をプレゼントしたいと言ってね、私は初めてアドからお金を貰ったよ」



 「ふふ、そうなのですか。………レイチェル様、とても綺麗ですわ」



 「あ、ありがとう、ございます………」




 視線が自然と下を向いてしまう。………どうみたってアミィール皇帝様の方が似合っている。黒色に、赤い金魚が泳ぐ浴衣。美しさ何カラット?というか子供産んだ?………うちのおばちゃんなお母さんに見習って欲しい……!



 そんな野暮なことを考えてしまう私を横目に、セオドア様はスムーズにアミィール皇帝様の腰を抱いた。




 「アミィ、私達は行こうか。花火の前に甘いものでも食べよう」



 「ええ、セオ。………アド、しっかりレイチェル様をお守りしなさい。では、ごきげんよう。レイチェル様」



 アミィール皇帝様とセオドア様は眩しいくらい美しい笑みを零してから人混みに消えていった。



 残されたアドラオテル様は顔を顰めた。




 「………レイチェル、レイチェルがさっきセラの邪魔をしちゃならないって言ったよな?その意味がわかったぞ。こういうことだな」



 「ええ………って、私はアドラオテル様のご両親を邪魔だとは思ってませんよ!?」



 「ははっ、分かってるよ。俺達は母ちゃんたちと反対の道行こ。あっちにはたこ焼きがあったな………」



 「あ、あっちは辞めましょう!」



 私は思わず大きな声を出す。アドラオテル様は首を傾げているけど、譲れない。何故なら____その道にある射的の屋台から、とてつもなく聞きなれた声が聞こえてるから。




 「クラウドー!次はあっちの射的の商品全部取るわよ!メルカリに売り出す!」



 「………サシャ、そういうことは静かに言うんだ。それより、金を使い過ぎだ。ただでさえパチンコに金を注ぎ込んで………」



 「あ、あーーーー!私、かき氷食べたい!か!き!ご!お!り!」




 「………」



 「………」





 騒然としているはずの祭りの中に透き通る身内の声に思わず顔を赤らめる。流石のアドラオテル様もわかったらしく、くつくつ、と喉を鳴らして笑ってる。とてつもなく、とてつもなく恥ずかしい………。



 「あ、アドラオテル様!それより私は向こうの___っきゃ!」



 「レイチェル!」



 ぶち、と言う音と共に傾く身体を、アドラオテル様が支えて下さった。顔に熱が集まるけど、立てない。見ると、下駄の鼻緒が切れていて。おまけに潰れた豆が痛々しい。楽しさで誤魔化してたけど、もう隠せなくて。



 「大丈夫か……って、足が傷だらけじゃないか!」



 「あ、う、………も、申し訳ございません………」



 「………ここだと手当しづらいな。少し早いけど、"あそこ"に行くぞ」



 「え____っきゃ!」




 私はアドラオテル様に抱えられて、いつものように転移魔法で消えた。





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