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はじまりはゼラニウム

 






 ____少女漫画みたいな恋愛に憧れる。




 女の子ならみんなそう。白馬に乗った王子様の登場を待ち侘びてる。

 



 けど、そんな出会い創作の中でしかない。現実はもっとシビア。夢見る少女じゃいられないように出来ている。




 そう、思っていた_____。






 * * *






 「…………ん」




 目が覚めると、もうすっかり見慣れた天井が広がっていた。ピンク色の天井、ピンクに塗れた部屋。………私には、似合わない気がする。


 いつも通り、そんなことを思いながら起き上がって身支度を始めた。




 * * *







【今人気の少女漫画『運命はすぐそこに』の映画化が決定しました。主演は今人気の………】



 「おい、チェル」



 テレビを見ていたら、名前を呼ばれた。見ると__大おじいちゃんであるクラウドが新聞を片手に私を見ていた。私はパンを飲み込んで返事をする。



 「なに、大おじいちゃん」



 「学校生活は楽しいか?」



 「えっ、と………ぼちぼちかな?」



 私___トラファルド・T・エード・レイチェルは目線を逸らし、近くのサラダをつつく。クラウドは更に問うた。



 「チェル、友達は出来たか?」



 「う、うん………」


 ___未だに女子グループに馴染めてません、大おじいちゃん。




 「学生の分際で彼氏はまだ早いからな?」



 「う、うーん………」




 ____一生出来なかったらごめんね、大おじいちゃん。



 私は心の中で合いの手をいれる。

 だって言えない、未だに1人も友達が居ないなんて………。




 ____私はつい最近まで、箱入り娘だった。家族以外と話したことがなく、学校も行ってなかった。ずっとそのままでもよかったんだけど、大おばあちゃんが「辺境の次元に学校があるんだってー!引っ込み思案のチェルちゃんでも通えるよー!」なんて言い始めて、無理やり連れてこられた。無茶苦茶だと思うでしょ?私は思う。無茶苦茶である。



 でも、その無茶苦茶を可能にしちゃうのがこの夫婦で、一年前からこの辺境の次元・ユートピアに移住した。次元っていうのは、わかりやすく言うと平行世界。沢山の平行世界があって、時差はあるけど行き来が可能な世界のこと。それはともかく、14歳だった私は学園に連れていかれ、無理くり編入確定でぼっちが生まれた、ということだ。






 なんて、誰に説明してるかわからないようなことを取り留めもなく考えてからがたり、と立ち上がり食べ終えた皿を持った。



 「わ、私、そろそろ学校行くね………」



 「えー?早くなーい?」



 「うん、ちょっと、やることがあるから…………、おおおばあちゃん!ご馳走様!」




 それだけ言ってそそくさとその場を後にした。




 * * *









 「……………………」





 学校に着いた私はドキドキしながら自分の教室の扉を開いた。そして、中に誰もいないことを確認して、ほ、と胸を撫で下ろす。



 よし、誰もいない………今のうちに、花を替えよう…………。



 私は黒板近くに置いてある花瓶を手に取った。



 ………本当はこんなに早く学校に行く必要は無い。けど、普通に行って悪目立ちはしたくないのだ。


 ……陰キャ女が花を弄ってるだけで色々言われちゃう……と漫画や小説には書いてあった。現に美化委員に挙手しただけで変な目で見られたし。またあんな思いはしたくない。


 そんなことを考えていたらこの時間で落ち着いてしまったのだ。




 「今日の花はゼラニウム………確か花言葉は『予期せぬ出会い』…………か」



 黄色のゼラニウムを見ながら花言葉を思い出し、呟く。漫画とかならこういう時に運命の人が現れて、出会い………ってなるけれど、現実だとそうはいかない。そんなのわかり切ってるのに、夢を見てしまうのは乙女の性だ。仕方ない。








 「………えっと、古い花はどうしようかな…………あ、そうだ!」








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