番外 徴用兵士
書いてて
「あれ?これ本編にならなくね?」
ってなったので。
~ドギヘルス軍徴用兵 タロ視点~
ダダダダッ、ダダダダッ
ドンッ…、ドンッ
防衛対象を喪失した「偉大なる栄光」防衛隊だったが、今尚各自の武器の引き金を引いている。
タタタッ!
寄り集まる防衛隊のとある機体に、キャトラス軍機のパルス弾が放たれた。
『しまっ…!』
ボンッ
フウレン隊長の咄嗟の呼び掛けで集合した残存防衛隊であったが、基地が制圧されてしまった今、撤退する場所は無い。
弾薬は残り少なくなっていき、仲間も一機、また一機と散って逝く。
『……うわあぁっ!』
ゴォッ
『おいっ、何処に行く!?』
戦闘の圧力に堪えかねたパイロットの機体が、残存した防衛隊の集団から飛び出す。
タタタッ!
タタタッ!
タタタッ!
フウレン隊長と協力して大隊規模の指揮をする正規パイロットが気付くが早いか。
ボッ…
しかし返答は得られぬまま。
(恐らく)逃亡を図った機体は、三方向からのパルス弾を浴びて宇宙の塵となった。
『迂闊に離れるな!
死にたくないならな!』
集合を呼び掛けた時と同様に、フウレン隊長が檄を飛ばす。
この期に及んで死にたいと思う者は、そもそも集合してはいない。
以降逃走を図る者は出ないだろうが、だからといって結果の先延ばしにしかならない。
しかし隊長の態度は生存のあてがあるようであり、絶望的な状況で一縷の望みを掛けるに価するものであった。
…………………………。
………………。
……。
『隊長、弾がっ!』
『味方がいなくなったぞ!?』
気持ちがどうであれ、現実は残酷だった。
あれから暫く抵抗を続けていたが、単独や部隊単位で抵抗していた味方は殲滅され、この集団も二個中隊分程に減っている。
そして残存しているだけの機体もあり、実際反撃を行っているのは十数機になるだろうか。
『ポンッ』
そんな状況に似合わない軽快な音と伴に、座標が示されただけの暗号通信画面が開かれた。
『うわっ、邪魔だ!?』
『この識別記号は何処だ?』
徴用組が困惑するのも理解できる。
送り主の識別記号は、詰め込みで覚えさせられた正規軍の識別記号ではなかった。
ならばキャトラス軍の罠かというと、こんな不審な内容にはならないだろう。
(…、これは!?)
思い当たったのは貴族の私兵団。
そうすると可能性が最も高いのは…。
『おい、正規組は何処行った!?』
『あいつら、俺たちを囮にするつもりか!?』
徴用兵が思い当たるなら、正規兵ははっきりとわかったのだろう。
援軍又は救援だと理解した正規兵機の一部は、未だに困惑する徴用兵機とそれを指揮する正規兵機を置き去りに、指定された座標へと我先にと行く。
『こんなトコで死んでられっかよ!』
『悪いな、精々足掻いてくれよ。』
『この裏切り者!』
『俺たちも行かないとっ…!?』
正規兵らの吐いた捨て台詞に、囮とされた徴用兵は罵声を上げたり正規兵に続こうとする。
『待てっ、まだだ!』
しかしフウレン隊長は制止した。
「なん…」
タタタタタッ!
ダダダダダダッ!
タタタタタッ!
『うわあっ!』
『何で撃つんだ!?』
『待て、俺たちは味方だぞ!?』
ボボボッ…
その光景の衝撃に、「何で?」と言う疑問は吹き飛ばされた。
『こちらはシバーズ領、民間武装平和維持隊所属艦
「ライフセーバー」だ。
戦闘に巻き込まれた“民間機”の救出に来た。』
そう呼び掛ける武装輸送艦。
民間所属と言うだけでも衝撃であったが、驚くべきは3機の護衛機についてだ。
それらは正規軍でも採用しているドギヘルス製ポットであったが、その内2機の武装はキャトラス軍機の標準装備であるパルスガンであったのだ。
そしてそれが鹵獲品でないことは、規格がポットに合っていることから明らかであった。
つまり少なくとも、この組織とキャトラスは繋がっている。
現にキャトラス軍機は、戦闘領域に乱入した艦に攻撃を行っていない。
そして更に驚くことが。
『ピースキーパー所属記号「見る者1218、民間武
装作業機16機を保護した。」
16機。
フウレン隊長と残っていた正規兵機を除いた、防衛隊残存機の数だ。
『……確認した。
民間作業機16を収容する、誘導されたし。』
停戦命令から一転して発生した戦闘。
生存が不可能とされた状況は、これまたあっさりと覆された。
ここでキャトラス軍機に仕掛ける馬鹿は居らず、フウレン隊長らの誘導に従い粛々と収容が進む。
『…なぁタロ、俺ついて行けねぇよ。』
ジロのぼやきに全面的に同意だ。
『僕もだよ。
……でもやっと帰れるよ。』
経緯がどうであれ、生きて帰れる。
今は、それだけで良かった。
『危ねえ、タロッ!』
リキの大声に咄嗟に回避行動を取れば、
タタンッ
いつの間にか至近に来ていたキャトラス軍機がパルスガンを放った。
ピタリ
生き残れるとなって気が抜けてしまっていた。
リキのおかげで初撃は回避できたものの、銃口は未だこちらを捉えていた。
(避けられない!?)
次の瞬間、銀が瞬いた。
作者的に閑話でもないので…。
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