7 交戦!スカベンジャー
~ビルフィッシュ ブリッジ フリッター視点~
「っ!
全砲台、撃ち方始めろ!
護衛各機は生存を優先!
逐次状況を報告!
通信官は付近の友軍に緊急救援要請!
乗り組員は宙間活動服を着用し、衝撃に備えろ!」
初回戦闘交差で護衛チームのリーダーが撃墜され、判断を誤った後悔をしつつ、次の手を打つ。
最悪の予想が現実のものとなり、現有戦力での撃退から、専制守備へと移る。
抵抗し、救援到着までの時間を稼ぐ。
「要請に応答有り。」
応答の内容によっては、投降も視野に入ってくる。
「第108からは、カタパルト損傷により救援機の出撃
不可。
第七基地からは、高速機6機が緊急発進。
到着予定は30分との事。」
「何だと!?
余裕を持って見積もってもそんなに掛からん
筈だ!」
投降の選択肢が無くなった事に安堵する事なく、声を荒げる。
高速機であれば、基地からこの地点まで20掛からず、飛んで来られる。
そう、本来ならば。
「くそっ!
基地の奴らめ!
弛んでいる!」
この10分の差は、現時点において致命的である。
何とか、どうにかする方法を探るが、手札はすでに出しきっている。
「出力全開!
108と合流を目指す!
隊にも伝えろ!」
それくらいしか、取れる行動は無かった。
~戦闘開始5分経過時点~
『こちらガード2。
敵2に追われている!』
『ガード3。
同じくだっ!』
「艦長!
速度出せません!
敵機に纏わり付かれてます!」
護衛機はどちらも2機の敵に追われ、被弾はしていないものの、反撃に移ることも出来ないでいる。
艦は被弾しつつも、ダメージは無い。
しかし、攻撃が激しく、速度が上がり切らない。
「僅かでも近付いている!
何としても現状を維持しろ!」
『「了解!」』
~戦闘開始10分経過~
『っ!
こちら、ガード2。
状況、変化無し!』
『………。
ガード3、クソッ!
被弾しそうだ!』
「バルカン、偏差演算間に合ってません!
マニュアルでの射撃を提案します!」
護衛チームに疲れが出始める。
バルカンも標的が激しく入れ替わるため後手にまわり続けている。
「手の空いている者は撃ち方に入れ!
偏るなよ!
護衛機は本艦を盾に、インターバルを作れ!」
提案を受け入れ、人員をタレットに割く。
護衛チームは、もはや護衛に成らず、墜とされないよう立ち回らせる。
「敵船より通信!
開きます!」
やはり、敵は救援までの時間を知っていたとみえる。
となると、用件は、
『……。
あー、あー。
聞こえてるか?
そろそろ疲れて来たお前らに素晴らしい提案だ。
さっさと投降して艦と積み荷を明け渡せ。
そしたら命は助けてやる。
今なら、救命挺くらいはオマケしてやるかもな』
聞こえてきたのは、思ったより若い声。
そして、内容は降伏勧告。
予想通りすぎる程の内容だ。
『ガード2、投降を、提案、する。』
内線が入り、頭を抱える。
この回答によっては、より酷い状況に陥る可能性が高い。
そして、予想通りすぎる勧告には、予想通りの回答をする。
「断固として拒否する。
貴様らのような賊に、明け渡すものなど、一欠片
足りとも、有りはしないっ!!」
『おいっ!
艦長!
何ぬかしてる!』
『死ぬのは勝手だけど、巻き込まないで欲しい!』
護衛チームから文句が飛んで来る。
何とでも言え。
この判断が最善だと断言する。
『…………………。
はははははははっ!
……流石は老兵。
軍人の誇りって奴かい。
いいぜ。
なら、お望み通り、皆殺しにしてやる!
せいぜい、後悔して死ぬといい。
お前の誇りが、死んでいく奴らの価値と見合うとい
いな!
あはははは!
「ブツンッ!」』
「……。
通信、切断されました。」
これでいい。
さて、足掻くとしよう。
『おいおいおいおい。
どーすんだ!
オレたちゃ、もう限界だぞ!』
『おれっちだけでも投降できるかなぁ…。』
護衛、…もういいか。
随伴2名が何か喚いているが、無視を決め込む。
「…。」
「…。」
「…。」
「総員に告ぐ!」
「たった今、停戦の交渉は決裂した!
此より、より、激しい攻撃に晒されるだろう!
しかし!
我が身、可愛さに降伏したとして!
奴らがそれで満足するのか!?
否!
奴らのような輩は増長し、奴らの餌食にされる市民
が増えるだろう!
こんな事を、軍人いや一個人として!
断じて許す訳にはいかない!
だからと言って、死ねとも言わん!
足掻け!
力の限りが来ても、生きている限り!
我々は生きている限り、足掻き、生きて逝く!
絶望に足掻く事を止めるな!
我々は孤独ではない!
戦友を励まし、励まされ!
進め、進むのだ!
共に先を掴み獲りにいくぞ!」
『『オオオォォ-ッ!!!』』
読んでいただきありがとうございます