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14 虚栄

13話の別視点になります。

~要塞「ゲート」作戦指令室~


 時は少し前のこと、具体的にはマルコシアス隊が要塞砲の防衛隊を突破する直前のこと。


「「偉大なる(グレート)栄光(グローリー)」防衛隊、突破されます!」


 自爆覚悟で未完成の「偉大なる栄光」を起動させたのはいいものの、キャトラス軍の破壊部隊が迫る。


「充填率は!?」


「まだ50%未満です!」


 完成していれば要塞(ゲート)周辺のキャトラス軍など薙ぎ払ってしまえるのだが、そもそもの話完成していれば戦いにならない。

 無い物ねだりというものだ。


「敵部隊が防衛隊を突破!」


『ビビビッ』


 観測官の報告から少し遅れて、要塞の状態を示す図の要塞砲建設部分が黄色に塗り変わる。


「砲周辺に被弾!」


「ぬうぅっ…!」


 総指令官は悩む。


「メインハッチが破られました!」


 観測官の悲鳴のような報告に時間が無いことを覚る総指令官。


「隔壁閉鎖、バリケードを築いて時間を稼げ!」


 マニュアル通りの対応を指示し、総指令官は更に思考を巡らせる。

 現在の充填率では結果にさほど期待は出来ない。

 しかし発射の前に破壊される危険を許容するのも躊躇われる。

 だが総指令官が迷ったのは一瞬だった。


「仕方あるまい。

 「偉大なる栄光」第一射用意!」


 期待する効果が無いとしても「発射可能である」という事実を見せつければキャトラス軍に圧力(プレッシャー)を与えられる。

 そうして稼いだ時間で第二射の十分な充填を行う。

 二射目の充填が完了して仕舞えば侵入されていようが関係は無くなる。


要塞「ゲート」(ここ)ごと消滅するのだからな…。)


 勝敗(あと)は残った者たち次第である。


「「偉大なる栄光」発射!」


ドゥウゥンッ!


 希望的観測に基づいた強行。

 だが総指令官は防衛隊全ての命を賭けた(ベットした)博打に勝利したのだ。

















~要塞「ゲート」大ハッチ前戦場~ 


 マルコシアス隊が敵要塞砲防衛部隊を突破しようとしていた頃、要塞「ゲート」のメインハッチ防衛部隊もキャトラス軍本隊の先鋭部隊に突破されていた。


『こちらケートス隊、敵の防衛網を突破!』


 先鋭部隊にはケートス隊に代表されるキャトラス軍のエース戦闘機パイロット達も全員が参加していた。

 戦闘機の機動力にドギヘルス軍のポッドは追い付けず、翻弄された後ミサイルで次々に撃墜された。

 そして戦闘機が空けた敵防衛網の穴には、本隊の精鋭ポッド部隊が入り込み“道”を確保した。

 

『射線上に友軍機無し、いつでも撃てます!』


 本隊所属「アーチャーフィッシュ」が“道”の入り口につける。

 船首は要塞「ゲート」の巨大かつ分厚いハッチを向いている。


『「トールハンマー」発射!』


キュゴオッ!


 マルコシアス隊の「ゲートキーパー」の超短期制圧に、初戦の大勝をもたらしたエネルギーの奔流が“道”を流れる。


ドッ、ゴオォォンッ!


 戦艦の主砲にすら耐えられるよう構えられた要塞の「門(ゲート)」。

 キャトラス軍が惑星ドギヘルスに降り立つ為の玄関口が今開かれた。

 

『制圧部隊突撃、行け行け行け!』


 すかさず制圧部隊を乗せた多数の揚陸挺が「アーチャーフィッシュ」の空けた大穴から、要塞「ゲート」内に侵入していく。


『よし、我々(アーチャーフィッシュ)は侵入口の防衛だ。』


 「アーチャーフィッシュ」は精鋭のポッド部隊が保つ“道”を往き回頭、揚陸挺の消えて行った大穴を背に大ハッチ前に陣取る。

 「アーチャーフィッシュ」が配置についたことを確認したポッド精鋭隊は“道”の維持を解き、代わりに「アーチャーフィッシュ」の周囲に位置する。

 これで、前はキャトラスの大軍、後ろに「アーチャーフィッシュ」を母艦としたポッド精鋭隊に挟まれたドギヘルス軍要塞「ゲート」防衛部隊は、制圧部隊に構っている暇など無い状態となった。


『挟まれた!?』


『くそっ、どうすれば!?』


 ただでさえ押し込まれていた要塞防衛隊は追い詰められていく。


『オラァッ!』


 キャトラス軍ポッドがドギヘルス軍ポッドに襲いかかる。


『うわあぁ!?』


ドゥウゥンッ


 絶体絶命かと思われたドギヘルス軍ポッドであったが、形勢は突如として逆転する。


『っ……、…?』


 いつまでも訪れない死に、ドギヘルス軍ポッドのパイロットは硬く閉じていた目を開き、目の前の光景に一瞬驚く。


『動いていない?』


 モニターに映っていたのは、正に目前まで迫ったキャトラス軍ポッド。

 しかしそのポッドは停止し、襲おうとしたドギヘルス軍ポッドの前で漂う。


『念のためだ…。』


 ドギヘルス軍ポッドの徴用兵パイロットは震える声で呟き、照準を合わせた。


ダダダッ!


 それまで命中することのなかった弾丸は、目の前のキャトラス軍ポッドから外れること無くコックピットを撃ち抜いた。


『ははっ…。』


 徴用兵パイロットの口から笑いが溢れる。

 彼、否彼らは理解した。

 殺す側と殺される側、覆しようの無かった立場がこの瞬間逆転したことを。


『はははは!』


ダダダダッ!


ボッ


 それを見ていた別のパイロットもキャトラス軍ポッドを撃墜する。


『あははははっ!』


ダダダダダダッ!


ボッボンッ


 またあるパイロットはマシンガンを乱射して複数機を撃墜。


『『『『『あははははははっ!』』』』


 似たような光景は戦場の彼方此方で発生していく。

 先ほどまで恐怖と絶望が支配していた要塞「ゲート」の大ハッチ前の戦場。

 そこは今や、動かないキャトラス軍ポッドを徴用兵パイロットの操縦するドギヘルス軍ポッドが撃ち抜く、狂った笑いの木霊する的当て遊戯の会場と化していた。



もう留まれない…。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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