表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/177

18 停戦指示

主人公カムバック。

やっとここまで来ました。


ヒュッ


サッ


 正面から振り下ろされた触手を、機獣は首を横に逸らす最低限の動きで避ける。

 しかしその攻撃はブラフ。


ヒュヒュヒュンッ


 直後、跳んで回避していたら硬直しているタイミングで、回避先として予想される場所に別々に触手が振るわれた。


(それはさっき見たにゃ!)


スカッ


 だが機獣はその場から動かず、触手は宙を切る。


(『二度は当たらんにゃ。』)


 私はこの期に及んでさえわたしをからかうようなことを言う。

 最初に食らったときは、回避後の追撃は予想してフェイントをしてから反対方向に跳んだが、まさか全てのルートに追撃が来ると誰が思うだろうか。


(それに…)


グワッ


 連携の隙を見て敵機の死角から襲い掛かる。


『デズモンド、左下だ!』


『おっと!』


ブォンッ


 仲間の忠告を受けた敵機がクローのついたアームを動かす。


ガギィッ!


 10本あるレーザーガン付きのケーブル(触手)より遥かに太く硬いアームは、無視することも千切ることも出来ず機獣が止められる。


「!」


ガンッ!


 危険を感じ、敵機のアームを蹴飛ばし飛び退く。


ガチンッ


 見れば機獣を受け止めた敵機が、もう片方のアームのクローを閉じたところであった。

 飛び退くのが一瞬遅ければ捕まっていただろう。

 

(こいつらは何なんにゃ!?)


 連携の精密さといい、反応の早さといい、機体の外見も相まって機械を相手にしているように思えない。


(『…なるほど、コイツら“生きている”にゃ。』)


(「どういう…?

  説明するにゃ!」)


(『コイツら、機体に身体を繋いでいるにゃ。』)


 文字通りの機体とパイロットの一体化。

 私の出した仮説は、事実であれば倫理観が狂ったものであった。

 しかし否定する材料は無く、逆に証明するような心当たりしかない。

 反応の早さも、認識→操作→動作のプロセスの操作が認識と同時に行われているとすれば説明がついてしまう。


(だから鎮痛剤にゃ!?)


 機体を身体の感覚で操作しているということは、機体が破損した場合、パイロットは擬似的に痛みを受けるというわけだ。

 触手()一本であれだけのパニック症状になったということは、機体が大破して仕舞えば…。

 だがこれは戦争で、向こうが殺しに来ている以上躊躇ってはいられない。


『ガアアァッ!』


 触手を斬った機体のパイロットは痛みがなくなったのであろうが、鎮静化はしておらず発狂状態で襲い掛かって来る。

 9本の触手がレーザーを放ちながら縦横無尽に振るわれていたが、連携のような精密さは無い。


すっ…、とんっ


 静かに、ともすれば緩慢に思える動作で姿勢を整え機獣が飛び出す。


ヒュンッ


カインッ!


 触手が迫るが遠隔で動かしていた斬艦ブレードを割り込ませ、触手とブレードは弾かれあう。


(ここにゃ!)


ピタッ


 弾かれたブレードが止まったのは敵機の正面。

 機獣に襲い掛かる敵機と、敵機に向かって跳ぶ機獣。

 そして間に挟まれたブレード。


ガッ!


『ガアアアァァッ!?』


 敵機のパイロットが上げるのは咆哮ではなく悲鳴であった。

 機能の停止した硬いだけのブレードであったが、その切っ先は敵機に深々と埋まっている。


『ア、ァァ…。』


 敵パイロットの声が弱々しくなっていく。


『ぁ、あぁ…済まないマリー。

 お前を抱き上げれない父を許してくれ…。』


 今際の際に理性が戻ったのか、娘への言葉を最後に敵機は沈黙する。


『カインッ!』


 それが彼の名前なのだろう。


パッ、パッ


 要塞「ゲート」から信号弾が上がった。













 

 



~要塞「ゲート」作戦指令室~


「「偉大なる(グレート)栄光(グローリー)」、破壊されました。」


「侵入した敵部隊も最終ブロック手前まで迫ってい

 ます。」


「一時押し返した戦線も崩壊しつつあります。」


 次々と上がる悪い報告に、総指令官は終わりを覚る。


「本営は何と?」


 しかし彼は軍人であり、自己判断で戦いを止める指示を出すわけには行かなかった。

 また、本営から現有戦力で防衛を行えという指示以降から援軍の要請を繰り返していた。


「反乱軍が王都防壁を突破したとの連絡を最後に通信

 が途絶えています。」


 王都陥落。

 本営が落ちた以上指示を仰ぐことは不可能であり、この瞬間から要塞「ゲート」防衛軍の指揮権は、全権が総指令官に移ったのであった。


「信号弾を上げろ。」


「色と数は?」


「黄色を2発だ。」


「…了解しました。」


 ……パッ、パッ


 指令室のモニターが黄色い発光を二回映した。


「指令室無線の回線(チャンネル)全域(オープン)に入れろ。」


 無線の傍受が当たり前となった現在では、その行為はさほど意味をなさないであろう。

 しかしこれまでの戦いでは休戦の合図であった。


『戦闘中の兵士諸君に告ぐ。

 私は要塞「ゲート」総指令官、ヨークシャーだ。

 ドギヘルス王都の陥落に伴い、防衛軍の全指揮権を

 預かった者だ。

 兵士諸君、最早戦争の勝敗は決したも同然である。

 私はこれ以上の戦闘を無意味と判断する。

 防衛隊は全て、即刻戦闘を停止せよ。

 キャトラス軍の諸君、君たちの勝利だ。

 勝者の姿勢に期待している。』


バタバタバタッ…


 総指令官が話し終えると多数の足音が近づく。


バンッ!


「動くな!

 要塞「ゲート」( こ こ )キャトラス軍( 我 々 )が制圧した。

 直ちに武装を解除し我々の指示に従って貰う。

 抵抗した場合は即座に射殺する。」


 キャトラス宇宙暦3023年8月14日、日付変更一時間前の深夜。

 要塞「ゲート」攻略戦及び、キャトラス軍のドギヘルス侵攻における戦闘の停止が全軍に指示された。



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆評価、いいね等、

よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。


よろしければ、本作にもう少しお付き合い下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ