庭園デート!?
「…………落ち着いた?」
「………ご、ごめんなさい………」
ひとしきり泣いた後、アドラオテル様は静かにそう尋ねてきた。私は未だに流れようとする涙を拭いて言葉を紡ぐ。
「………お見苦しいところを………」
「見苦しくない。……それより、具合が悪い訳じゃなくてよかった。食えたじゃん、サンドウィッチ。
なんで朝食べなかったの?」
「そ、それは…………私、マナーが分からなくて………」
泣いた後だからか、口が軽くなる。
皇子様心配させてるなんて、私はなんて罪深いんだろう。
自己嫌悪に落ち込む私に、アドラオテル様は『そっか』と小さく言った。
「………じゃあ、夜からは俺と二人で食べよ」
「……え?」
思わず顔を上げる。アドラオテル様はポリポリと頬をかきながら、少し顔を赤らめて言う。
「俺も、その、いい歳して家族でご飯とか恥ずいし、……俺はマナーとか気にしないし、よくない?」
「で、でも……」
「でも、は聞かないぞ。命令!俺と一緒にこれからご飯、な!」
アドラオテル様はそう言ってニカ、と笑った。………やばい、また泣きそう。アドラオテル様が優しすぎる…………。
泣くまいと震える私の手を、アドラオテル様は握ってきた。
「!?あ、アドラオテル様___「それより!行くぞ!」きゃっ」
アドラオテル様は私を立たせてから、改めてお姫様だっこをした。頭は一気にパニック。顔も熱い。
そんなパニックな私を抱き締めたまま、窓を開けた。そして飛び降りる………って!ここ5階!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ…………って、え?」
死んだ!と思ったが、もちろんそんなことはなく。アドラオテル様はふよふよと浮いていて、私も浮いていて。よく分からないままアドラオテル様を見たら悪戯っぽく笑っていた。
「驚いた?」
「え、と、これは…………」
「浮遊魔法。流石の俺でもこの高さは死んじゃうかもしれないから。でも普通に出たらガロに見つかっちゃうだろ?」
そう言って地面に着地した。私は降ろされ、手を握られながら歩き出す。ドキドキと胸がうるさい。私はそれを誤魔化すために口を開く。
「あ、あの、どこへ………?」
「いい所、連れてってあげる。………きっとレイチェルは気に入るから」
「?」
そう言ってやっぱりアドラオテル様は楽しそうに笑った。
* * *
「わあっ…………!」
私の目の前には____沢山の花畑が広がっていた。薔薇ひとつでも赤や白、黄色、果てには紅銀に青の薔薇のツリーロードがある。勿論薔薇だけではなく、様々な花が植えられてて…………天国か?なんてありえない妄想までした。
「ははっ、天国じゃないよ。ここは庭園さ」
「庭園………って、これ全部庭ですか!?」
「そうそう。広いんだよね。向こうまで広がってる。………見たい?」
「はいっ!」
「ん、じゃあ行こっか」
そう言ってアドラオテル様は私の手を離すことなく歩き出す。デートに見えなくもなくて、いつもの私ならそれだけでドキドキしていただろうけど、それ以上に見たことの無い花、図鑑でしか知らないような花が敷き詰められてて、別の意味でドキドキした。
「カーネーションにガーベラ、ポピーにリコリスまである!凄い!」
「そうだろそうだろ。欲しい花、摘んでもいいぞ」
「だめだよ!お花は摘むんじゃなくて愛でるものだから!」
私はアドラオテル様から離れて様々な花を見る。綺麗な黄色のゼラニウムに目を奪われていると、後ろからアドラオテル様の声が聞こえた。
「ん?父ちゃんにセラじゃん」
「!」
私は慌てて立ち上がって振り返る。そこには___皇族とは思えない軽装をして、スコップを持っているセオドア様とセラフィール様がいた。




