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16 迫るとき~time limit~

後半ユキ視点(二度目)

~惑星ドギヘルス 王都攻防戦~


 ガウルフ王暦9873年8月14日。

 シバーズ辺境伯を筆頭とした反乱軍は、9日の蜂起から破竹の勢いで進撃を続ける。

 そして蜂起から6日目のこの日反乱軍は王都に到達、要塞「ゲート」防衛作戦から回されたドギヘルス正規軍と激しい戦闘を繰り広げていた。


「左側から敵軍(正規軍)の装甲車!」


 操縦手が砲手に標的の存在を知らせる。


「左…あれか、確認した。

 対装甲弾装填。」


ウゥーン…ガッチョン


 自動装填システムが稼働し、砲に弾が装填された。

 対装甲弾は貫通力を求めた砲弾だ。


「照準合わせ。」


ガコン

 

 砲塔が回転し、砲手の見るモニターの中央に装甲車が映る。

 だが反乱軍二名の乗るビークルは装甲車より目立つ形状をしていた。

 つまり彼らが装甲車を発見した時には、装甲車側(正規軍)が|彼らの乗るビークルを標的に定めた後だった。


バララララッ!


 先手必勝というように、装甲車に備え付けられた機関銃が火を噴く。


カンカンカンッ!


「うわっ、撃ってきた!」


 反射的に怯えた声をあげた操縦手であったが、そのビークルの装甲は機関銃の弾を全て弾いた。


「…ふぅ、効かないぜ!

 だがお返しだ!」


 砲手モニターで機関銃が火を噴く瞬間を見た砲手は、無事だったことに息をつきトリガーを引いた。


ドゥッ!


 機関銃とは比べものにならない威力の砲弾が、彼らの乗るビークルより装甲の薄い標的に飛ぶ。


ボフッ!


 反乱軍の乗るビークルと同等かそれ以上に硬い標的の破壊を目的とした砲弾は、装甲車の防御力を紙同然に貫き地面に着弾。


「やっぱコレ凄いな…。」


 一撃で破壊された装甲車と地面に出来たクレーターを見て、その余りの威力に引き気味に言う砲手。


「ああ、次からは通常弾で頼む。」


 いくら無限軌道で走破性が高いと言えど、揺れるのは勘弁な操縦手は砲手に注文する。


「分かった、コレなら装甲車も敵じゃねぇ。」


 頑丈な装甲に高火力の砲を併せ持ち、どんな悪路であっても陸地を駆ける。

 それまで最良陸上兵器として君臨していた装甲車を蹂躙するそのビークルは戦車と言われる兵器であった。


「おっし、ガンガン進むぞ!」


「おう、行こうぜ相棒!」


 反乱軍の戦車隊は進む。

 王都を囲む鉄壁と云われた防壁を目指して。


「……ところでコレやけに狭くないか?」


「それな。」


 元一般市民の彼らは知らない。

 その兵器(戦車)がドギヘルス地上制圧のため、キャトラス軍により開発されたことを。

 裏取引で反乱軍の筆頭(シバーズ辺境伯)がキャトラス政府から供与された兵器であることを。

 クーシーより小柄なケットシーに合わせて設計された戦車が狭く感じるのは当然であった。

 

















~ユキ視点~


キュイイィ…


「やった!」


 各スラスターが稼働し始めた音がして、暗かったコックピットに明かりが灯る。

 ドギヘルス軍要塞砲の高エネルギー電磁パルスによって緊急停止したキマイラ(隊長を始め先任の皆さんがそう呼ぶので私も合わせました。)でしたが、システムに異常が無いようでひとまず安心です。


『伍長、無事か?』


 再起動したことで無線装置も復旧し、班長((ガイウス))の安否確認が聞こえました。


「はい、ご迷惑をおかけしました。」


 システムが停止していても戦闘の気配は続いていました。

 こうして無事に居られたのも誰かが戦ってくれていたからに他無いことは明白でした。


『謝るな、それが部隊(チーム)だ。』


 何てことも無いように言い切る班長に心臓が跳ねます。


(バリキリー大尉もそうだったのでしょうか?)


 戦場の直中にあることが分かっていてもそう思わずには居られませんでした。


『ガイウス、メグも起きた!』


 キングハート大尉の声に我に返ります。


『これで全員だな、一旦戻るぞ!』


『俺は残るぜ。』


『駄目だ。』


『何でだよ!?』


『機体は動くが武器が使え無い、露払いを頼む。』


『ヘイヘイ…。』


 退却の指示を出した班長にキングハート大尉が反論しましたが、結局部隊全員で帰還するようです。

 ふとモニターを見れば、班長が言ったように機体に装備された全ての火器がオフラインとなっていました。


『それじゃ俺が殿だな、ガイウスは前を行け。』


『了解だ。

 マルコシアス隊は』


ブウゥン


 班長の号令を遮り、要塞砲が再び稼働を開始しました。


『おいおい…。

 ガイウス、どうする?』


 キングハート大尉が班長に尋ねますが、武器が無い以上どうにも出来ないと言えます。


『またアレが来るとしたら、一定の距離を取れば機体

 が停止することはない。』


 班長はそう判断しますが、それでは同じことの繰り返しです。


『それじゃこっちがジリ貧だ。』


 キングハート大尉も同じことを思ったようで班長に言いました。


『将軍には勝機が見えているらしい。

 最終手段として遅滞戦闘が指示されている。』


 遅滞戦闘、つまりは時間を稼ぐと言うことです。

 これが最終手段とされている理由としては犠牲が増えるという理由が大きいからと予想されます。


『気に入らねぇな…。』


 キングハート大尉がそう呟きますが、マルコシアス隊メンバーは全員がそう思っていると思います。


(何か私に出来ることは……。

 …!)


「あの、班長!」


 想定されていると言っても犠牲は少ない方が良いのは誰もが思うこと。

 その可能性が手元にある以上は…と班長を呼び留める。


『どうした伍長?』


「これで目標の破壊を出来ないでしょうか?」


 キマイラのアームに保持する携行武器。

 まだ残弾のあるロケットランチャーを示しました。


『可能性はある。』


『ならっ!』


 班長の可という判定に気が逸る。

 しかし、


『しかし伍長だけでは危険だ、許可は出来ない。』


 …どうせ補給するならやってみようとした提案は敢えなく却下されてしまったのでした。

Topic

 約一万年大規模な陸上戦の無かったことに加え、ガウルフ王家が軍事関連を牛耳っていた為、陸戦兵器の発展は皆無であった。

 対するキャトラスは三千年のブランクがあるとはいえ陸上戦の経験が豊富であった為、戦車という兵器の概念自体は存在し、機動兵器としての戦車の開発に至った。



↑説明にあるキャトラスの“戦車という概念の兵器”は、地球でいう「チャリオット」です。




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