15 きっかけは
日常回は設定が出しやすい
リハビリを開始してから、二週間が経つ。
3ヶ月の眠りから目を覚まして、1ヶ月と少し。
軽い運動を行い体力を戻していた。
「ピコちゃん。
今日はここまでにゃ。」
おっと、ドクターストップがかかった。
今日もいい汗をかいた。
「経過は非常に良好。
っとにゃ。
ピコちゃん。
そろそろ、退院できそうにゃ。」
ミーコがカルテに記入して、言う。
「それじゃ、部屋に戻るにゃ。」
ミーコが左腕を取り、自分の右腕と組んでくる。
ムニュン
柔らかい、程よいサイズの塊に腕が当たる。
「…///。
にゃあ…。
腕を組む必要あるかにゃ?」
気恥ずかしくなり、ミーコに聞く。
「当たり前にゃ。
ピコちゃんは一応まだ怪我人なんだからにゃ。」
キッパリ言い切るミーコ。
(絶対違うにゃ…。)
ピコも心の中で言い切る。
(でも、悪い気はしないにゃ。)
むしろ、少し嬉しいくらいだった。
………………………。
………………。
………。
病室に戻ると、(既に一般病棟に移っている)ベッドの横の棚、メールボックスに封筒が入れてあった。
送り主は、軍の人事管理部。
「何て書いてあるにゃ?
私も見ていいやつにゃ?」
ミーコが手紙を覗き込み、問う。
「ちょっと待ってにゃ。
………………。
………。
大丈夫にゃ。」
軽く読み確認して、ミーコにも見せる。
「………………………。
………………。
…。
それで…。
どうするつもりにゃ?」
ミーコが二度問う。
手紙の内容はこうだ。
・今回の負傷をうけ、軍を退役するか、否か。
・退役する場合、現在の階級に応じた軍人年金が
支給されること。
・続役の場合、二階級特進すること。又、異動と
なること。
・これらの返答を一週間以内に行うこと。
が、事務的に書かれていた。
「う~~~…。」
正直な話、士官学校を卒業した時点で、自身の(?)目的は達成されている。
四年前の、進路に悩んでいた時期の事を思い出す。
~四年前 フローレンス家~
「うにゃ~…。
そろそろ、義務教育も終わりにゃ。
進路どうしようかにゃ?」
担任に配られた用紙を見て、悩む。
好きなことは寝ること。
興味が向くことも、長続きはしない。
参考になることなど、無かった。
「母さんたちに聞いてみるかにゃ?」
よほど変なもので無ければ、そうした方がいいだろう。
この時はそう軽く考えることしか出来なかった。
………………………………。
………………………。
………………。
「それなら、士官学校に行ってみるにゃ?」
白母さんが、ついでの用事を伝えるような軽さで、予想外なことを提案する。
「ど、どうしてそうなるにゃ!?」
「白、それじゃ簡潔過ぎるわ。
ピーちゃんも混乱してるわ。」
と、黒ママ。
「それじゃあ、話が長くなるにゃ?
…。
ピコが産まれてからすぐの話にゃ。」
確かに、そりゃ長くなる。
「産まれた次の日には目が開いて、あたりをよく
見回していたにゃ。」
それがどうかしたのか。
首をかしげる。
「転生者の事は知っているわね?」
黒ママが口を挟む。
勿論だ。
キャトラスを統一した、初代議会代表がそうだと言う説は有名だ。
それに、キャトラスの発明家や、軍の名家の当主にもいたらしい。
「現代にも転生者を自称する者がいて、優れた能力
を発揮しているわ。」
黒ママ、自然に自分の思考に続け無いで欲しい。
「それでにゃ。
お医者さまに言われたにゃ。
「転生者は総じて幼い頃の発育が早い」
って。」
「でも、わたしは特に優れた能力とかはないにゃ?」
暗に、関係ないのでは?
と、問う。
「それがね、転生者の能力ってはっきりしないもの
もあるらしいわ。
だから、転生を自称していなくても、潜在的な転
生者が多くいるとも言われているわね。」
なるほど。
それで、なぜ軍に?
「戦いはいやにゃ。」
「勿論、母さんたちもピコに戦えって言うつもり
は無いにゃ。」
「そうね。
でも、いつか発現するかもしれない力で、大切
な相手を傷つけたりしないように、力の使い方
を学んでおけば良いんじゃ無い?」
「それに、このご時世にゃ。
自分を守る手段は無いに越した事はないにゃ。」
なるほど。
そういう考えもありか…。
「士官学校を卒業したら、田舎の後方を希望して
スローライフ?でも、満喫したらいいにゃ。」
転生者は現役引退後、そう言って、のんびり隠居生活を送る者が多数らしい。
実に、魅力的だ。
「わかったにゃ!
士官学校に行って、目指せ!スローライフ!
にゃ!」
~現在~
当時、考えていた通り、辺境宙域である第七宙域の後方配属になったが、こうして3ヶ月も眠る羽目になった。
(よくよく考えれば、予定通りにゃ?)
いや違う。
自身が求めた「のんびり」では無い。
(それに…。)
「?」
ミーコをちらりと見る。
仲間も沢山できた。
「決めたにゃ!」
~一週間後~
辞令
( 要約 )
以下の者は、○○月△△日□□:□□に、
第四宙域方面宇宙軍本部 人事管理部に
出頭。
その後、異動先詳細の説明を受けるべし。
氏名 ピコ・フローレンス
階級 曹長
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