5 刺激が欲しいって?
今回、主人公ちょい役です
~シールド隊 ガーディアン1視点~
暇だ。
宇宙戦闘機に乗りはじめて5年は経つ。
一年目は、ケートス隊をはじめとしたエースに憧れ、前線を希望した。
しかし、現実には華々しいものはなく、最初の出撃では所属していた中隊12名のうち5名が戦死。
戦死者5名のうち4名がパイロット歴3年未満だった。
部隊は再編され、この時に死の恐怖から逃げるように警備部隊への異動を希望。
以来、4年間この、長距離巡航機の「グラントリー」が相棒だ。
『リーダー、ちょーヒマっすね。』
僚機から無線が入る。
『ああ、何時間も飛んで肩が凝っちまう。』
やはり、2人も俺と同じように感じていたようだ。
「この任務が終わったら美人2人と食事会だ。
問題行動はするなよ」
軽すぎる2と、粗暴な3だ。
暇をもて余して、突飛な行動を取られても困るので一応の釘を刺す。
『ついでに、あの娘たちも頂いちゃったり?』
『オレはナースの方がいいナァ。』
「確実なのはどちらも良い雌だって事だよ。」
『違いない!』
『違ぇ無ぇ!』
『『ハハハハハ!!』』
~ビルフィッシュ ブリッジ フリッター視点~
「艦長、五時間後に合流ポイント到達予定です。」
航行士から報告を受ける。
基地から出航して五時間、半分の地点に到達した。
要請から半日、宙域の端からの依頼だ。
まだ合流には遠い。
とはいえ、向こうも低速ながら、自力航行で此方へと向かっている為、速やかな部類になる。
場合によっては、完全に座礁してしまい、補修パーツの問題から、合流に数日を要した事もあった。
「うむ。
後、半行程だ。
気を引き締め直すように。」
『了解!』
こういった、変化の無い状態が続くと思わぬ事故につながる。
クルー達に注意を促す。
『ピッ!』
「ん?
艦長!」
「どうした?」
レーダー観測手に呼ばれる。
「レーダーに感有り。
非漂流物であることを確認。
中型艦と思われます。」
軍が主とはいえ、民間船の往来は其なりにある。
ましてや、宙域の境界付近、企業の開発船か移民団であろう。
「第二種接近警戒!
レーダー手は軌道に注意!
通信官は対象船に呼び掛けを行え!
それと、シールド隊にも情報を共有させろ!
操舵手は回避軌道を取れ!」
『了解!』
~ビルフィッシュ艦内 休憩室~
「う~…にゃああぁあ~…。
ふうっ…、っとにゃ!」
仰向けのまま体を伸ばし、息を吐き、頭を前に振った反動で一気に起き上がる。
「うむ。素晴らしい!10点!」とはピコ審査員。
自己評価は甘あまである。
「何て言うのか分からないけど、10点にゃ♪」
何ということでしょう!
ピコ以外にも甘あま審査員がいた!
「にゃ、
見てたにゃ?」
さっきまで、ここにはピコだけだったはずである。
「うん。
ばっちりね♪」
と、サムズアップするミーコ。
「にゃぁ…。
と、ところで、今まで何してたにゃ?」
(あ、誤魔化した。
でも、そんな所も可愛い♪)
質問したのにあたたかい目を向けられる。
「この1ヶ月のバイタルデータの確認。
意外と時間がかかるからこういう時にやらない
と。」
ピコがごろ寝していた時、ミーコはお仕事をしていた!
ピコ に 精神的 に 10 のダメージ!!
ピコ は 瀕死状態 だ。
「う”に”ゃっ!
………。
お疲れ様ですにゃ…。」
うつ伏せに倒れ込み、そう、言葉をしぼり出す。
「にゃふふっ♪
ピコちゃん面白いにゃ。」
ミーコは本当に楽しそうに、笑っている。
「にゃ、にゃはっ…。
にゃははぁ~…。」
もう笑うしかないピコだった。
~ビルフィッシュ ブリッジ フリッター視点~
「~~~~~」
「ーーーーーーーー」
「ーーーーーーーーーーーー」
にわかに、ざわつくブリッジ。
何度呼び掛けても対象船からの応答はなく、しかし、依然として当艦に接近している。
しかも、こちらが回避軌道を取っているにも関わらず、徐々に正面へと合わせてくる。
ここまで来ると、対象船は不審船と判断し第一種警戒態勢を取る。
「解析官。
不審船の映像はまだ出ないのか?」
不審船の外観から武装の有無等、確認せねばならないことが幾らでもある。
最も、高度に隠蔽されている可能性もあるが。
その場合、事前に確認できた所でどうしようもなくなってしまうのだが…。
「…………………。
映像出ます!」
メインスクリーンに写し出された映像には赤い船体の
中型輸送船のようなものが捉えられていた。
なぜ、「輸送船のようなもの」なのかと言えば、
「不審船、船体に砲塔らしきものを複数確認。
武装船です!」
「アラートを鳴らせ!
射撃手、オートバルカンを起動!
通信官は護衛機にレーダー情報をリンクさせろ!
第二戦闘態勢だ!!」
~???~
「頭、感づかれたようですぜ。
バルカンを起動した。」
「護衛が三に、自衛用のバルカン。
やれない事も無い。
もう少し近い方が楽になったが、今更遅い。
始めろ。」
「猟犬は獲物を追いたてろ!
手足に噛みついて引き摺って来い!」
彼らの名は「アサシンレッドスパイダー」。
腕に揃いの蜘蛛の入れ墨をした、ならず者達である。
読んでいただきありがとうございます