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” 次 ”という言葉






 「……………ん」



 「レイチェル!」




 パチリ、目が覚めた頃には部屋が真っ暗だった。月明かりで、朧気ながらアドラオテル様の顔が……って。



 「なんで、私………なにが………」





 「はぁぁぁぁ、よかった………戻ってきたらレイチェルが倒れているから、何事かと思ったよ。


 熱中症だって」




 「え………」




 安心した、と言わんばかりにそう述べるアドラオテル様の言葉に倒れる前のことを思い出す。色々考えすぎて倒れたと思ったけど熱中症………って!



 「アドラオテル様!申し訳ございません!私のせいで楽しい時間が………!みなさんは!?エリザベス様は!?」



 「いーよ。落ち着いて。皆はもう帰ったよ。エリザベスも無事。腫れてたけど治癒魔法でなんとかなった」




 「うう………申し訳………」




 「だから謝んな………あ、そうだ。悪いと思ってるならさ………コレ、付き合ってくれない?」




 「?」



 アドラオテル様はにやり、意地悪く笑って2本の花火を見せてきた。そんなことで許されるの………?



 「わ、私でよければ喜んで」



 「やーりぃ。んじゃ、バルコニーでやろうぜ。………起きられる?」



 「ええ…………あ!」



 布団を退かしたら………さっきの水着を着たままで。慌てて布団を被った。



 「や、やっぱ無理です!」



 「は?なんで?」



 「その、えっと、今、お見せできる格好じゃなくて………」



 「…………いーから。その水着、似合ってるし」


 「へ?」



 ぼそり、と言われた言葉。少女漫画とかだと聞こえないのが当たり前だけど、私にはバッチリ聞こえてて……思わず顔に熱を集中してしまう。



 「に、似合ってなど………」



 「いーんだよ!似合ってるの!……他の奴らには見せらんないけど、この部屋には俺だけだ。


 だから、出てこい」



 「わっ」



 私はアドラオテル様に優しく手を引かれてベッドから出た。恥ずかしすぎて、なんとも言えない気持ちを抱えながらバルコニーに出る。



 暑さが少し和らいでいて、そよそよと風が吹いている。水着ってのもあるんだろうけど、涼しい。




 「ほら、やろうぜ。火魔法は使える?」



 「はい、使えます」



 「ふーん。……んでも、俺がつける」




 「きゃっ」




 アドラオテル様は素早く私の花火に火をつけた。シュババババ、と大きな音がベランダに響く。花火なんて久しぶりで、思わず魅入ってしまう。綺麗なものを見てるからか、言葉も簡単に紡げた。



 「………今日はごめんなさい。折角、皆で楽しく遊んでたのに………」



 「んー?いいよ。どっちかってーと俺がプールに連れてったからこんなことになったんじゃないか?」



 「いいえ、楽しかったのに……私が………」



 「………じゃあさ、またプール行こうよ。そんで、次はたくさん花火もやろう。


 夏はまだ始まったばっかりだろ?」




 「___い、いいんですか?」



 「当たり前だよ。俺がレイチェルとやりたいんだから」



 そう言ってアドラオテル様は声を上げて笑った。花火の元火が落ちる。



 「私………精進します」


 「何がだよ!?」





 ____アドラオテル様の中では、"次"も私が居るんだ。



 その事が、凄く嬉しいと思った。




 * * *





 おまけ - 馬車組




 「…………アドラオテル、絶対レイチェルのこと好きだよな」



 シャンクスはぽつり、そう言う。それに釣られるようにレーゲンが口を開いた。



 「レイチェルが倒れたって聞いた時、ケイタは殴られかけてましたね。あれは理不尽なくらい熱中してますよ」



 「ほんとだぜ………あんなマジで怒るか普通………まあでも、中々のシンデレラストーリーだよなぁ。平民に恋する皇子!って。俺、応援したくなっちゃったよ」



 「御三方」




 冷たい声にヒュッ、と男3人組は喉奥を鳴らす。ブリザードのように冷たい顔をした、軽蔑するような眼差しで3人を見ているエリザベスが。




 「………下世話ですよ」



 「「「ごめんなさい……」」」




 謝る3人をよそに、エリザベスは馬車に寄り掛かる。

 ____あんないい子と上手くいかなかったら、アドラオテル様を殴ってやるわ。




 助けられた1件でレイチェルを見直したエリザベスでした。






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