9 終局
カモンッ!主人公!
~ARS頭領視点~
少々てこずったものの、邪魔な護衛をすべて始末し、残るは本命だけとなった。
これほど抵抗されたのは、初期に初めて護衛付きの企業貨物船をやった時以来になる。
「ハンター1からハンター4は、帰還。
増援に備えて、待機。
ハンガー、補給急げ。
残る、ハンター5、7、8は獲物を停止させろ。
エンジンにミサイルをぶち込んでやれ。
侵入部隊は準備しろ。
最後にヘマをするなよ!」
比較的新しい部下たちに釘をさす。
獲物の抵抗力を奪い、足止め。
からの、乗り込んでクルーの殲滅。
船ごと奪うのが、俺たちのやり方だ。
バルカンはまだ活きている。
どんな抵抗をするのやら、何てな。
~ビルフィッシュ ブリッジ フリッター視点~
「敵1番から4番、撤退。
残り全機、本艦右舷側に集合してます。」
やはり、そう来たか。
戦闘において、相手の弱点を突く事は基本中の基本と言える。
それゆえ、軍では情報の管理が厳重に行われている。
思考が逸れた。
…。
この艦は現状、被弾等により射線が通りにくい箇所が出来てしまっている。
「全砲門を右舷後方に向けろ!
射ち方、狙いはいい!
弾幕を張れ!
近付けさせるな!
操舵手、面舵を10取れ!
射線を確保するぞ!」
相手の狙いははっきりした。
ならば、此方も対策をとることができる。
火力を1箇所に集中させて、防衛火力を高める。
敵船との相対距離が狭まる。
「敵機、来ます!」
来るなら来い!
今度は、射ち墜としてやる!
「……。
敵機、散開!
未だ接近中!」
的を分散するか。
普段なら有効だが、今、この瞬間は無駄な行動だ。
「…………。
…!
敵5番、敵7番が合流。
この動きは…!」
二機を囮に不意を突く気か?
二度目は無いことくらい理解している筈だ。
何故?
「っ!
防衛線、突破されました!
敵ミサイルの射程内です!」
しまった!
気を取られてしまった!
「…。
敵ミサイル接近!」
「迎撃せよ!
最優先で射ち落とせ!」
「……っ!
迎撃、間に合いません!
直撃します!」
「衝撃に備えろ!」
ゴッ!……ボボンッ!!
衝撃の後、爆発音が響いた。
「くっ…!
被害報告!」
今の爆発はただ事では無い。
「第2メインエンジン大破!
火災が発生!
該当区画、隔壁、自動閉鎖します!
加えて、第4メインエンジンに損傷発生!
出力2割しか出ません!
速力55%に低下します。」
「消火急げ!
第4エンジン、持ちこたえさせろ!」
不味い。
このままでは、敵船に追い付かれてしまう。
「各員に通達!
艦内戦闘準備!
バリケードを作れ!」
そう、指示を出す。
艦内戦闘になれば、犠牲は今の比どころでは無くなる。
そうなって仕舞えば、戦闘に勝利したとて、勝ったとは言え無い。
救援の到着予定時刻まで後、数分。
策は尽きた…。
『ブリッジ、聞こえるにゃ?』
!?
~ビルフィッシュ艦内 十数分前~
…タタタタタタタタタタ……
カンッ…カカッ………
タタタタタタ…………
戦闘状態に入って十数分。
艦内には、バルカンが弾を吐き出す音が微かに、しかし、確かに響き続けている。
たまに、聞こえるそれと異なる音は、この艦が敵の攻撃に晒されている事を示しているのだろう。
(護衛は何してるにゃ?
この艦、大丈夫かにゃ?)
もちろん、戦闘において、艦が被弾しない事など滅多に無いことは、理解している。
ただ、こうして、戦闘の緊張感に晒されていると、そう思わずにはいられない。
(タレットも私が撃つより、機械の方が何倍も効果的
にゃ。)
「自身にも何か出来ないか?」と考え、戦闘状態突入後、すぐさま、近場の砲台に向かったが、扉の表示は、
[AUTO]
つまり、ピコの出る幕はなかった。
もっとも、ピコの射撃シミュレーターの結果は、驚異の、
[命中率 12%]
であったが…。
「あっ!
ピコちゃん、ここに居たんだ。
宙間活動服って、結構着るの大変だにゃ。
それに、少し動きにくいかもにゃ…。」
ミーコの言う通り、宙間活動服は、身体保護の特殊素材が使用され、伸縮性は皆無であり、その為、全体的に丈が余り気味なのである。
「ピコちゃんは…、
オペレータースーツ何だにゃ。
見ただけでこれより良さげだものにゃ。」
ミーコに少し恨めし気な目を向けられる。
着用時の締め付けに文句はあっても、オペ服は宙動服に比べ動き易く、酸素供給装置などの付属機械も小型の物になっている為、軽いのだ!
「そんな怖い顔しないでにゃ。
可愛い顔が台無しになっちゃうにゃ。」
普段優しい人が、怒ると怖いという事は常識である。
「…………。
もうっ。
そんな風に言われたら怒るのもばかみたいにゃ。」
機嫌は直ったようで、ひっそり胸を撫で下ろす。
もちろん、その怒りが理不尽であるとは思っても言わない。
「…艦、大丈夫だよにゃ?」
「よくわからないけど、大じy…」
ゴウンッ!
「にゃっ!」
「きゃっ!」
答えようとしたところで、艦に衝撃がはしる。
「な、何があったにゃ?!」
誰となく聞いてしまう。
「わからないにゃ!
でも、危険な状況なのは確かにゃ…。」
動揺が治まる暇も無く、中央ブロックへの退避を呼び掛ける艦内放送が繰り返された。
読んでいただきありがとうございます
何と!6話目から本話まで、
『作品内世界では30分経ってません』
気長にお付き合い下さい