皇子は目撃する
「来週は暑くなりそうだから薄着のドレスをと思ってましたが……それでは体型が………」
「別に言うほど太ってないだろ。ていうか細すぎ」
「気休めはやめてくださいまし!わたくしは本気なのです!………あと3キロは痩せたい………」
「ガリガリになるつもり?骨と皮ってミイラじゃん」
「少しでも綺麗に見られたいから妥協は出来ないのです!」
「ふーん。大変だなぁ」
そう他人行儀に言うと、セラフィールはへにゃりと笑った。
「好きな殿方の為にやっている事だから、苦痛ばっかりじゃないんです」
「………へえー。じゃあ、このお菓子全部貰っていい?」
「う"…………ビスケットだけは残してください…………」
「…………」
涙目のセラフィールの言葉にアドラオテルは呆れる。泣き虫セラは健在だな。……でも、好きな人の為のことはそういうものなのか。
そんなことを思いながら、アドラオテルは立ち上がる。
「んじゃー俺、残りの休憩時間は息抜きしてくるから。なんかあったら『狼の丘』な」
「ええ、わかりました。今日は暑いので水筒は持っていってくださいまし」
「ほーい」
アドラオテルは間の抜けた返事をして水筒片手に消えた。
* * *
「よっ、と」
アドラオテルは『狼の丘』に着くとふう、とため息を着いた。
「外あっついな~……プールの方がよかったかな?」
アドラオテルはそんなことを言いながら大きく伸びをする。そして、ふと気づく。だだっ広い草原の真ん中で、見たことの無い服を着て縄跳びやってる。………でもここってガロの場所だよな。いや、ガロなら怒らないだろうけど____って!
「レイチェルじゃん!?」
「!?」
思わず大きな声を出したら、黒髪を1本に纏めたレイチェルが、青い瞳を見開いて俺を見た。
* * *
アドラオテル様ーーーーーーー!?
私は思わず心の中で叫ぶ。え!?ここから城って結構距離あるよね!?私の足でも30分はかかるのに!?ていうかなんで居るの!?そ、そんなことより………1番見られたくない人に見られたーーーーー!!!
心も体も滝汗を流す私に、アドラオテル様は近づいてきた。
「な、なにしてんの、こんな所で縄跳びなんか………」
「えっと、……」
私は言いよどむ。
………ただのダイエットなんだけど、デブの悪あがきを知られるのは恥ずかしい………。
「えっ、と、心身ともに鍛えようとお、思いまして………」
「縄跳びで鍛えるのか?……うーん、女子がどうやって鍛えるか知らなかったな………それはともかく、此処は『狼の丘』って言ってガロの敷地だぞ」
「ええっ!?」
ガロ、というのは長年この城………というか、アルティア様に仕えている執事の事だ。そ、それっていけないんじゃ………「なあ、レイチェル」………?お、怒られるのかな!?謝らないと!
「ご、ごめんなさ___「顔色、悪い」………えっ」
アドラオテル様はそう言って真剣な顔をして私の頬に触れる。大きな手がひんやりしてる。
「ちゃんと水分とった?」
「えっと、その、1時間前に紅茶を……」
「確実に足りてないじゃん!これ飲んで!」
そう言ってアドラオテル様は青い水筒を差し出してきた。も、申し訳ないしこれ間接キスじゃ………!
「だ、大丈夫です!今から戻れば___っう」
「レイチェル!」
ふら、と身体が揺れて、倒れると思った所をアドラオテル様に支えてもらった。
「……とにかく、部屋に戻るよ」
「あ、え、きゃっ!」
アドラオテル様の言葉に、私の視界は草原から見慣れた自分の部屋に変わった。アドラオテル様はテキパキと私をベッドに寝かせて、氷魔法と風魔法を私にかけた。そよそよと気持ちいい……。
「レイチェル、鍛えるなら鍛錬場にしてくれよ?鍛錬場なら誰かしら居るし、必要なら俺から兵士達に聞くから」
そう言ってアドラオテル様が眉を下げる。………親切だ………アドラオテル様にかっこ悪いところを見せた上嘘まで………これじゃ人間みがきの目標から遠ざかってる………それは、嫌だ。
私はぎゅ、と目を閉じて口を開いた。
「………本当は、違うんです」
「?」




