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涙とサンドウィッチ






 「では、わたくしから。わたくしはアドラオテルの双子の姉、セラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスです。


 よろしくお願い致します」



 そう言ってセラフィール様は笑う。

 て、天使だ……………。それこそ少女漫画に出てきそうなゆるふわな紅銀の髪、黄金と緑の瞳。ていうか!アドラオテル様と似てない!



 そんな感動にも近い感情を抱いていると、アドラオテル様の隣に座っていた美人さんが口を開いた。



 「………僕はフィアラセル。フィアラセル・リヴ・レドルド・サクリファイス。


 よろしく、レイチェル」




 美人さんは美男子だった模様!紫銀の長髪、黄金がかった緑色の瞳が美しすぎる………何この一家!イケメンと美少女しかいない!息がしずらいぞ!……じゃなくて!私も挨拶しなくちゃ!




 「は、ははは初めまして!わ、私はトラファルド・T・エード・レイチェルと言います!な、何卒、何卒よろしくお願い致します………」





 また頭を下げた。顔が熱い。絶対私ここに居ちゃいけない気がする…………。

 そんなことを考える私に、優しい声が降り注ぐ。



 「ああ、いや、畏まらないで下さい。レイチェル様」



 「レイチェル様なんて!滅相もなく!」




 「ああ、そっか。君は異世界人だから敬称はあまり一般的じゃないんだね。じゃあレイチェルちゃんって呼ぼうかな。


 挨拶も終わったし、食べよう」


 「そうですね。レイチェル様、沢山食べていらして?」



 アミィール皇帝様の言葉に、全員がナイフとフォークを持った。私も釣られて同じようにするけど、マナーなんて分からないからあまり食べることは出来なかった。






 * * *






 「……………うう」





 私はぐったり、柔らかすぎるソファに座り込んでいた。………食事会が終わったあと、すぐに「花嫁修業」が始まって、私はマナーについてベリーベリーショートヘア、赤と金色の瞳のガロという綺麗な男の人に教えられた。優しく教えて貰っているけど、習慣が無さすぎて覚えるのに手間取っていた。



 お姫様の小説や漫画を沢山読んできたけど、世の中の「お姫様」と呼ばれる人達は小さな頃からずっとこれを学んできたと思うと尊敬の念を抱く。凄い。



 それに引替え私は一体16年間何をやってきたのか…………そう考えると、情けな___「レイチェル」……!?




 「あ、アドラオテル様!?」




 急に最近聞きなれた声がして、ソファから飛び起きる。見ると__アドラオテル様がお盆を持ってにっこり笑っていた………じゃなくて!



 「な、何故ここに!?」




 「何故って、ここ俺の家」



 「そ、そうではなく………!」




 「…………ん」



 アドラオテル様はこと、と机にお盆を置いた。サンドウィッチが2つと紅茶が乗っている。



 「これ…………」



 「………レイチェル、朝、ほとんどご飯食べてなかったろ。だから食べて」



 「わ、悪いですよ!だ、大丈夫____ッ」




 話途中でお腹がギュルルル、と鳴った。私は慌ててお腹を抑えて息を止める。しかしそれは無駄な抵抗だったらしく、アドラオテル様は目を見開いてからすぐに吹き出した。




 「ははっ、いいよ。食べて。ていうか、食べてくれないと困る。俺はサンドウィッチは嫌いだし、捨てるしかなくなるから」



 「う、………で、では…………」





 あぁぁぁぁぁぁぁ恥ずかしすぎる!食欲旺盛か!私!穴があったら入りたい………!

 そんなことを思いながら、おずおずとサンドウィッチを手に取り、出来るだけ小さく齧る。ハムにチーズ、レタス……どれも食べたことがあるはずなのに、お腹が減ってるからか、アドラオテル様が準備してくれたから申し訳なくてか、ポロポロと涙が出てきた。



 「………あ、え、な、なに、これ………ご、ごめんなさい!涙が、勝手に………」



 「………」



 ポロポロと流れる涙、不細工な私をアドラオテル様は引くことなく、背に手を置いてくれた。


 そうすると不思議でさ、涙がさらに溢れた。









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