古傷が膿む
「あら、アド、ここで何していますの?」
「アドがここに来るなんて珍しいな」
そう言って2人はアドラオテル様に近づく。本当に驚いた、という顔をしていて。そんな2人にアドラオテル様は満面の笑みで言う。
「俺はレイチェルとデート中なんだ。レイチェルは花が好きだから」
「んなっ…………!」
デート、という言葉に顔が熱くなる。本当にデートみたいじゃん!は、恥ずかしい………主に気づかずにはしゃいでいた私が!
そんな私を他所に「まあ!」とセラフィール様は声を上げた。
「レイチェル様はお花が好きなのですか!?どのお花が好きですか?!」
「あ、えっと………わ、私は……このセアノサスが………」
「へえ、セアノサスを知ってる女の子とは初めて会ったな。本当に花が好きなんだね」
セオドア様はセアノサスを撫でながらふわり、と笑みを零す。尊いです………なんなのこの家族………拝める…………。
そんなことを思って拝む私の両手を、セラフィール様は躊躇なく両手で包んだ。
「よろしかったら今からわたくし達とお花のお世話を致しませんか!」
「え、あ、でも、私は……余所者ですし……」
「余所者なんかじゃないよ、君はアドの婚約者でしょう?一緒にやろう。アドもいいか?」
「うーん。俺はデートを楽しみたかったけど~、まあ、レイチェルが育てた花、俺も見たいし仕方ないから妥協してあげる」
「え、ええ!?で、でも___「ではやりましょう!レイチェル様!」…………う」
____こうして、私は花壇の手入れをした。家や学校でやっていたから、そう手間どることも無く、それどころかアドラオテル様以外と花の手入れをしたことがなかった私は結局楽しんで行っていた。
* * *
「あ~楽しかったぁ」
お風呂あがり、私はベッドに寝そべりながら寛いでいた。
………今日は本当に楽しかったな。セラフィール様もセオドア様もお優しくて、楽しい方だった。朝のビビりはなんだったのかまである。本当に「花好きに悪い人はいない!」って感じ。途中から怯えることなく話せたのもお二人の人柄のお陰だ。
でも、こうして話せたのも、素敵な庭園も見れたのも彼のおかげ。
「____アドラオテル様」
私はポツリ、彼の名前を口に出してみる。
本当に太陽みたいな人。ヘタレでビビりな私を引っ張ってくれる優しい方。さっきも一緒に夜ご飯を食べてくれた。『これからも一緒に食べるからな!』と言って部屋に戻っていった。
純粋に、嬉しかった。
………私は、家族以外の人とあまり話したことがないから、新鮮で、楽しくて、………ついつい甘えちゃう。
アドラオテル様とだったら本当に夫婦になっても_____
『ば、化け物!』
「_____」
古い記憶が現実に引き戻す。
………化け物………私は本当に、なんで忘れてしまうのだろう。私とアドラオテル様は仮初の婚約者。時間が経てばそれだって…………。
そう考えるだけで胸がちくり、傷んだ。
「…………寝よ」
私は目を閉じた。
* * *
おまけ - 龍神一族
「お母様!おじいさま!おばあさま!聞いてくださいまし!レイチェル様はとても博識なのです!一緒にお花の世話をしたんですよ!」
食事を終えたセラフィールはふんふん、鼻息を荒くしながら語る。それを聞いていたアルティアは小さく笑った。
「ふふ、セラったら興奮しちゃって。でもそうよねえ、セラは兄弟で1人だけ女の子だもんね」
「それだけじゃないです。レイチェルちゃんはとてもいい子です。優しくて、おもいやりの心が言葉の節々に見受けられました」
セオドアもにこにこしながらそう言う。しかし、それを聞いていたアミィールは眉を下げていた。
………セオがここまで言うのだから、とてもいい子なのでしょう。けれど、アドラオテルはまだ16歳。子供なのです。婚約など………なんて、わたくしだって16歳でセオに一目惚れをしたのだから言えないけれど。
………わたくしも、レイチェル様とお話する機会ができればいいのに…………食事中にお話しようとしましたが、アドラオテルが「今日からレイチェルとご飯を食べる!」と言って断られてしまいましたし……………どのタイミングで話せば………。
アミィールは1人、そう考えながらナイフとフォークを置いた。




