2 士官学校卒業
「~~~~で、ー-ーーして、~~~~でありーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…」
どうも、本日は士官学校から卒業式の様子をお送りしています。
ただ今本校名物、「校長のありがたいお話耐久訓練」が行われています。
この訓練は、上官についてただ会議室の隅でブリーフィングを聞いているときに居眠りしないようにする訓練です。
って、限定的過ぎない?
そもそもうちら新兵よ?
作戦とか部隊長なんかにさらっと説明されるだけの立場よ?
こんな30分以上も中身のない話聞くことないって!
周りもなんか「はよ終われ」みたいな雰囲気になってんじゃん!
あ、ボブ居眠りしてる。
目は開いてるけどありゃ意識が一足先に宇宙に行ってるね。
「~~~~~~~~~~~~…」
まだまだ話しは続きそうだ。
配属先が決まってからを思い出す。
~一週間前~
「にゃふ~…。
良く寝たにゃ。」
昨日は寮に帰った後、夕食以外はほとんどベッドの上で過ごした。
あんな風に何もせず、唯々ゴロゴロするのは久しぶりであった。
「う~む…。
でも、少し寝過ぎたかにゃ?」
十分寝たはずなのに、夜衛訓練明けのように思考が纏まらない。
『くるるる~…』
10分程そのままでいると、こんな音が聞こえる。
「……。
とりあえず、朝ごはん食べるにゃ…。」
腹の虫に催促され、運動服に着替え、食堂へ向かう。
「良いにおいにゃ。
今日のメニューは何かにゃ?」
食堂に入ると、様々な料理のにおいが混ざりあったなんとも言えない、否、「食堂のにおい」がその場を満たしていた。
「おや、ピコじゃないかい。
今日は随分と遅かったねぇ。」
食堂のおばちゃんに返事をしつつ、食事を受け取る。
「おはようにゃ。
もう朝ランニングも無いからゆっくりできる
にゃ♪」
そう!あの、日も昇らないうちから何kmも走る二重、いや、三重苦の朝ランはもうしなくても良いのだ!
もっとも、ピコは半年程で慣れてしまったが。
食器を返却し、食堂を後にする。今日から卒業式までは準備期間になる。
卒業生はこの期間に、寮の私物の片付け、実家へ一時帰宅、配属先で使用する物の購入等を行うのである。
「うにゃぁ~。
私物が多いにゃ~。
片付け大変にゃ~。」
そうぼやきつつ、段ボールに物を放り込んでいく。
必要最低限のものに限っても三年も過ごしていればそれなりの私物の量になる。
すべての私物を片付け終わったのは夕方になってからであった。
「後は、明日実家にこれを発送して終了にゃ~。
それにしても、この部屋こんな広かったにゃ?」
私物の片付いた部屋はベッドといくつかの段ボール以外物が無く、がらんとしている。
そんな部屋を眺めていると、不思議と三年間の記憶がよみがえってくるような気がする。
「そうにゃ!手紙書くにゃ。」
手紙を送る相手は両親とミーコだ。
ミーコ、フルネームはミーコ・マスハッター。
明るい茶と白の虎柄のグリーンの瞳が優しげな雌ケットシーだ。
ここで出会い、少ない雌同士ということもあり、意気投合した。
残念ながら、3ヶ月で軍病院へと転向していったがちょくちょく手紙を送りあっていた。
「何を書こうかにゃ?」
とりあえず、挨拶と近況、向こうの近況伺いあたりだろうか?
近況は卒業したことと、配属先あたりが良いだろう。
「っと、そういえばまだ読んでなかったにゃ。」
封筒から配属先の詳細が書かれた書類を取り出し読む。
~読み込み中…~
はい。読み終わりましたっと。
長々と書かれた文章を要約しますと、
第七宙域調査・開発基地所属
第十四臨時物資輸送・補給船隊
での、後方支援任務にあたることになりました。
補給船隊には主に、
・基地間の物資輸送
・大型船による基地⇔艦隊の定期補給
・高速船による基地⇔艦隊の臨時補給
の三種の形態があって、この内の3つ目の形態の部隊になる。
「第七宙域と言えば、ここ十数年で開発が進められて
いる田舎宙域にゃ。
とすると、臨補はあまり出番無いにゃ♪」
基本、基地詰めの田舎でスローライフ。
実に良い!
そんな都合の良い願望を手紙に書き連ね、ピコは眠りについた。
………………。
…………。
…。
「諸君らの健闘を祈る!キャトラスに平和と繁栄
を!」
おっと、校長の話がようやく終わった。
後は訓示を斉唱して閉式だ。
~訓示斉唱中~
「卒業生は門前に集まれ~。
写真とるぞ~。」
写真が趣味の教官が卒業生を集めている。
「よしっ!集まったな。
それじゃ、とるぞ~。
3、2、1、」
『カシャッ』
配られた写真には59人の同期たちと数人の教官たちが笑顔で写っていた。
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