ヒーローは遅れてやってくる
「お嬢ちゃんたち、遊ぼうぜ?」
「ひょー、黒髪のコ、エロいじゃん」
「忌み子だろ?やめとこうぜ?片方の金髪の子の方がいいって」
「俺は気にしねー。な、遊ぼうぜ?」
「や、やめてくださいませ!離してください!」
「ち、大声をあげるな!口を塞げ!」
「きゃっ!」
「エリザベス様!」
___目の前で、エリザベス様が頬を叩かれた。エリザベス様の頬が赤くなってる。………私に優しくしてくれたエリザベス様が、傷ついてる。
それを見たら、止まれなくて。
「っ、離して!」
「うおっ!」
私は腕を掴んでいる男をプールに落としてエリザベス様を掴む男の手を払った。そして、背後に隠す。
「お願いします!連れていかないでください!私達は___」
「いってえなこのクソ女ぁ!」
「ッ!」
「レイチェル様!」
男に、殴られた。痛い。口の中を切ったからか血の味がする。でも、殴るより、連れていかれるよりよっぽどマシだ。
「ッ、……お願いです……!私が、私が行くので、エリザベス様だけは………!」
「ほうぅ?いい度胸じゃねえか。お前が1人で俺たち相手にしてくれんのか?仕方ねえな、俺たちは優しいからお前だけで見逃して_____っぎゃあ!」
「!?」
急に、視界から男が消えた。代わりに___水浸しのアドラオテル様が、肩を揺らして立っていた。
「レイチェル、エリザベス……大丈夫か?」
「っ、アドラオテル、様………!」
エリザベス様がアドラオテル様に抱き着いた。またちくりと、胸が痛む。……私よりも、エリザベス様の怪我を見て欲しい。エリザベス様はお姫様なんだから。だから、___「レイチェル」……!
そこまで考えたところでぽん、と頭に手が乗った。大きな手、アドラオテル様の手だ。
「___大丈夫か?」
「大丈夫……で、す」
そこでぽろり、涙が零れた。怖かった、という言葉の代わりに流れるそれが溢れ出て、止められない。
そんな私を見ていたアドラオテル様はぽんぽん、と優しく叩いて、私達から離れて男達と向かい合った。
「___お前ら、わかっているよな?
レイチェルを泣かしたんだ、………覚悟は出来てるな?」
「ひっ、………がはぁっ!」
「に、逃げろぉ!!……っぐえ!」
男達が逃げ出す前に、アドラオテル様は攻撃をする。慣れた手つきで急所を攻撃し、投げ飛ばす。5分も立たない内に__男達は、夢の中に旅立ってしまっていた。
* * *
「本当にアドラオテルは凄いよなー」
男達を捕らえたアドラオテル様とレーゲン様、シャンクス様達と別行動の私達はケイタ様付き添いの元手当室に居た。ケイタ様の言葉に、思わず私も頷く。
「本当に………アドラオテル様はお強いです。……私がもっと強ければ、アドラオテル様の御手を煩わせることなんて無かったのに………」
「まあまあ、そんな落ち込むなよ、レイチェル。それより口の中の怪我、大丈夫か?切ったんだろ?」
「大したことありません。……身体は丈夫なのです」
「そりゃいいことだ。平民は体が強くてなんぼだもんな」
そう言ってカラカラと笑うケイタ様。優しさでまた涙が出そうになった。
「俺も好きな女守れるようになりてー。エリザベスがやられた時、俺動けなかったもん」
「え………ケイタ様は、エリザベス様がお好きなのですか?」
私がそう聞くと、ケイタは顔をかぁぁぁと赤らめた。これは、図星の奴だ………!
「ま、まあ、それは置いといて。俺、男磨くよ。女を守れなきゃな」
「………わ、私も……」
「お?レイチェルも女磨く感じか?好きな人でもいるの?」
「す、すすすす好きな人ではなく!私も腰巾着野郎に見えないレベルで!腰巾着に見えないオーラを纏いたいんです!」
「目標低いな!?」
「ほ、ほんと!それだけで!それだけで私は満足ぅぅぅぅ…………!」
「レイチェル!?」
言い訳してたら頭に一気に血が上って、すっかりキャパオーバーしていた私はその場に倒れた。




