夏祭り #とは
「夏祭り……………ですか?」
とある日のアフタヌーンティー。私は自分でもわかるくらい素っ頓狂な声が出た。目の前でニコニコしているセラフィール様は言葉を重ねる。
「そうなのです!サクリファイス大帝国の名物で、花火も上がるのですよ!」
「そうなんですか?素敵ですね、私はこの世界のお祭り行ったことなくて………」
「では、アドと共に行ってみては?アドは夏祭りが好きなので毎年行きますし」
「そ、それは………」
私は言葉を詰まらせる。
…………それは無理である。アドラオテル様だもの。あんなにイケメンなんだよ?それはもうリア充達とわいわいしながら行くだろう。もしかしたら本当に好きな人とデート、とか………。
ちくり、と胸が痛くなる。……最近、おかしい。私は陰キャでぼっちで、家族以外とまともに話せすらしないのに、アドラオテル様にこんな………。
私は小さく首を振って、セラフィール様を見た。
「セラフィール様は行かないのですか?」
「わ、わたくしは………その、今年は………」
「?あの、私、何か失言をしてしまいましたか……?」
かああ、といちごみたいに顔を赤くするセラフィール様に頭を下げると、「そうではなく」と言われ、キョロキョロと辺りを見始めた。周りに誰もいないとわかると、ちょいちょいと私を呼んだ。私は中腰で顔を近づけると、セラフィール様は小さな声で言った。
「実は………わたくしには、とても大切な殿方が居て………誘ってしまったのです」
「………!」
思わず顔を離してセラフィール様を見ると、セラフィール様はさっきより全然赤い顔をして、挙動不審になっていた。若干涙目だ。
か、可愛い……………!本当にセラフィール様って少女漫画に出てきそうなお姫様だよね。デートってだけでこんなに恥ずかしがって、それでも自慢しようと頑張ってるのが伝わって、羨ましいと言うよりも、「頑張れ!」って応援したくなる。
「…………楽しんできてください。私、お城で応援しています」
「で、ですが、レイチェル様もアドと………」
「いいえ。アドラオテル様は私なんかよりも素敵な方と歩くべきです。私は、お城から花火を見ますので」
私はできる限り明るい声で言う。
その間、セラフィール様は納得していない、という顔をなさっていた。
* * *
「アド!」
「うおっ」
わたくしはアドラオテルの自室に乗り込んだ。理由は勿論、夏祭りについてだ。
「おいセラ、なんなんだよ。自分はノックしろって言うくせに___「貴方はそれでも男ですか!」はぁ?いきなりなんだよ」
「レイチェル様を何故、何故夏祭りに誘わないんですか!?」
「………!おいセラ、お前もしかしてレイチェルに夏祭りのこと言ったのか!?」
わたくしの言葉にアドラオテルはゴロゴロをやめて立ち上がっては近づいてきた。……双子とはいえ、わたくし達は2卵生な上、性別が違う。どうしたってアドラオテルの方が身長が高くて、見下ろされる。すごく不愉快。
「アド!貴方は婚約者になんて顔をさせるのですか!レイチェル様にあのような顔をさせるなんてサイテーです!」
「サイテーはお前だろ!俺達の関係に口出すな!せっかくレイチェルには秘密にしてたのに!」
「秘密って!?秘密ってなんですか!パートナーに秘密なんてやっぱりサイテーです!」
「サイテーサイテー言うな!ブス!」
「ブスはアドです!性格ブス!」
「ちょ、ちょっとやめなさい!2人とも!」
皇族の居住エリアに響く大声に、従者達は勿論皇配であり父親であるセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスは片手に布を抱えながら止めに入る。しかし、思春期真っ只中の双子達は声を揃えて怒鳴る。
「お父様は黙ってて!」
「父ちゃんは黙ってろ!」
「…………はあ。なにがあったのかくらい教えてくれないか?」




