15 再起
遅刻申し訳ない
~マルコシアス隊~
未完成の要塞砲から放たれた波動。
それは直接的な破壊力は皆無であったが、波動に含まれていた膨大なエネルギーが電子機器に干渉。
ほぼ全てのシステムが電子化されているキャトラス軍ポッドは、EMP対策がされているて言えど予期せぬ高エネルギーが流れたことで強制シャットダウンしてしまったのだ。
『くそが!
おい、再起動はまだか!?』
ほぼ全てのキャトラス軍ポッドが停止した最前線にて、自らの隊の所属機を守りつつ単機で戦闘を行う機体があった。
『………………。』
シンが無線に呼び掛けるも返答は無い。
メイン電源が停止している以上無線装置も停止するわけであり、それが当たり前ではある。
シンの機体が停止していないのは機獅子だからである。
しかし機獅子でも普段は電源を稼働に利用しており、シンの魔力を使用して動かしている現状は長く保つものでは無いのだ。
ゴッゴォッ
『くっ…!』
一騎当千の力がある機獅子であってもその機体は一つ。
同時に多数を抑え込めるわけも無く、数機のドギヘルス軍ポッドが機獅子の横を抜けていく。
機獅子の守りをすり抜けたドギヘルス軍ポッドの行き先は、未だ再起動出来ていないキャトラス軍ポッド。
ドドンッ!
障害が無くなり悠々と前進していたドギヘルス軍ポッドは、長距離砲火に墜ちる。
『悪い、待たせた。』
そうシンに語りかけたのはガイウス。
『俺に言うな。
…どうして遅れた?』
シンの疑問は尤もである。
未だに起動出来ていない周囲のキャトラス軍ポッドを見るに、ガイウスの機体がいち早く起動したわけではない。
ならばもっと早く援護射撃があれば楽だったのだ。
『電子系の武器がダメになってな。
ひとまず対艦ライフルだけ持って来た。』
バング機は携行武器の対艦ライフル6丁を掲げていた。
元のアームに対軍戦闘装備のサブアーム4本。
「ひとまず」というには些か過剰火力のように思えるが、現状ではこれでも不足である。
『俺が前に出る、お前は抜けた奴を撃て。』
ガイウスが来たことで守りの手を緩められるようになり、シンは攻勢に出ようとする。
『了解した。』
ガイウスに否やは無く、対艦ライフルを構え直す。
『よし、行くぞ!』
~ピコ視点~
ヒュンッ
バシッ!
不規則な軌道で迫る異形の触手を、前肢ではたき落とす。
ピィッ!
トッ
直後、背後に回った触手から放たれた光線を横飛びで回避。
「…っ、…はぁっ…。」
ただでさえ気の抜けない敵の連携に、機体を稼働させるための魔力の消耗に息が上がる。
『どうした「刃持ち」?』
『毛玉のエースもこんなものか。』
『いや、我々が強いんだ。』
『潔く死ね!』
ピコが防戦一方であるが故に煽り囃す異形のパイロット達。
(『交代するにゃ?』)
私が聞いてくる。
(「まだっ、まだやれるにゃ!」)
状況としては強がりにしか聞こえないであろうが、ここで私に代わって仕舞えば取り返しのつかないことになる予感がした。
ヒュッ…
(邪魔!)
ィイィンッ
異形の敵機の触手攻撃が鬱陶しくなり、機獣の爪に魔力を流し微細振動機能を使った。
『…はぇ?』
先ほどまで、はたき落とされるばかりであった触手。
レーザーガンも兼ねるその先端部分が、振られた勢いそのままに宙の彼方に消える。
(…何を呆けているにゃ?)
この瞬間まで破壊されなかった触手が、あっさり切断されたことが信じられないといった様子の敵パイロット。
(今のうちに!)
厄介な連携が機能しなくなったうちに敵の数を減らす。
停止した敵機に易々と接近した。
(これで!)
自らを囮にして、斬艦ブレードが敵機の後ろを狙う。
それは形勢を逆転させる一手になるはずであった。
機獣の爪が本命より一拍早く敵機を捉えようとしたその瞬間、
『わあ“あ“あ“ぁ“ぁ“っ!』
ビュッ
「っ!?」
バシィッ!
叫び声が上がると同時にデタラメに振るわれた触手。
意図の無いただ振り回される幾本もの触手の軌道など読みきれず、その内の一本が機獣に直撃する。
「しまっ…!」
距離を開けられ、チャンスを不意にしたどころか隙が出来たことに焦る。
しかし追撃は無かった。
『あ“あ“あ“指ぃ、俺の指があぁ!?』
『大丈夫か!?』
『落ち着け!
おいサポート、鎮痛剤!』
『やりやがったな、ぶっ殺してやる!』
何故ならば機械のケーブルを一本切断されたには異常なほど、敵部隊がパニックになっていたからだ。
~キャトラス軍本隊~
「停止していた機体の回収及び、部隊の入れ換えを完
了しました。」
「戦況は?」
「戦線は後退前より進んでいませんが、戦闘は我が軍
が有利の模様です。」
要塞「ゲート」の発した高エネルギー波。
それは前線のキャトラス軍ポッド(全体の1/5)を停止させ、更に電子系武装の半数を使い物にならなくした。
しかしキャトラス軍は正規兵らしくすぐさま対応。
停止したポッドの救助と後方部隊の前進により、後退した戦線を押し戻しつつあった。
(もう少し、もうすぐ戦いは終わる。)
キャトラス全軍の兵の命を預かるタシロ将軍は、リアルタイムで更新されるドギヘルス王都の戦いの様子を見て、そう内心で呟いた。
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