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19 表出

話の区切りで短めです

~要塞「ゲート」要塞砲防衛隊 タロ~


「終わった?」


 総指令官の話と、その後聞こえたキャトラス軍の部隊の警告。

 防衛するべき要塞砲も破壊され、訪れた静寂に呆然となる。


『ああ、終わったのさタロ。』


 ジロが呟いた言葉に返してくる。

 自分以外にそう言われたことで実感が湧いてきた。


『だがこれからドギヘルスは苦しい時代になる。』


 フウレン隊長のように考える者も少なくはないだろう。

 恐らく過去最大の戦死・行方不明者数となった今回の大戦は、徴用された若者が前線に立たされたことで戦後の経済活動に影響をもたらすだろう。

 更に敗戦した以上賠償もあるだろうし、戦争の原因であったドギヘルスとキャトラスの間にある資源帯もキャトラスのものだ。


『おぉ~い、無事かぁ~?』


 戦後のことをあれこれ考えていると、ボロボロの友軍ポッドがやって来た。


『ん…、ありゃリキか!?』


 リキは自分やジロと同じく徴用組の部隊メンバーだ。

 近接型装備のポッドで前に出ていた筈だ。


『リキ、よく帰った。

 俺の小隊は全員無事だったようだな。』


 犠牲を多く払った戦争には敗北し、今後に不安は残る。

 しかし部隊の全員が無事という奇跡は、生きている限りは進んで行けると感じさせる出来事であった。

 だが何百年と続いた禍根は、そう生易しいものではなかったのだと思い知らされる。


『停戦だと!?

 俺は認め無い、ドギヘルスは負けていない!』


 全権を握る総指令官の決定も、数万いるドギヘルス兵士全てが了承できるものでなかった。

 反発の声を上げた正規兵に同調して、一部が暴走を開始する。


『おい、お前ら停戦命令だぞ!』


 静止する同胞の言葉も届かず、決定的な出来事が起きてしまう。


『お前ら止まれ、さもないと!』


 再び動き始めたドギヘルス軍機に、困惑したキャトラス軍機が武器を向ける。


『殺るか?

 お前ら、やっちまえ!』


 武器を向けられたドギヘルス軍機のパイロット達は逆上し、複数で武器を向けたキャトラス軍機に襲い掛かる。


『貴様ら、止めろ!

 これが最後の』


『おらぁっ!』


…ボンッ


 停戦命令後のドギヘルス軍機複数によるキャトラス軍機の撃墜。

 これにより終戦ムードは一変。

 ドギヘルス軍とキャトラス軍、どちらかが全滅するまで終わらない争いが勃発した。


 
















~要塞「ゲート」大ハッチ前~


 ドギヘルス軍正規兵の暴走で一番迷惑を被ったのは、ドギヘルス軍徴用兵であった。


『お前達も続け!

 侵略者を追い返すぞ!』


『え?

 りょ、了解!?』


 まともな訓練を受けていない彼ら(徴用兵)は、唯一叩き込まれた「上官の命令に絶対服従」という教育に従いキャトラス軍機に攻撃を行う。

 総指令官は停戦を命令したが、直属の上官の命令の方が彼ら(徴用兵)には上位に思えたのだ。

 

『こいつら…!』


『ドギヘルスらしいやり方だぜっ!』


 負傷者の収容作業等に分かれていたキャトラス軍は、ドギヘルス軍の抵抗に驚きはしたがすぐさま対処を開始した。


『警告はした、覚悟はいいな?

 「ま、待ってくれ!」

 キャトラス兵に告ぐ、ドギヘルス軍を掃討しろ!

 『パパパパパッ!』

 「ぎゃあぁっ!」』


 要塞「ゲート」の作戦指令室の悲劇は、全域チャンネルの無線により両軍の全ての兵士が知ることとなった。


『キャトラス軍に良心は無いのか!?』


 戦闘に参加していないドギヘルス軍パイロットが問う。


俺たち(キャトラス軍)は慈悲をかけた筈だ。

 それにそれを言う権利はお前ら(ドギヘルス軍)には無い。』


ボッ


 問われたキャトラス軍パイロットは、そう言い切るとドギヘルス軍機を撃墜した。

 撃墜された彼はまだ幸運であった方だ。

 何故なら彼は「戦闘に参加しない」という選択を取ることができたからだ。

 ドギヘルス軍で最も悲惨だったのは、武装の解除が進んでいた前線だ。


『おい、俺たちは武器が無いだろ!?』


『止めろ、撃たないでくれ!』


 懇願のような説得を投げ掛け、逃げ惑うドギヘルス軍のポッド。


『貴様は何に乗っている?』


『自分らの行動を振り返るんだな。』


ボッボンッ


 マシンガンが取り外されていようが、そのつもりになればアームや体当りで撃破出来ないことも無い。

 実行可能かは別として、その可能性がある時点で攻撃対象である。

 また、直前に突発開催された“的当て大会”もキャトラス軍パイロット達の躊躇いをなくす要因となっていた。

 因果応報という言葉の通り、対抗手段に乏しいドギヘルス軍機は次々とキャトラス軍に掃討されていったのであった。


 

 



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