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彼は人気者

 







 「よっ、と」




 「ふぎゃ!」



 「1本!」





 アドラオテル様は軽い調子と共に木刀を同じクラスの赤髪の短髪、シャンクス様の頭に落とした。私は歓声が上がっているのを隣のバレエスタジアムで聞いていた。隣に座っていた女子が言う。




 「アドラオテル様、また1本とったよ~」



 「凄いですね、流石でございます………」




 そう言っている貴族の女子の顔は真っ赤だ。で、多分私の顔は真っ青。あんなに注目されている人と二人きりとか無理。




 ………せめて、せめて休み時間とかに隙ができれば…………。




 そんなことを思いながら片足を持ち上げた。





 

 * * *





 「黒髪の忌み子が………」



 「やだ~……」




 「…………」




 いつもの陰口。どうやらこの世界で黒髪は相当珍しいらしく、毎日のように言われる。私は異世界人だし、仕方ないとはいえ傷つく。………ううん、そんなことより今は休み時間。できれば人目がつかない所で………「ごめんなさい、ちょっとよろしいですか?」




 ふと、可愛らしい声がした。

 見ると金髪のくるくるとした巻き髪、赤い瞳の美少女、エリザベス・ダリ・ジュエルズ・セイレーン様が侍女に沢山のお菓子を持たせてアドラオテル様に近づいていた。




 「昨日マフィンを焼いてみたのですが、少し作りすぎちゃって………よかったら食べてください」




 「おお~んまいじゃん。エリザベスって料理上手なんだな」



 「お菓子作りが趣味なんです。けれど、つい作りすぎちゃって………また貰ってくださると嬉しいです」




 マフィンを片手に口々にうまいうまい、と言っているクラス全員と、華やかに笑うエリザベス様。流石皇女…………お姫様オーラが眩しい……。




 ___一寸の隙も無し!



 私は目を瞑って絶望する。アドラオテル様とエリザベス様が並ぶとなんというか凄い絵になる!あそこだけ別次元!………あの空間は穢せない………。



 ………この休み時間は無理だな。次の時間の…………と、自分に言い聞かせるが。




 ◇


 「アドラオテル、見ろ、私の婚約者は美しいだろう?」



 「おーーー」




 「いいなぁぁぁぁ、俺も貴族だったらなぁぁぁぁ」


 ◇


 「アドラオテル、今週のドラゴン仮面もよかったぞ!熱くなった!」



 「だろだろ!俺頑張っちゃったよ!」




 ◇


 「あ~移動面倒なんだけど、ヨウちゃん、転移魔法「なりません」ちぇっ」



 「歩け歩け!アドラオテルめ!」






 その後も無情に時間だけが過ぎていった____。




 ………って!!!リア充は1人にならないの!?

 私は授業を受けながら頭を抱える。まさかここまでとは…………常時転校初日の転校生くらい周りに人がいる………。


 アドラオテル様が半年前編入してきてから常々、遠目からだけどアドラオテル様の周りを見て「明るいなあ」とは思ってたけど………。





『おはよう』




 先程、自分にかけられた挨拶を思い出して顔が熱くなる。



 ………誰にでも明るくて、………太陽みたい。格好よかったな………。



 ………ってだから!この思いにやましい気持ちはなく!純粋に感想としてだから!!!本来話しかけるのも烏滸がまし………あっ!そうだ!話しかけられないなら手紙にすればいいじゃない!?




 そう思い立った私は、授業時間を使って必死に文章を考えた。




 * * *



 ______



 アドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイス様。




 青葉若葉の好季節、アドラオテル様はなお一層ご活躍のことと推察いたします。

 

 今朝貴方様が目撃された痴態、何卒他言無用でお願いしたく筆を取らせて…………




 ____





 「うーん、物凄く畏まってしまった………ていうか綴り、あってるかな………」




 昼休み、下駄箱に向かいながら一人呟く。一年必死に語学を勉強してよかったと思う傍らこんな堅苦しい物で良かったのか不安になる。




 ううん、でもちゃんと分かってもらわないと………誰もいない下駄箱に入れとけば___「ここだよね、アドラオテル様の下駄箱」____ん?



 ふと、アドラオテル様の下駄箱付近から声が聞こえて足を止める。そこには___貴族の女学生達がいた。
















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