14 準備
閑話っぽい?
【今月のトピック】
《 横領疑惑の小将、憲兵隊に拘束される! 》
本誌前月号で挙げた、キャトラス宇宙軍兵器
開発部戦闘機類試作課最高責任者のゲーモン・
イカーワ小将が前月○○日の未明、憲兵隊に拘
束されていた事が判明した。
イカーワ小将は以前より、割り当てを超過す
る兵器開発の報告をキャトラス宇宙軍兵器開発
統括本部に挙げ、軍上層部でも予算の用途が疑
問視されていた。
先々月に行われた内部査察では、挙げられて
いた報告と、開発現場の資材リストに齟齬が見
受けられ、イカーワ小将の開発資金横領が疑わ
れた。
そして今月、捜査の結果開発資金の横領が確
定し、拘束に至った。
また、憲兵隊による尋問の結果、開発資金横
領の他、軍用航空機の横流し、軍事機密漏洩等
の余罪が発覚。
軍事裁判にかけられていた事も同時に判明し
た。
イカーワ小将は軍事裁判で、銃殺刑が確定。
異例の早さで、今月末、刑が執行される。
この異例な決定は軍部内でも波紋を呼び、物
議を醸している。
この決定に対し、軍の広報部は「この度のイ
カーワ小将の行為は、キャトラス市民全体を危
険に晒した、最低最悪の行為であり、軍として
も二度と同様の事が起きない様に非常に厳しい
判決とした。」とのコメントを発表した。
………。
「ピコちゃん、何読んでるにゃ?」
「いや。
寝ている間の情報収集にゃ。」
軍事ジャーナル誌を閉じ、ミーコに答える。
「それで、気になったことはあったかにゃ?」
ミーコが続けて聞いて来る。
「う~にゅ…。
あ、ここに書いてあるのって…。」
再び雑誌を開き、トピックの部分を指さす。
「ああ、横流しのとこにゃ?」
「そうにゃ。
もしかして、あのスカベンジャーの機体って…。」
イカーワ元小将の関与を疑う。
「だとしたら、私はイカーワ元小将を殺すにゃ。」
(本当に、直接血祭りに出来ないのは残念にゃ…。)
「ちょっと待つにゃ!
ステイ!
びーくーる!
ひっひっふーにゃ!」
ミーコの殺気に、焦って、静止の言葉に違うものが混ざる。
「にゃふっ♪
冗談にゃ。」
(私は殺さないから、合ってるにゃ)
「冗談の雰囲気じゃなかったにゃ!?
…心臓が停まるとこだったにゃ…。」
主に恐ろしくて。
「ちょっと!
それこそ冗談じゃないにゃ!
変なことは言わないでにゃ!」
ミーコが烈火のごとく叱ってくる。
「ご、ごめんにゃ…。
二度と言わないにゃ…。」
どもりながら、謝る。
「………。
………。
…仕方ないにゃ。
許してあげるにゃ。」
許して貰えたようだ。
(そっちが先に言ってきたとかは言わないにゃ…。)
振りではない。
「…。
ところで、ミーコの用事は何にゃ?」
ふと、気になり聞く。
「…あっ!
そうだった!
ピコちゃん、リハビリの時間にゃ。
すっかり話し込んじゃったにゃ。」
車椅子に移り、ミーコに押してもらい、リハビリ室に向かった。
……………………。
……………。
因みに、リハビリはいつもより少し厳しかった。
…。
許すって言ったじゃん!
~第一試作艦建造ドッグ~
「しかしまあ。
試作とは言え、変な形の艦っすねえ。」
「同感だ。
開発部も変な指示出しやがる。
しかも、既存の艦を改造してだからなぁ。」
「元々は、高速輸送艦だったか?
軍艦ですら無いって…。」
「軍に属した艦と言う意味では、軍艦だけどな。」
「そういう意味じゃ無いって。」
「分かってるって。
…。
そういう意味では、こいつは立派な軍艦だ。」
「そうだな。」
そう言って、見上げる二人の作業員の視界には、輸送艦が改造された、異形の軍艦が発進を待っていた。
~領域巡回警備艦「バラクーダ」~
バンッ
「もう我慢ならん!」
艦長室の机を叩き、憤慨するのはその部屋の主。
「貴官の悪ふざけの後始末には、うんざりだ!
その辞令書を持って、この艦から降りろ!」
「了解にゃ。
世話になったにゃ。
達者でにゃ~。」
…。
パタン…
退室して言ったのは、タマ・スタイン小尉。
………………。
………。
「さて、次はどこかにゃ?」
基地内のベンチに座り、辞令を読む。
………。
…。
クシャリ…
「次は、試作兵器の実験部隊にゃ?」
ポイッ
用済みだとでも言うように適当に放る。
丸まった辞令書が宙を舞う。
「面白そうだにゃ。」
カコン…
宙を舞った辞令書はゴミ箱へと、吸い込まれる様に入って行った。
~キャトラス宇宙軍本部 重違反者処刑場~
「本当に、中将自ら行われるのですか?」
執行官が初老の雄に、拳銃を渡して聞く。
「ああ。
個人的に聞きたいことがあってな…。」
(中将もショックを受けられているのか…。)
と、質問の答えに執行官は思う。
コツコツコツコツ…
初老の雄が銃を受け取り、その場の中央に向かう。
そこには、中年の細身の雄が拘束され、ひざまづいていた。
「ARSと言う言葉に心当たりは?」
耳に口を寄せ、初老の雄が聞く。
「なぜ、それを聞く?」
平坦に返す中年の雄。
カチャ…
「なに。
わたしの知り合いが世話になっただけさ」
「っ!」
パンッ
その場に、乾いた破裂音が響いた。
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